相続が発生したとき、遺言がない場合は遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)を作成しなければなりません。
この遺産分割協議書とはどういうもので、どのようにして作成すればよいのでしょうか。
ここでは、自分で簡単に作成できる遺産分割協議書の作成方法と、作成に必要なポイントについてわかりやすく説明します。
遺産分割協議書とは
相続財産の分割というのは、遺言(ゆいごん)で遺産の分割方法が決まっている場合、遺産の分割は遺言によります。もし遺言がない場合、遺産は全て共同相続人(相続受ける人全員)の共有財産になります。共同相続人は協議をし、遺産の分割をするわけです。
分割協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要です。相続人が1人でも欠けた状態で行うと、その結果は無効となります。
あとで問題が起こらないよう、分割協議の内容は遺産分割協議書という文書で作成し、共同相続人が全員押印することにより確定します。この分割協議に特別の期限はありませんが、相続税の申告期限に間に合わない場合には、相続税の特例の適用を受けられません。
・相続税の期限に遺産分割協議がまとまらない場合はどうしたらいいの?
もし、被相続人(死亡した人)名義の不動産が残っていた場合、その不動産は相続を確定しなければ売却できません。また、一度分割協議を終了した後に、分割をやり直しても税務上は認められません。再分割した場合、相続した人の間での「贈与」とみなされて贈与税の対象になることもあります。
遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議書の作成方法に、 法律上の特別な決まりはありません。そのため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなくても、 自分たちで作成することができます。
遺産分割協議書の作成費用
遺産分割協議書の作成を司法書士に依頼すると平均6万円ぐらいです。
しかし、重要な点を書き漏らしてしまうと、 不動産の名義の書き換えができなくなる場合があるので注意が必要です。次のポイントに注意して作成してください。
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相続財産について記入漏れがあると、記入漏れをした財産についてのみ遺産分割協議をしていないと見なされます。また、後日判明した遺産についてトラブルを避けるために「4.その他」を加えておくと良いでしょう。
遺産分割協議書が複数ページにわたる場合には左側をホッチキスで綴じ、ページとページの境に相続人全員の実印で割印を押します。
最後に相続人全員が自筆で署名し、実印を押しますが、押したその隣にもう一つ実印を押してもらうと良いでしょう。この押印を「捨印」と言いますが、「捨印」とは「その書面において少しぐらいの修正であれば了解しています」 という意味を含んでいます。
もし、遺産分割協議書に1文字だけ間違いがあったために、 再度遺産分割協議書を全て作り直すことはとても面倒です。しかし、一度実印を押してしまったら、一文字でも修正してはなりません。しかしながらこれではあまりに不便で面倒くさいので、 「捨印」を押してもらうことで、 軽微な修正を認めてもらい、 もし万が一遺産分割協議書に書き損じたミスがあっても、 これにより遺産分割協議書を全て作り直す必要はなくなります。
遺産分割協議書の例文
次の例文を参考にしてください。
遺産分割協議書(例)
被相続人坂根八五郎の遺産については、同人の相続人である坂根実桜、坂根晴信の全員による分割協議の結果、それぞれ次に掲げる者が次に掲げる財産を取得し、債務を承継することとした。
記
1. 相続人 坂根実桜が取得する財産 (1) 土地
(2) 建物
2. 相続人 坂根晴信が取得する財産 ○○銀行 普通預金 口座番号○○○○○
3. 相続人 坂根実桜が承継する債務 (1) 債務 借入金
(2) 葬式費用 葬式費用一式 ○○○円
4. その他 ここに記載されていない相続財産及び後日判明した遺産については、相続人坂根実桜が全て取得することとする。 以上 上記のとおり相続人全員による遺産分割の協議が成立したので、これを証するため本書を3通作成し、次に署名押印の上、各自1通ずつ所持する。
平成○年○月○日 相続人 相続人
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※名前、住所等はすべて架空であり、実在の人物とはなんら関係はありません。
住民票の住所と不動産の登記事項証明書の住所が一致しない場合
相続登記を申請する際は、被相続人(死亡した人)の最後の住民票の住所と不動産の全部事項証明書の住所が一致しなければなりません。
もしも一致しない場合は、 古い住民票などからたどって転居の履歴がわかれば問題ありません。しかし転居を何度も繰り返して、 一致の確認ができない場合があります。そのような場合は、 遺産分割協議書に下記の文言を書き加えてください。
不動産会社で、司法書士に不動産登記や相続案件、離婚の書類の作成を依頼されたいという方は、「はつね司法書士事務所」にご相談ください。なお、上記不動産について、 被相続人の最後の住民票の住所は○○○○で、 登記上の住所は○○○○だが、住民票の除票や戸籍の附票を取得しても、 一致を確認することができなかった。しかし、上記不動産は被相続人の所有に相違なく、 これについて何か問題が起きた場合、 相続人全員で責任を負うことを申述する。
女性の司法書士で、かつ近年増えている外国人の売買の登記についても、英語・中国語の通訳、翻訳をしてくれます。