不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「景観法」という項目があります。
どのような不動産が景観法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
ここでは、不動産の重要事項説明における景観法について説明します。
次の不動産は「景観法」について重要事項説明が必要です。
- 景観計画区域内
景観法とは
景観法は、良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策をまとめた法律で、2004(平成16)年に定められた法律です。
写真は、東京都武蔵野市吉祥寺にある漫画家・楳図かずお氏の通称「まことちゃんハウス」です。こちらの建物を巡って、近隣住民が「景観を害する」と主張して裁判を起こしました。裁判は楳図氏側の全面勝訴で終結しましたが、景観がその地域にもたらす重要性を改めて認識するきっかけとなりました。
景観法は、都市だけでなく農村漁村も対象にして、地域の個性を反映した柔軟な規制によって景観の形成を図るための制度を定めており、景観に関する基本法です。このように景観法が対象とする景観は、自然景観より都市景観が主なものです。
景観行政団体は、現にある良好な景観を保全すべき区域、または新たに良好な景観を形成すべき区域について景観計画を定めることができます。景観計画の対象となる範囲を景観計画区域といいます。景観計画区域内で、建築物の建築等を行う際には、景観行政団体の長に届出なければなりません。
「景観行政団体」とは、政令指定都市および中核市、その他の区域では都道府県を指します。また景観行政を積極的に推進したい市町村は、都道府県知事と協議し同意を得て、景観行政団体になることができ、例えば鎌倉市があります。景観行政団体は、国土交通省のHPで調べることができます。
【景観計画区域内での制限行為】
景観計画区域内において、次の行為をしようとする者はあらかじめその行為の種類、場所、設計または施工方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を、景観行政団体の長に届出なければならない。
- 建築物の新築、改築、移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩の変更
- 工作物の新設、増築、改築、移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩の変更
- 都市計画法に規定する開発行為
- その他景観行政団体が条例で定める行為
また、この届出をした者は、その届出事項のうち、国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、あらかじめその旨を景観行政団体の長に届出なければならない。
また、景観行政団体は、景観計画区域内の良好な景観の形成に欠かせない重要な建造物を景観重要建造物、欠かせない重要な樹木を景観重要樹木として指定することができます。景観重要建造物の現状変更や、景観重要樹木の伐採や移植をする際には、景観行政団体に許可を受けなければなりません。
そして、景観行政団体は、景観計画区域による景観形成とともに、より積極的に強制力を持つ都市計画の地域地区として、景観地区を定めることができます。
景観地区は、都市計画区域(及び準都市計画区域)内で指定され、規制の対象は、建物だけでなく、工作物・樹木・屋外広告・意匠(いしょう)など多くの範囲にわたります。
【景観地区内の制限】
景観地区内において建築物の建築等をしようとする者は、あらかじめその計画につき市町村長の認定を受けなければならない。
市町村は、景観地区内の工作物について政令で定める基準に従い、条例でその形態意匠の制限、高さの最高限度もしくは最低限度または壁面後退区域における工作物の設置の制限を定めることができる。
市町村は、景観地区内における開発行為について、政令で定める基準に従い、条例で良好な環境を形成するため必要な規制をすることができる。
都市計画区域及び準都市計画区域以外では、準景観地区を定めて、景観地区と同様の規制を行うことができます。
景観計画区域内の土地所有者は、その住民全員の合意により、良好な景観形成を図るための自主的ルールとして景観協定を結ぶことができます。この効力は、その後、景観協定内の土地所有者となった者に対しても及びます。
まとめ
上記は、大阪市の「景観計画区域内における行為制限の基準の一部」を抜粋したもので、マンションの建設を念頭に置いています。景観計画区域は、その市町村の全域で指定されることが一般的です。大阪市も全域にかかっており、大阪市都市景観条例が定められています。
景観計画区域内で保存すべき景観として、詳細に厳しい制限がかかるのが景観地区(準景観地区)です。また、景観計画区域内で、住民が自発的に景観を守りたいときに、住民全員の合意によって結ばれるのが景観協定です。同じような名前で混同しがちになりますが、全く意味が異なるため注意が必要です。
こちらは大阪府景観計画区域図です。このように大阪府からみても、ほぼ全域に景観計画区域が指定されています。市町村が景観行政団体でなくても、多くの都道府県が景観行政団体であり、景観計画区域があると考えて良いでしょう。
調査物件が景観計画区域内に該当しているかを調べるには、GoogleやYahoo!で「◯◯市 景観計画区域」と検索するか、国土交通省のHPで調べることができます。
調査した結果、売買の対象となる不動産が景観計画区域内に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「景観法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
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