登記簿謄本(とうきぼとうほん)とは、このような書類です。
あなたが少しでも不動産に関わるとき、必ず一度は「登記簿」という言葉を聞くはずです。
この登記簿謄本(登記事項証明書)は、どのような内容がわかる書類なのでしょうか。
ここでは、登記簿の見方について、わかりやすくまとめました。
登記簿謄本・登記事項証明書とは
不動産登記とはその不動産がどんなものなのか、どこの誰が所有しているかを記録しているものであり、またその不動産で誰がどんなことをしたのか記録したものです。それらの記録がまとめられた台帳を「登記簿」といいます。
「謄(とう)」という字は、原本をそのまま写すという意味であり、登記簿謄本とは原本である登記簿をコピーしたものです。それが、現在は紙ではなくなったことから原本が存在しなくなり、代わりに磁気ディスク内容の登記内容(登記事項)をプリントアウトした書類が、登記事項証明書です。
詳しくは「登記簿謄本と登記事項証明書の違いはなにか」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
つまり、登記簿謄本(登記事項証明書)とは、登記記録がまとめられた台帳を法務局が発行している証明書のことで、土地は1筆ずつ、建物は1家屋ずつそれぞれ登記があります。
登記簿の構成としては、大きく表題部(ひょうだいぶ)と権利部(けんりぶ)の2種類に分かれます。
最初に表題部があり、権利部が続きます。権利部は、さらに甲区(こうく)、乙区(おつく)に分かれ、全体で3つの部分から構成されます。
3つの部分が必ずあるわけではなく、まず、表題部が、次いで甲区が、そして必要に応じて最後に乙区ができます。
表題部とは
表題部は、表示に関する登記を記録するもので、具体的には不動産の物的状況(モノがどういう状況なのか)を示します。建物を新築したときは、まず表示に関する登記である表題登記をつくり、新たに登記簿という箱をつくります。
表題登記については「表題登記とはなにかわかりやすくまとめた」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
新築だけでなく、増築や取壊しなどにより物的状況が変化した場合は、1ヶ月以内にその登記することが義務づけられていますが、登録免許税を納める必要はありません。
このように、正しい情報を提供する役割があることから公益的な性格が強いため、必ずしも所有者の申請でなく、登記官が職権によって登記できます。
- 土地:所在・地番、地目・地積・取得原因とその日付などを記録します。区分所有家屋(マンション)の場合には、加えて敷地権の目的たる土地の表示として敷地権の種類・割合などを記録します。
- 建物:所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積・取得原因とその日付などを記録します。区分所有家屋の場合には、一棟の建物の表示と専有部分の建物の表示として、建物の名称などを記録します。
表示に関する登記は、物件状況を明らかにすることだけでなく登記単位を変更するという役割もあります。
具体的には、土地の合筆により複数の筆の土地を1筆にしたり、逆に分筆により1筆の土地を複数の筆にします。これらは、登記単位を変更することによって、申請者に利益を与えることになるため、登録免許税を納める必要があります。
分筆・合筆などの登記は、申請者が任意に行うものであることから、職権による登記を行わないのが原則です。
権利部(甲区・乙区)とは
権利部は、権利に関する登記を記録し、不動産の権利関係を示します。
- 甲区:所有者の住所・氏名・登記の目的・取得年月日と取得原因を記録します。
- 乙区:登記の目的・原因・権利者などを記録します。
甲区は、所有権に関する事項、具体的には、所有権保存登記、所有権移転登記およびその仮登記ならびに処分の制限等に関する登記を記録します。乙区には、所有権以外の権利、具体的には、抵当権・根抵当権・地上権・地役権・賃借権等の設定・移転および抹消等の登記を記録します。
表題登記をしない限り、権利に関する登記である所有権保存登記はできません。所有権を明確にするための登記である所有権保存登記をすることにより、権利部の甲区が新たにつくられます。
所有権保存登記については「所有権保存登記についてわかりやすく説明する」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
また、乙区については、不動産を担保にしたり、他人が利用する必要が生じたとき、その権利を設定するためにつくります。必要がないとき、乙区はつくられません。
このように甲区・乙区に関する登記がないときは、記録自体がないということになります。つまり、抵当権の設定がなければ乙区はないし、所有権保存登記がない場合には甲区もありません。乙区だけあって、甲区はないということはありません。甲区や乙区がないときは、次の文が入っています。
- 乙区がないとき:ただし、登記の乙区に記録されている事項はない
- 甲区および乙区の両方がないとき:ただし、登記記録の甲区および乙区に記録されている事項はない
登記の種類については「不動産登記の種類についてわかりやすくまとめた」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
不動産調査の際に、登記簿謄本を取得して、どこを見なければならないかを知りたい方はこちらをご覧ください。
全部事項証明書・現在事項証明書とは
登記事項証明書には、全部事項証明書(ぜんぶじこうしょうめいしょ)と現在事項証明書(げんざいじこうしょうめいしょ)があります。
全部事項証明書は、抹消された事項を含む現在までの全ての内容が記載され、コンピュータ化以降の過去の履歴全部が記載された証明書のことです。
一方、現在事項証明書は、現時点で効力のある登記内容のみ記載されている証明書です。不動産の現所有者を知りたい場合は、どちらの証明書でもわかりますが、過去に所有者だった人や、過去にその不動産を担保にしてお金を借りていたこと(抵当権)などは、現在事項証明書には記載されていません。
証明書の末尾には、次の認証文と登記官の印が押されています。
- 全部事項証明書:これは登記記録に記録されている
- 現在事項証明書:これは登記記録に記録されている現に効力を有する事項の全部を証明した書面である
(全部事項証明書の末尾の認証文の例)
ですから、基本的に物件調査のときは、全部事項証明書を取得します。「現在事項証明書をあえて取る」という選択は、通常ありませんが、共同担保目録を取得するときは、過去に抹消された情報が必要なく、確認がややこしくなるため「ただし、現に効力を有する部分のみ」欄をチェックして取得することもあります。
(登記事項)要約書とは
不動産の登記記録を見たいときには「全部事項証明書」「現在事項証明書」「要約書」の3つのどれかを取得しますが、何かの証明書に使用する場合は「全部事項証明書」か「現在事項証明書」を取得します。その際、過去の登記記録が必要な場合は「全部事項証明書」を取得します。
証明書でなくてもよく、過去の登記記録が不要な場合で、単に現在の不動産の登記記録の内容を見たい場合であれば、3つの中で一番費用の安い「要約書」を取得します。
要約書は、登記事項要約書(とうきじこうようやくしょ)の略で、登記事項証明書(登記簿謄本)と比べると、甲区の記載が現所有者の記載だけであり、所有権を取得した原因は省略されます。乙区では、抵当権の記載が簡略化され、抹消された抵当権は省略されています。このように要約書は、なにかの証明書に利用せず、不動産調査などにおいて、登記記録を見るだけのために設けられているものです。
ただ、現実的に、乙区から得られる情報は大きいため、不動産会社は基本的に全部事項証明書を取得し、隣接する土地所有者を調べたり、境界確認の立ち会いや、前面道路の所有者などを特定したいときに要約書を取得します。
詳しくは「要約書を取得して何を調査すればよいのか?」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
登記簿謄本と登記簿抄本の違い
登記簿謄本は、登記事項の全部の内容を証明したものであるのに対し、登記簿抄本(とうきぼしょうほん)とは、登記事項の一部の内容を証明したものです。
登記事務をコンピュータで処理している法務局(登記所)では、登記簿謄本・抄本と呼ばず、登記事項証明書と呼んでいます。登記簿謄本については全部事項証明書、登記簿抄本については一部事項証明書と呼んでいます。
登記簿謄本の取得方法について
土地や建物の登記簿謄本(登記事項証明書)は、法務局に行くか、インターネットで誰でも取得することができます。その際に、印紙で手数料を納めなければなりません(法務局で印紙を買うことができます)。
注意しなければいけないことは、土地は地番、建物は家屋番号で請求する必要があり、地番や家屋番号は住居表示(住所)とほとんど一致しません。地番・家屋番号については、その地域の管轄の法務局HPの【地番・家屋番号の照会に関するお問合せ】の電話番号にかけると教えてもらうことができます。
詳しくは「登記簿謄本・公図・地積測量図・建物図面の取得方法についてまとめた」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
権利証と登記識別通知
少し前まで、不動産登記が完了した時には、登記済みであることの証明として「権利に関する登記済証」いわゆる「権利証(権利書)」が登記名義人に対して交付されていました。そして、この権利証(権利書)を持っていることが不動産の登記名義人を証明するものとされていました。
しかし、2005(平成17)年3月の不動産登記法の改正によって、権利証(権利書)を交付する制度を順次廃止し、その代わりに登記識別情報(とうきしきべつじょうほう)を登記名義人に通知する制度へと代わりました。
この登記識別情報とは、無作為に決められた12桁の英数字で、その不動産の登記名義人の本人であることの資料とされています。つまり、この英数字を知っているかどうかで、その不動産の登記名義人かどうかを確認することができるのです。
今後、不動産を売却するときは「登記識別情報(登記識別情報通知や登記識別通知ともいう)」が必要なため、「登記識別情報」は誰かに盗み見られたり、紛失することがないよう金庫などに保管して、しっかりと管理しなければなりません。
なお、登記識別情報が通知されていない不動産については、今まで通り、発行済の権利証(権利書)が登記申請の際に必要になります。
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