不動産を売買する際、重要事項説明書の中に「私道に関する負担等に関する事項」という項目があります。
(この項目では、FRK・宅建協会・全日・全住協の重要事項説明書を念頭に説明しており、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。ここではFRKの記入方法を中心に解説しています。)
私道に関する負担等に関する事項とは
「私道に関する負担等に関する事項」は、重要事項説明書の次の箇所で説明する内容です。
こちらの項目で、対象不動産と関連する私道について、買主が何らかの負担をする場合や利用制限を受ける場合に、その内容を明らかにして説明しなければなりません。大きくわけて、「対象不動産に含まれる私道に関する負担の内容」と「対象不動産に含まれない私道に関する事項」の2つに分かれます。
ここでの「私道」は、重要事項説明書の敷地等と道路との関係の項目で意味する「私道」(建築基準法上の道路)だけではなく、単に通行用(利用者が特定少数の場合も含む)の通路で私有のものも対象になります。
また、「負担等」とは、対象不動産に含まれている土地の一部が私道である場合の負担面積や、これに伴う負担金(公租公課を除く)のみならず、対象不動産には含まれていない私道を利用することに対して課せられる負担等のこともいい、分けて説明しなければなりません。
対象不動産に含まれる私道に関する負担の内容
対象不動産に私道が含まれる場合は、その私道の上に建物を建築することはできません。また、その私道が建築基準法上の道路の場合は、その部分の面積は建ぺい率・容積率の算定面積から除かれるため、土地の利用に大きな制約を受け、価格にも大きく影響します。
一般的な私道の形態としては、重要事項説明書の不動産の表示の項目で説明される記入例があります(必ず確認してください)。
これらの場合、負担面積部分の面積を記入(面積が不確定の場合は、約◯㎡と表示)します。
【私道が単独所有で負担金のない場合】
単独所有以外の場合は、その持分を記入しなければなりません。
また、私道について、維持管理費といった負担金等が課せられている場合や、負担金が将来課せられることが明らかな場合は、負担金は「有」となり金額を記入します。例えば、1年後に私道の管理が市に移るため、その私道の舗装工事を現在の所有者の負担で行う場合等です。
【私道が共有であり、負担金がある場合】
当該私道は◯◯◯◯以下共有者12名に管理責任がおり、その費用として上記負担金があります。
なお、セットバック部分については、セットバックが済んでいる・済んでいないに関係なく、私道負担という認識で説明しなければなりません。
【セットバック済である場合】
上記負担面積は、建築基準法第42条第2項により道路としてみなされる部分です。
土地の一部が、通行権(地役権を含む)の目的となっており、隣地の居住者の日常の通路として使用されている場合があります。このような場合も、私道に関する負担があるものとして考え、負担面積には通行に供される部分の土地面積を記入しなければなりません。そして、その通行権の内容について、空欄に記入します。
【敷地の一部が第三者の通行の対象となっている場合】
敷地の一部に北側隣接地所有者のための通路があり、無償で通行させることになっています。
対象不動産に含まれない私道に関する事項
対象不動産には含まれていなくても、対象不動産の敷地を利用する上で密接な関係がある私道があれば、この項目に記入し説明しなければなりません。所有権を持たない他人の土地を私道として通行することのできる根拠として、大きく分けて次のようなものがあります。
- 袋地の場合の通行権、いわゆる民法による囲繞地通行権(共有土地の分割または土地の一部を譲渡したことにより袋地が生じた場合の通行権)
- 通行地役権(対象不動産の元の地主や分譲主が、その所有者である場合、契約によるもの・時効取得によるもの・黙示によるもの)
- 債権による通行権(賃借権・黙示を含む使用借権・通行契約によるもの)
- 位置指定道路(建築基準法によって定められた道路のため、一般的に人が通行できるとされている。)
私道を利用することに対して、通行料や使用料といった負担があり、その金額が明らかな場合は空欄に記入します。また、これまでは無償であっても、売買などにより所有権が移転することをきっかけとして、私道の所有者から買主に通行料を請求される場合があるため、十分な調査が必要です。
後々のトラブルを回避するためにも、将来にわたって隣人関係を円滑にするためにも、通行権の根拠を明確にし、通行承諾書を取得しておくのが望ましいでしょう。
私道を掘削する場合は注意が必要です。対象不動産に含まれない私道に、上下水道やガス管を敷設する際は原則として所有者の承諾が必要となります。さらに承諾料などを請求される場合もあるため、詳細な調査が必要です。掘削することが明らかな場合、私道の所有者から事前に承諾書を取得することができれば、トラブルを防ぐ原因となります。
【前面道路(私道)に所有権等がなく、その使用について明確な取決めがない場合】
当該私道の通行および上下水道管やガス管等の敷設をする場合は、所有者(登記名義人に同じ)の承諾書が必要です。
なお、掘削に関して、共有者の承諾を必要としないケースもあり、その場合は関係各所(水道局・水道工事業者・ガス会社等)で確認した上で、共有者から問題はないのか、聞き取り調査をします。
【前面道路(私道)を分譲会社等が所有している場合】
開発行為の工事完了公告後、◯◯市に帰属する予定です。
私道部分について、分譲した不動産会社が所有したままの場合で、その会社がすでに存在していないケース(倒産など)がありますが、この場合は役所と協議し、どのようにすれば良いか相談します。
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