不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(歴史まちづくり法)」という項目があります。
どのような不動産が「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
ここでは、不動産の重要事項説明における「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」について説明します。
次の不動産は「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」について重要事項説明が必要です。
- 歴史的風致形成建造物
- 歴史的風致維持向上地区計画区域内
地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律とは?
地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(歴史まちづくり法)は、地域におけるその固有の歴史や伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる歴史上価値の高い建造物とその周辺の市街地とが、一体となって形成してきた良好な歴史的な環境(歴史的風致:れきしてきふうち)を維持・向上させ、後世へ継承することを目的として、2008(平成20)年に定められました。
文化財保護法や景観法、古都保存法などの法律もありますが、これらは文化財の保護や土地利用の規制に主眼が置かれていて、歴史的建造物や街並みというハードと、伝統工芸や歴史的な行事というソフトが一体となった、地域固有の歴史的風致に十分な対応ができたわけではありませんでした。
市町村は、歴史的建造物を中心とする街づくりを行うために、歴史的風致維持向上計画(れきしてきふうちいじこうじょうけいかく)を策定します。この計画について国の認定を受けることにより、観光案内所や駐車場の整備、街並み形成のための電柱撤去などについて、補助を受けられます。
歴史的風致維持向上計画の中で、歴史的風致形成建造物を指定しますが、指定を受けた建造物の増築・改築・移転・除却に際しては、30日前までに市町村長へ届出が必要です。
【歴史的風致形成建造物の制限行為】
歴史的風致形成建造物の増築、改築、移転または除却をしようとする者は、当該増築、改築、移転または除却に着手する日の30日前までに、主務省令で定めるところにより、行為の種類、場所、着手予定日その他主務省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。
また、区域における歴史的風致の維持・向上と土地の合理的かつ健全な利用を図るため、その歴史的風致にふさわしい用途の建築物等の整備およびその区域内の市街地の保全を総合的に行うことが必要であると認められる区域を歴史的風致維持向上地区計画(れきしてきふうちいじこうじょうちくけいかく)として定めます。
具体的に、歴史的風致維持向上地区計画区域内では、用途規制を緩和して、従来は住宅地で立地できなかった工芸品店舗等の立地ができるようになりました。
また、歴史的風致維持向上地区計画区域内で、土地の区画形質の変更や建築物の新築等をする場合は、30日前までに市町村長に届出が必要です。
【歴史的風致維持向上地区計画区域内での制限行為】
歴史的風致維持向上地区計画の区域内において、土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築または増築などをしようとする者は、その行為に着手する日の30日前までに、行為の種類、場所、設計または施工方法、着手予定日等を市町村長に届けなければならない。
こちらの大仙陵古墳(仁徳天皇陵)がある大阪府堺市は歴史的風致維持向上計画が認定されています(歴史的風致維持向上地区計画は定められていません)。2024年3月時点では、95都市(40県)において歴史的風致維持向上計画が認定されています。
歴史的風致維持向上地区計画は、国土交通省のHPの地区計画等のページで確認することができますが、変更や廃止の可能性があるので役所に確認する必要があります。2022年3月の調査結果では、福島県白河市(南湖湖畔店舗地区)と福岡県太宰府市(観世音寺地区)の2か所が指定されています。
調査した結果、売買の対象となる不動産が、歴史的風致形成建造物や歴史的風致維持向上地区計画区域内に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
歴史的風致維持向上地区計画は、都市計画法で定める「地区計画等」の一つです。地区計画等とはそれぞれの目的に即した5つの地区計画の総称です。
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