(※この記事は、筆者のベテラン君が実際に不動産会社から依頼を受けた「物件調査・重説作成」案件をもとに、調査や重説作成のポイントをわかりやすく説明するものです。)
こちらの記事では、擁壁(ようへき)がある土地の境界はどこなのかについて、物件調査のポイントをわかりやすく説明しています。
・擁壁(ようへき)とは?擁壁がある場合の物件調査方法についてまとめた
(現地とビデオ通話がつながっています。)
「地積測量図」によれば、北西と南西の2ヶ所に金属プレートの境界標があるはずです。
そして、側溝などの排水設備は、原則として擁壁所有者が敷地内に設置するものですから、「擁壁の下の側溝の内側が境界ラインかもしれない」と推測することは間違いではありません。
しかし、推測するのは大事ですが、疑問を持って検証する作業を怠ってはいけません。
側溝の内側が境界ラインだとすると、建物の外壁から境界までの距離が50cm未満※となります。
また室外機の一部が越境してしまいます。
本当にココが境界でしょうか?
(※建物は境界線から50cm以上話さなければならない:民法第234条第1項)
南側の境界標から擁壁の下の側溝までの距離を測って下さい。
この地積測量図は平成8年に作成されたものですからある程度信頼できます。
【ワンポイント】地積測量図の信頼性
平成5年以降、永続性のある境界標の設置と地積測量図への表記が義務づけられました。また、境界標が無い場合には、適宜の筆界点と近傍の恒久的地物との位置関係を地積測量図に記載することになり、測量によって筆界点を復元することが容易になりました。また、平成16年以降は、地積測量図に筆界点の座標値が記載され、境界復元性がより層高まりました。
仲介担当者のための物件調査の実践アドバイス
擁壁がある土地の境界はどこ?
今回の物件のように、擁壁の下側の敷地所有者が擁壁を所有しているのは珍しいケースです。
一般的には
(ア)擁壁は上側の敷地所有者が敷地内に設置するケースが比較的多い
(イ)排水設備(側溝等)は擁壁所有者が敷地内に設置するのが原則(民法218条:雨水を直接隣地側へ排水する工作物を設けてはならない)
ただし、ケースバイケース。古い年代に造成された宅地などでは、擁壁の下側の敷地内側溝で上側からの排水を処理する場合も多いです。まれに側溝を共有しているケースもあります。
境界を明らかにするためには、現地の計測結果と資料の突き合わせを行ってください。資料は地積測量図のみならず、開発の土地利用計画図、宅地分譲時の区画図、建物の建築時の図面なども確認しましょう。
今回の物件は、役所の建築家で取得した「建築計画概要書」をみれば、北側の擁壁も含めて当該敷地として建築確認申請をしていたことが読み取れました。
また、境界標の有無にかかわらず、可能な限り隣地所有者と会って境界の確認をしてください。境界確定において最も大切な要素は隣接地との合意だからです。
なお、境界標がない場合には、所有者に対して費用がかかることを説明したうえで資格者による測量と境界標の設置を促すべきでしょう。