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節税できる3000万円特別控除の計算を実際にやってみる

節税できる3000万円特別控除の計算を実際にやってみる

不動産を売却したときは、税金(譲渡所得)の計算をしなければなりません。譲渡所得とは売却価格から購入価格を差し引いたもので、利益が出ている場合は税金を納める必要があります。

このときに条件を満たせば、その利益から3,000万円差し引くことができる「3,000万円特別控除」という制度があります。

ここでは「3,000万円特別控除」を使って、3つのケースから実際に計算してみましょう。

3000万円特別控除の計算をするにあたって

あなたが居住用の不動産を売却したとき、①3,000万円特別控除、②10年超所有軽減税率の特例、③特定居住用財産の買換え特例、④居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、⑤特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除という5つの特例の適用を受けられる可能性があります。これをマイホームを売ったときの5つの特例といいます。

「3,000万円特別控除」を理解するためには「譲渡所得」についてしっかりと理解する必要があります。譲渡所得について知らない方は、まず下記を参照してください。

譲渡所得税の計算方法についてわかりやすく説明する

2016.01.24

「3,000万円特別控除」と「10年超所有軽減税率の特例」について知らない方は以下を先に必ず参照してください。

3000万円控除(不動産売却の税金)とはなにかわかりやすくまとめた

2016.01.30

1.土地・建物がともに夫・妻の共有の場合の計算方法

例題

相続で取得した居住用の不動産(=マイホーム)を平成28年2月に1億円で売却した。取得費は不明で、譲渡費用は500万円だった。なお、夫婦共有で持分は土地・建物ともに2分の1ずつとなっている。「3,000万円特別控除」と「10年超所有軽減税率の特例」の適用条件を満たしている場合の税金はいくらか?

譲渡益を求めます。取得費は不明なので概算取得費(5%)を使います。

譲渡益(=売却利益)=譲渡収入−(概算取得費+譲渡費)
1億円−(1億円×5%+500万円)=9,000万円

譲渡益を持分で按分します。

夫と妻、土地・建物ともに2分の1ずつ
夫:9,000万円×1/2=4,500万円
妻:9,000万円×1/2=4,500万円

「3,000万円特別控除」後の譲渡益を求めます。3,000万円特別控除は夫と妻それぞれ使えます。

夫:4,500万円−3,000万円=1,500万円 妻:4,500万円−3,000万円=1,500万円

「10年超所有軽減税率の特例」後の税額を求めます。

夫:1,500万円×14.21%=2,131,500円(所得税・住民税)
妻:1,500万円×14.21%=2,131,500円(所得税・住民税)

つまり、夫婦合計で4,263,000円になります。

2.土地が妻、建物が夫の所有の場合の計算方法

例題

妻が相続で取得した土地に、夫が建物を建築したマイホーム(=居住用の不動産)を平成28年2月に6,000万円(土地:3,500万円、建物:1,500万円)で売却した。土地の所有者は妻で、建物の所有者は夫である。取得費・譲渡費用は3,000万円(土地:2,000万円、建物:1,000万円)で、「3,000万円特別控除」と「10年超所有軽減税率の特例」の適用条件を満たしている場合、税金はいくらか?

このように居住用の所有者と敷地の所有者が異なる場合、家屋の所有者には「3,000万円特別控除」の適用がありますが、敷地(=土地)の所有者には「3,000万円特別控除」の適用はありません。しかし、家屋と敷地の所有者が異なる場合でも、家屋所有者の譲渡所得の金額から3,000万円全額が控除しきれないときには、次に掲げる要件の全てに該当する場合に限り、その控除しきれない金額を敷地所有者の譲渡所得の金額から控除することができます。

  • その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと
  • その家屋の所有者とその敷地の所有者とが親族関係を有し、かつ生計を一にしていること
  • その敷地の所有者は、その家屋の所有者とともにその家屋を居住の用に供していること
夫の場合
譲渡益(=売却利益)=譲渡収入−(概算取得費+譲渡費)
1,500万円−1,000万円=500万円
「3,000万円特別控除」を適用すると
500万円−3,000万円=0円
特別控除の枠が2,500万円分余ります。妻の場合
譲渡益(=売却利益)=譲渡収入−(概算取得費+譲渡費)
3,500万円−2,000万円=1,500万円
余った特別控除2,500万円を使うと
1,500万円−2,500万円=0円

つまり、0円なので税金はかからないということになります。

3.店舗兼住宅の場合の計算方法

例題

相続により取得した店舗併用住宅(居住部分3/4・店舗1/4)を平成28年2月に5,000万円で売却した。取得費は不明、譲渡費用が200万円で、居住用部分について「3,000万円特別控除」と「10年超所有軽減税率の特例」の適用条件を満たしている場合、税金はいくらか?

譲渡益を求めます。取得費は不明なので概算取得費(5%)を使います。

譲渡益(=売却利益)=譲渡収入−(概算取得費+譲渡費)
5,000万円−(5,000万円×5%+200万円)=4,550万円

譲渡益を居住用部分・非居住用部分で按分します。

居住部分:3/4、非居住(店舗)部分:1/4
居住用部分:4,550万円×3/4=34,125,000円
非居住用部分:4,550万円×1/4=11,375,000円

それぞれの税額を計算します。

居住用部分:(34,125,000円−30,000,000円)×14.21%=586,162円(所得税・住民税)
非居住用部分:11,375,000円×20.315%=2,310,831円

つまり、合計2,896,993円ということになります。

ちなみに、居住部分の面積がその家屋の面積のおおむね90%以上を占めている店舗兼住宅については、その家屋全部を居住部分とみて、「3,000万円特別控除」の適用を受けられます。

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この記事の執筆者

坂根 大介
坂根 大介さかね だいすけ

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。
野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。
「証券×不動産(売買)×IT」という強みと、契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、不動産屋社長のためのノートなどをわかりやすく発信している。
イクラ株式会社では、過去に家が売れた成約価格がわかり、売買実績豊富な信頼できる不動産会社とチャットで相談できる「イクラ不動産」を運営。日本経済新聞にも取り上げられる。
また、司法書士事務所では、不動産登記の専門家として登記だけでなく、離婚協議書の作成や遺産分割協議書の作成、相続登記、自己破産の申請を数多く行っており、住宅ローンなど金銭的問題・離婚・相続などを中心に法律に関わる不動産売却の相談が年間1000件以上ある。
主な資格は、宅地建物取引士JSHIホームインスペクター2級FPなど。

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