不動産を売買する際、重要事項説明書の中に「その他重要な事項」という項目がある。
(この項目では、FRK・宅建協会・全日・全住協の重要事項説明書を念頭に説明しており、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。ここではFRKの記入方法を中心に解説しています。)
その他重要な事項とは?
宅地建物取引業法第47条第1号で、「宅建業者は、その業務に関して、宅建業者の相手方等に対し、重要な事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為をしてはならない」とされていたことから、その他重要な事項という項目がある。購入者の感性によっても異なるため、どの内容がその他重要な事項にあたるかの判断は難しく、告知すべき重要な事項は全て重要事項説明書に記載し、相手方が理解できるよう十分に説明する必要がある。
重要事項説明書に記載、説明すべき重要な事項として以下の例を出すが、説明すべき事項はこれだけではなく、この他にも数多くある。また、実際に記述する場合は、十分な調査に基づき判明した事実を正確に記載することに注意する。
①境界・越境
境界に関する取り決め事や隣地との紛争の有無、隣地との共有塀の有無や管理方法等、境界について何らかの引継事項がある場合、また屋根やひさし、フェンス、塀、樹木等の隣地への越境、あるいは隣地からの越境、道路への越境がある場合
例:隣接地の建物が越境している場合
②浸水等の被害
床上、床下を問わず、浸水の事実について、周辺地域が浸水の多い地域であれば、その事実(ハザードマップによる調査等)
例:過去に浸水した事実がある場合
③近隣の建築計画
日照、眺望、風向など、売買物件に影響を及ぼすと思われる近隣の建築計画がある場合
④騒音・振動・臭気等
一般的な観点から判断して気になる騒音、振動、臭気など(道路・電車・飛行機・工場・店舗等によるもの)
例:交通量が多い道路がある場合
例:飛行場(基地)の影響がある場合
例:工場の騒音・異臭等がある場合
例:地下鉄道の振動がある場合
⑤周辺環境に影響を及ぼすと思われる施設等
一般的な観点から判断して気になると思われるもの(ゴミ処理場、暴力団事務所、火葬場等)
例:近隣に暴力団事務所がある場合
例:高圧線(鉄塔)がある場合
⑥心理的影響がある事実
売買物件やその近隣での自殺、殺傷事件等の心理的影響があると思われる事実、近隣とのトラブル等
例:過去に自殺があった物件の場合
心理的に影響がある事項(過去に自殺や殺人事件があった物件等)は、プライバシーと密接な関係がある場合が少なくない。そのような場合、取引の関係者に対して取引上重要なことであれば真実をいう義務(告知義務)は、守秘義務に係る正当な理由に該当するので、その事実を告げることは守秘義務には違反しない。
ただし、人権に係る事項については、購入者にとって購入意思の決定に重大な影響を与える事項であったとしても、重要な事項として扱うことには問題がある。購入者から人権に係る事項について照会・質問されたときは、人権に係る事項を調査すること自体、不適切な行為であり調査できないことを購入者に説明し、理解を得ることが必要になる。
⑦その他
例:土地に法地がある場合
法面(のりめん)ともいい、実際に宅地として利用できない、切土や盛土の傾斜面のことを法地(のりち)という。
例:建物賃貸借の負担付き売買の場合
例:地盤補強工事等が必要となる可能性のある土地等の売買の場合
例:隣接地が土壌汚染対策法第5条の指定区域に指定されている場合
例:擁壁について
ちなみに売主が「物件状況等報告書」で行う説明は、宅建業者に義務付けている重要事項説明とは全く別のものだ。物件状況等報告書の記載内容に、宅建業法第47条第1号の重要な事項と考えられる事項があるときは、宅建業者は、記載内容について、事実関係等を十分に調査し、調査結果を重要事項説明書に記載し、買主に説明する必要がある。
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