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同和地区について購入者に伝えないことは宅建業法違反になるのか?

同和地区について購入者に伝えないことは宅建業法違反になるのか?
買主
この物件は同和地区の物件ですか?
借主
なぜ、この物件が同和地区にあることを教えてくれなかったの?

あなたが不動産業に従事している場合、このような同和地区に関する問い合わせを受けたことはないでしょうか。

また、同和地区の存在を知っている場合、そのことを購入者に伝えるべきか迷われたことはないでしょうか。

今でもこのようなケースは少なくありません。大阪府が平成27年度に実施した「人権問題に関する府民意識調査」において、住宅を選ぶ際に重視する(した)立地条件を聞いたところ、「近隣に同和地区があると言われていないか」という人が13.4%いました。

家を買ったり借りたりする際に重視する(した)立地条件

不動産会社として、実際、このような問い合わせや申し入れを受けた場合、どのように対応されているでしょうか?

同和地区であるかどうか答えること自体は差別につながるため良くないと考える業者も多いのですが、一方、伝えないことによって後で購入者からクレームがこないか、つまり、宅建業法に違反するかどうかを気にしている不動産関係者は多いのが現状です。

Tips同和地区(どうわちく)とは
同和地区とは、同和対策事業の対象となった地区のこと。同和対策事業とは、被差別部落の環境改善と差別解消を目的として行わた一連の事業のこと。歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域。

そこで、こちらでは、同和地区について購入者に伝えないことは宅建業法違反になるのかどうかについてわかりやすく説明します。

同和地区について購入者に伝えないことは宅建業法47条違反になるのか

宅建業法第47条では、第1号に列挙されている事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為が禁止されています。

第47条第1号とは「事実の不告知」のことを指しています。事実の不告知とは、購入するかどうかの判断に重要な影響がある事項について、不動産会社(宅建業者)が故意に嘘をついたり、隠し事をすることを意味します。

例えば、部屋で亡くなった人がいながら取引時に隠していた場合(心理的瑕疵)はこれにあたります。

宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

一 宅地もしくは建物の売買、交換もしくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、またはその契約の申込みの撤回もしくは解除もしくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為

イ 第三十五条第一項各号または第二項各号に掲げる事項
ロ 第三十五条の二各号に掲げる事項
ハ 第三十七条第一項各号または第二項各号(第一号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地もしくは建物の所在、規模、形質、現在もしくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額もしくは支払方法その他の取引条件または当該宅地建物取引業者もしくは取引の関係者の資力もしくは信用に関する事項であって、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

宅地建物取引業法第47条

同和地区についての回答も、「不動産会社(宅建業者)が、同和地区とわかっていながらそのことを購入者に伝えないことは、宅建業法47条に違反するのではないか」と以前からその解釈について意見が分かれていました。

同和地区に関する告知について、日本政府の見解は次の通りです。

取引相手から同和地区の存在について質問を受けた場合、回答しなければ宅建業法四十七条に抵触するかとの問い合わせがあるかどうかということも聞いております。これは、答えを言いますと、抵触するかというのは、抵触しないわけです。そんなことは答えなくていいというのが宅建業法の四十七条であります

平成22年5月18日第174回衆議院国土交通委員会における当時前原国土交通大臣の答弁を抜粋

このように、同和地区の存在について購入者に伝えなくても宅建業法47条に違反しないとすでに明確にされているのです。

こちらの国会答弁は、2007(平成19)年に、デベロッパーがマンション建設候補地を決定する際に、土地調査を広告会社に依頼し、その広告会社から委託を受けたリサーチ会社が同和地区の所在等を調査・報告していたことが発覚し、問題になっていたことに対する宅建業を管轄する国土交通大臣の答弁となっております。

かつて、1975(昭和50)年以降、同和地区の名称や所在地、戸数、主な職業などを記載した「部落地名総監」が売買され、結婚などの個人調査用に興信所で使用されたり、就職者の個人調査用に企業などが購入したりする事件が発覚し、大きな社会問題になりました。また、2011年(平成23)年に、偽造した職務上請求書を利用するなどして戸籍謄本等を不正に取得する全国的な事件が発覚し、事件に関与した探偵社業者や法務事務所関係者等が逮捕されています。

このことを受けて、同和地区について差別することを条例で厳しく制限する自治体も出てきています。

例えば、大阪府では2011(平成23)年「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」の一部を改正し、興信所・探偵社業者に加え、「土地調査等」を行う者を規制の対象とし、違反に対して罰則規定も設けられています

①興信所・探偵社業者に対して

・特定の個人またはその親族の現在または過去の居住地が、同和地区にあるかないかについて調査し、または報告しないこと。

・同和地区の所在地の一覧表等の提供及び特定の場所または地域が同和地区にあることの教示をしないこと。

②土地調査等を行う者に対して(不動産業者も含まれます)

・調査または報告の対象となる土地及びその周辺の地域に同和地区があるかないかについて調査し、または報告しないこと。

・同和地区の所在地の一覧表等の提供及び特定の場所または地域が同和地区にあることの教示をしないこと。

戸籍謄本などの不正な請求を防止するために、本人通知制度があります。

本人通知制度とは、本籍地等を表示する戸籍謄(抄)本や、住所・氏名・生年月日・性別等を示す住民票の写し等を本人の代理人や第三者に交付したとき、事前に登録した人に対して、その事実を通知するものです。

交付された事実を本人に通知することにより、委任状の偽造などによる住民票等の不正取得の早期発見につながり、個人情報の不正利用防止や事実関係の究明が可能となるものです。

同和地区の存在(「同和地区である」「同和地区でない」等)を調べること、答えること、教えること、教えることは、差別あるいは差別につながる行為です

同和地区について購入者に伝えなくても宅建業法違反にならないことを知っておくべきです。

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