不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「国土利用計画法」という項目があります。
どのような不動産が国土利用計画法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
ここでは、不動産の重要事項説明における国土利用計画法について説明します。
次の不動産は「国土利用計画法」について重要事項説明が必要です。
- 規制区域内
- 監視区域内
- 注視区域内
- 一定規模以上の土地(一団の土地)
国土利用計画法とは
国土利用計画法(こくどりようけいかくほう)は、重要な資源である国土を総合的かつ計画的に利用を図ることを目的に1974(昭和49)年に定められました。大きく土地利用計画の策定と土地取引の規制に分かれ、不動産の売買等にあたっては届出や許可が必要になります。国土法とも呼ばれます。
土地利用計画の中心となるのは、都道府県ごとに作成される土地利用基本計画で、全国を都市地域・農業地域・森林地域・自然公園地域・自然保全地域の5つの類型に区分しています。
土地取引の規制については、国土を地価上昇による影響の度合いに応じた区域に分けており、規制区域・監視区域・注視区域・区域指定なしと分類しています。
規制区域(きせいくいき)
規制区域とは、都市計画区域では、土地の投機的取引が集中して地価が急激に上昇し、または上昇するおそれがある区域について、都市計画区域以外の区域では、上記の事態が生ずる場合、その事態を緊急に除去しなければ適正で合理的な土地利用がとても難しいと認められる区域について、都道府県知事が5年以内の期間を定めて指定した区域をいいます。規制区域に指定されると、土地の取引面積に関わらず、土地に関する権利の移転等(土地売買契約)については、都道府県知事(政令指定都市の場合は市長)の許可が必要です。許可を受けずに結んだ契約は無効となります。
取引の制限につながるため、国土利用計画法の施行以後、規制区域に指定された区域は現在のところ存在しません。
【規制区域内の土地における制限行為】
規制区域内の土地の所有権、地上権等の使用収益権またはこれらの権利の取得を目的とする権利(予約完結権・買戻権等)を有償で移転または設定する契約(予約を含みます)を締結しようとする場合には、当事者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
監視区域(かんしくいき)
監視区域は、地価が急激に上昇し、または上昇するおそれがあり、適正な土地利用が困難となるおそれがある区域です。監視区域に指定されると、都道府県が規則で定める面積以上の土地取引を行う場合は、都道府県知事に対して事前に届出が必要です。
(東京都小笠原諸島小笠原村南島)
監視区域は、バブル期の地価高騰に対処するため、1987年の国土利用計画法改正により創設された制度で、1993年11月1日の時点では1212市町村と広く指定されていましたが、現在は東京都小笠原村のみが指定されています。東京都は、指定期間を延長して引き続き5年間、小笠原村を監視区域に指定しました。小笠原村では、都市計画区域内において500㎡以上の土地取引を行う際は事前届出が必要です。
【監視区域内の土地における制限行為】
監視区域に所在する土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。
注視区域(ちゅうしくいき)
注視区域は、地価が一定期間内に相当な程度を超えて上昇し、または上昇するおそれがある区域です。注視区域内において土地取引を行う際、一定面積以上の土地、一団の土地の取引を行う場合は、都道府県知事に対して事前に届出が必要です。
ここでの一定規模以上の土地とは次のことをさしています。
- 市街化区域内:2,000㎡以上
- 市街化区域以外の都市計画区域(市街化区域を除く市街化調整区域・非線引き都市計画区域):5,000㎡以上
- 都市計画区域以外の区域:10,000㎡以上
上記の面積未満の土地でも、届出が必要な場合があります。一団の土地の認定といい、個々の取引では面積要件を満たさなくても、物理的・計画的な一体性をもって複数の土地に関する権利が取得される土地については、一連の取引全体の合計面積で判断します。たとえば、市街化区域内の1,900㎡の土地と200㎡の土地を買う場合は、合計の2,100㎡で判断され、届出しなければなりません。
注視区域は、1998年の国土利用計画法改正により創設されましたが、現在までに指定された区域は存在しません。
【注視区域内の土地における制限行為】
注視区域に所在する土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。
区域指定なし
規制区域・監視区域・注視区域以外の土地で、一定面積以上の土地、一団の土地の取引を行う場合は、原則として、土地売買契約後2週間以内に、土地の利用目的および取引価格を都道府県知事(政令指定都市の場合は市長)に届出が必要です。(事後届出制度)
ここでの一定規模以上の土地とは次のことをさしています。
- 市街化区域内:2,000㎡以上
- 市街化区域以外の都市計画区域(市街化区域を除く市街化調整区域・非線引き都市計画区域):5,000㎡以上
- 都市計画区域以外の区域:10,000㎡以上
上記の面積未満の土地でも、届出が必要な場合があります。一団の土地の認定といい、個々の取引では面積要件を満たさなくても、物理的・計画的な一体性をもって複数の土地に関する権利が取得される土地については、一連の取引全体の合計面積で判断します。たとえば、市街化区域内の1,900㎡の土地と200㎡の土地を買う場合は、合計の2,100㎡で判断され、届出しなければなりません。
土地の利用目的が、周辺地域の土地利用にあたり著しい支障があるときは利用目的の変更を勧告できます。また、事後届出制では、取引価格の勧告はなくなりました。
届出が必要な取引は、売買だけでなく、交換・譲渡担保・賃借権の設定なども含まれます。
【一定規模以上の土地における制限行為】
一定規模以上の土地(一団の土地を含みます)について、土地売買等の契約を締結した場合には、当事者のうち当該土地売買等の契約により土地に関する権利の移転または設定を受けることとなる者(以下「権利取得者」といいます)は、その契約を締結した日から2週間以内に、一定事項を当該土地が所在する市町村長を経由して、都道府県知事に届け出なければなりません。ただし、法12条1項により指定された規制区域、法27条の3第1項により指定された注視区域、または法27条の6第1項により指定された監視区域に所在する土地について、土地売買等の契約を締結した場合には、届出の必要はありません。
まとめ
国土法(国土利用計画法)の規制内容をまとめるとこのようになります。
区域指定なし | 注視区域 | 監視区域 | 規制区域 | |
形態 | 届出 | 許可 | ||
事後 | 事前 | |||
該当する取引 | 法定面積以上 | 知事が定める左記より小さい面積 | すべて(除外要件あり) | |
違反の場合 | 契約は有効(ただし、公表措置あり) | 契約は無効 |
例えば、区域に指定されていなくても、市街化区域内で2,100㎡の土地を売買する場合は、国土法の重要事項説明の対象となります。
調査した結果、売買の対象となる不動産が規制区域内・監視区域内・注視区域内・その他一定規模以上の土地や一団の土地に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「国土利用計画法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
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