不動産を売買する際、重要事項説明書の中に「瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要」という項目がある。
(この項目では、FRK・宅建協会・全日・全住協の重要事項説明書を念頭に説明しており、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。ここではFRKの記入方法を中心に解説しています。)
瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要とは?
宅地建物取引業法第35条第1項では、「当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置の概要」が説明すべき重要事項とされている。これだけでは何のことだかよくわからない。
ちなみに瑕疵(かし)とは、家の見えない欠陥のことで、瑕疵担保責任とは、宅地または建物に、契約の締結当時に隠れた瑕疵があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことをいう。
この項目は、売主が講ずる瑕疵担保責任の履行に関する措置について説明する項目だ。 瑕疵担保責任の履行に関する措置とは、売主(不動産業者)が倒産などにより、瑕疵担保責任を負うことができない場合でも、保険への加入などにより瑕疵担保責任を行うための備え(=措置)をしている(=講ずる)かということだ。よく混同されるが、瑕疵担保保証があるかどうかの項目ではないことに注意する。
また、住宅瑕疵担保履行法により、宅地建物取引業者が売主となる新築住宅の売買においては、瑕疵担保責任の履行に関する措置(売主は保険への加入または保証金の供託)を講じることが義務づけられている。
買主に説明すべき措置の概要
「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(ガイドライン)では以下のことを買主に説明することとしている。
- 保証保険契約又は責任保険契約にあっては、当該保険を行う機関の名称又は商号、保険期間、保険金額及び保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲
- 保証保険又は責任保険の付保を委託する契約にあっては、当該保険の付保を受託する機関の名称又は商号、保険期間、保険金額及び保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲
- 保証委託契約にあっては、保証を行う機関の種類及びその名称又は商号、保証債務の範囲、保証期間及び保証の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲
- 住宅瑕疵担保履行法にもとづく住宅販売瑕疵担保保証金の供託の場合は、保証金を供託する旨、供託する供託所の表示、所在地、共同分譲の場合の販売瑕疵負担金割合
なお、ガイドラインでは、上記①〜③の場合、措置の概要として、当該措置に係る契約の締結等に関する書類を別添すればよいとしている。
新築住宅の売主の資力確保措置
瑕疵担保責任の履行に関する措置(売主は保険への加入または保証金の供託)を資力確保措置は、ガイドラインに則して買主に説明する。
a.住宅瑕疵担保責任保険締結の場合
末尾備考欄の記入例
住宅瑕疵担保責任保険法人は、「(財)住宅保証機構」・「(株)住宅あんしん保証」・「(株)日本住宅保証検査機構」・「(株)ハウスジーメン」・「ハウスプラス住宅保証(株)」の5法人だ。
契約書の特約欄への記入方法【宅建業法37条】
b. 住宅販売瑕疵担保保証金の供託の場合
末尾備考欄の記入例
契約書の特約欄への記入方法【宅建業法37条】
既存住宅で措置を講じる場合
既存住宅の売買において、売主が瑕疵担保責任の履行に関する措置を講じる場合には、住宅の販売または媒介等を行う宅建業者の取引士がガイドラインに則して買主に説明する。
例えば、(財)住宅保証機構には既存戸建住宅を対象とした「既存住宅保証制度」があり、この制度は売主が個人の場合のほか、宅建業者の場合も利用できるので、販売受託を受けるときや媒介をするときに、売主業者が「既存住宅保証制度」を利用する場合には、買主に対し重要事項説明を要する。