こちらでは、地区計画、建築協定、紳士協定の違いはなにか、詳しく説明します。
強制力があるか、私法か公法か
地区計画・建築協定・紳士協定は、街づくりの制度として同じように建築を制限するものであり、類似しています。
【地区計画（ちくけいかく）】
地区計画は、都市計画法に基づいて条例により定められるため、都市計画で決定されれば、賛成や反対にかかわらず、地区計画区域全域に対して強制力を持ち、必ずその内容を遵守しなければなりません。
また、このうち地区整備計画に基づいて、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項で、当該地区計画の内容として定められたものについては、条例でこれらに関する建築制限を定めることができます。
そのため、地区計画のうち、条例で建築制限が定められた場合には、地区計画に合致した建物でなければそもそも建築確認がおりず、建築できないこととなります。
【建築協定（けんちくきょうてい）】
建築協定は、正式に役所に届け出て認可されたものであるため、その内容について遵守しなければならないという点では地区計画と同様です。しかし、そもそも建築協定は、住民が自主的に協定内容を定め、それに賛成する者全員が合意して締結した私法です。地区計画のように条例に定められた公法ではありません。建築協定を定めるときに反対者がいた場合、その区画は協定区域からはずれるため、その区画に強制的に協定内容を適用することができません。
このように、所有者が建築協定の運営委員会に対して正式に不参入の手続きを取り、認められれば遵守の必要はないため、完全に強制力があるとはいえず、地区計画より制限が弱いといえます。
・建築協定（けんちくきょうてい）とはなにかわかりやすくまとめた
【紳士協定（しんしきょうてい）】
紳士協定は、あくまでも住民同士の申し合わせ事項に過ぎないため、内容について遵守すべき拘束力はなく、強制力はありません。
紳士協定とは
紳士協定は、任意（その人の自由意思にまかせること）の協定です。
こちらは東京都世田谷区成城の写真です。成城は都内でも屈指の高級住宅街の1つであり、街並みを守るために住民が成城憲章という紳士協定を定めています。
紳士協定とは、将来にわたって地域の住環境を守り、魅力のある個性的なまちづくりを進めるために住民同士が申し合いをして取り決めたものです。根拠となる法律がない任意協定であり、役所の認可などは受けていませんが、成城憲章のように自治体が認定し、広報や助言などの支援をしているケースもあります。
紳士協定は、地域によっては「任意の建築協定」や「まちづくり協定」あるいは「まちなみ協定」などと呼ばれています。
（成城憲章）
任意であるため、適用範囲は認可を受けている建築協定よりも広く、成城憲章のように駐車場の周辺整備への配慮など、建築に関することだけにとどまらないこともあります。
しかし、任意協定によるルールは、地域の当事者同士で守ることが必要で、違反者に対して法的な対処はできません。そのため、自治体が違反者に対して指導をすることもありません。また、任意協定の効力は、合意した者のみが対象となり、新たに敷地を購入した者に対して効力は及びません。
紳士協定の調査方法
紳士協定は強制力がなく、遵守する必要はありません。しかし、紳士協定内の不動産を購入する方には「周囲との関係に配慮した建築物の建築が望ましい」旨を、一言申し添えした方が望ましいでしょう。
ただ、調査する不動産が、紳士協定内に該当しているかどうか調査するのはかなり難しいです。なぜなら、基本的には役所に届出されていないため、役所で調査してもわからないからです。
あえていうなら、地区計画や建築協定の定めが無い、区画整理された分譲地に比較的多く見られます。そのような場合、不動産所有者または自治会関係者に確認するとよいでしょう。
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