阪神甲子園球場がある兵庫県西宮(にしのみや)市は、人気の高い高級住宅地として知られています。「西宮北口」は、住みたい街ランキングで数年に渡り連続1位です。
特にその西宮市にある七つの「園」のつく高級住宅街である「西宮七園(にしのみやななえん)」は阪神間、いや関西を代表的する高級住宅地として知られています。
「西宮七園」とは、大正から昭和初期にかけて、交通・環境に恵まれた場所に開発された次の7つの地域からなります。
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聞いたことのある地名も多いのではないでしょうか?
「甲」という漢字が多いですが、これは北にある甲山(かぶとやま)に因んだものです(甲子園を除く)。また「園」という漢字は「娯楽用、行楽(こうらく:山野などに出て遊び楽しむこと)用の庭」や「畑」を意味します。
阪急甲陽線にある苦楽園と甲陽園も、鉄道開通前から行楽地でした。苦楽園には明治後期に温泉が、甲陽園には大正時代に遊園地や旅館がそれぞれあったとされています。関西学院大学の誘致など阪急電鉄が主体的に発展に関わった甲東園も、ここにあった農園が由来であり、どの駅も阪急が命名した地名ではありません。
西宮を含む阪神間(神戸市中央区・灘区・東灘区・芦屋市・西宮市・伊丹市・尼崎市・宝塚市・三田市・川西市)は、南北に狭い平野が東西に渡って続いており、その狭い平野に北から順番に「阪急神戸線・JR神戸線・阪神電鉄」と電車が通っています。
現在も、一般的に高級住宅地として名高いのは、海沿いではなく山側のため、阪急・JR・阪神の順に人気です。実際、甲子園をのぞくと西宮七園も阪急神戸線より北側(山の手)にあります。これには理由があります。
明治時代、日本にも産業革命が起きた頃の大阪は、東京を上回る日本最大の経済都市でした。また、神戸も東洋最大の港湾都市として発展しました。しかし、この2つの都市の産業が拡大すればするほど、それまでの市街地であった海側の大阪平野や神戸の阪神平野の居住環境は悪化することになりました。
すでに国営のJR神戸線は開通していましたが、この頃に、阪神電鉄や阪急電鉄などの各線が開通したことにより、未開拓地であった山側の神戸近郊・北摂近郊の農村地帯が注目され、風光明媚(ふうこうめいび)な六甲山南斜面の鉄道沿線の阪神間で、快適な住環境創造を目的に郊外に住宅地の開発が進められました。
まず、明治期に、錚々(そうそう)たる金持ちが住吉村地域(現在のJR神戸線住吉駅周辺:神戸市東灘区)に豪邸を建築しました。錚々たる金持ちとは次のような方々です。
- 朝日新聞創業者の村山龍平邸
- 住友銀行初代頭取の田辺貞吉邸など住友本邸
- 東洋紡社長の小寺源吾邸
- 鐘紡(カネボウ)社長の武藤山治邸
- 日本生命社長の弘世助三郎邸
- 野村財閥(野村證券)の野村徳七邸
- 大林組社長の大林義雄邸
- 乾汽船社長の乾豊彦邸
- 武田薬品社長の武田長兵衛邸
- 伊藤忠の創業者の伊藤忠兵衛邸
- 岩井商店主の岩井勝次郎邸
- 東京海上社長の平生釟三郎邸など
こうして住吉村は「日本一の長者村」と言われたわけですが、この開発が契機となり、陸続きに開発されていき、大正期には、実業家だけでなく、中流階級の住宅地として発展していきました。ブルジョワ(富裕層)が住んだことで、支援する芸術家や文化人なども多く移り住み、別荘地やホテル、娯楽施設が造られ大リゾート地が形成されました(阪神間モダニズム)。西宮七園を含むこれらの地域が、現在でも高級住宅地として全国的にも有名となっているのです。
園のつく地域が住宅街として価値が高まる過程であやかろうとして、昭和初期の1930年前後に甲風園と昭和園の2園が最初から宅地として分譲されました。
さて、この高級住宅地である西宮七園で、一番地価が高いのはどこなのか気になりますよね。
そこで、西宮市の高級住宅地と知られる夙川(しゅくがわ)在住のKURUの水谷光佑氏に聞いてみました。
あ、一応、水谷氏が誰なのか紹介しておきますと『建築と不動産の融合』を目指す、素晴らしい建物のデザインをしてくれる方です。もし、関西でリノベーションや建築を考えている方は、ぜひ一度話を聞いてみた方が良いでしょう。
- 苦楽園
- 甲東園
- 昭和園
- 甲風園
- 甲陽園
- 香櫨園
- 甲子園
水谷氏の予想は、果たして本当なんですかね。
そこで、今回は、住宅地における2018(平成30)年の公示地価および基準地価のデータを活用して、西宮七園の1番地価が高い地点と㎡単価のランキングをつけてみました。
公示地価
国土交通省が毎年3月に公表するその年の1月1日時点における全国の標準地の土地価格を公示するもので、一般の土地取引や相続税評価・固定資産税評価の目安として活用されるとともに、公共用地の取得、金融機関の担保評価、企業が保有する土地の時価評価の基準としても活用される。
基準地価
国土交通省が毎年9月に公表するその年の7月1日時点における全国の基準地の土地価格を公示する指標で、一般の土地取引だけでなく、地方公共団体や民間企業の土地取引の目安として活用される。
では、ランキングスタートです。
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