1筆の土地を分割して、複数の土地にすること
分筆(ぶんぴつ)とは、1筆の土地の区画を人為的に変更して、2筆以上に分けることです。分筆の結果として、不動産の個数が増えます。
筆(ふで・ひつ)とは
筆界の筆(ふで・ひつ)とは、登記簿において1つの土地を指す単位で、特に土地の登記簿謄本や公図を見るときに、1筆(いっぴつ)、2筆(にひつ)と数えます。1筆ごとに登記が行われ、地番がつけられます。1筆の土地を分割して、複数の土地にすることを分筆(ぶんぴつ)といい、複数の土地を1筆の土地にすることを合筆(がっぴつ)といいます。
そして、分筆するために行う登記が分筆登記(ぶんぴつとうき)です。分筆しても権利関係は変わらず元のままなので、分筆した土地の登記簿には、元の土地の権利関係を転写します。
こちらは、地番が19番の土地から、19番2の土地が分筆された場合です。分筆したことがわかるように、元の土地にも枝番をつけて19番1とします。
(分筆する元の土地の登記簿[表題部])
(分筆された土地の登記簿[表題部])
分筆された土地には、「19番から分筆」と記録します。
すでに枝番が付いている土地の分筆
分筆された土地には現在付けられている最後の枝番の次の数字を付けます。例えば19番2の土地を2つに分筆する場合は、19番2と19番3となります。
分筆する元の土地は、分筆により面積が減ったので、以前の面積を抹消し、分筆後の面積を記録します。分筆する元の土地の登記簿の「原因及びその日付」欄は、まず地積更正による「③錯誤」とし、次の行に分筆の内容「①19番1、19番2に分筆」とします。地積更正された地積は、分筆後に実測(測量)した地積です。分筆前の元の土地全体の実測地積は、登記上に記載されません。
分筆する元の土地の甲区は変更ありませんが、乙区は変更されることがあります。例えば、分筆前の土地1筆だけが抵当権の目的だった場合、分筆により2筆になったので、共同担保目録を作成します。そして、元の土地の抵当権登記に共同担保目録の番号を付記登記で追加します。
(分筆する元の土地の登記簿[乙区])
一方、分筆された土地の甲区・乙区には、元の土地の登記内容を、職権で転写します。転写した登記の末尾に、「順位◯番の登記を転写」とし、分筆登記申請の受付年月日と受付番号を記録します。
(分筆された土地の登記簿[甲区])
甲区の所有権登記は、現在の所有者に関するものなので、最後の所有権移転登記のみを転写します。
(分筆された土地の登記簿[乙区])
乙区は、現在効力のある登記を転写します。
抵当権のついた土地の一部を売買する場合、売却する土地について、通常は抵当権を外すので、売却のため分筆した土地について抵当権を抹消します。この場合は、元の土地に付記登記をします。
(分筆する元の土地の抵当権消滅の登記)
分筆後の建物
分筆すると建物の表示(所在と家屋番号)にも影響を与えます。
19番2の土地にあった建物の敷地部分が分筆されて19番3になった場合、所在は19番地2から19番地3、家屋番号は19番2から19番3への建物の変更登記をします。
建物の登記上の所在は、変更登記をしない限り、元の地番である19番地2のままです。そのため、登記上では19番2の土地には、地上にはない建物が残ったままになります。逆に、分筆された19番3の土地は、実際には建物が建っているのに、登記上は建物がないことになります。
現在の地番で建物登記が見つからない場合は、分筆や合筆の可能性を考えて、関係する土地の地番を検索してみます。
分筆登記の申請
分筆登記の申請には、分筆する土地の範囲および面積を確定するために、地積測量図を添付します。
分筆する土地だけでなく、分筆して残る元の土地(分筆残地:ぶんぴつざんち)も実測(測量)しなければなりません(一部の特例を除きます)。そして、分筆する前の登記面積から分筆する土地の面積を差し引いた面積に対して、実測面積が誤差の許容限度をこえる場合は、元の土地について地積更正登記が必要になります。
つまり、分筆するときには、土地全体を実測しなければならず、その境界確定には隣地所有者の境界確認が必要なので、手間と時間がかかるため注意が必要です。
分筆後の土地について、新たに登記識別情報が通知されるわけではなく、分筆された土地の登記識別情報は、分筆前の土地のものを引き継ぎます。
登記識別情報と権利証
少し前まで、不動産登記が完了した時には、登記済みであることの証明として「権利に関する登記済証」いわゆる「権利書」が登記名義人に対して交付されていました。
しかし、2005(平成17)年3月の不動産登記法の改正によって、権利書を交付する制度を順次廃止し、その代わりに「登記識別情報(とうきしきべつじょうほう)」を登記名義人に通知する制度へとかわりました。