裁判による確定判決が出るまでに、権利が侵害されるおそれがあるときに、勝手な処分を制限する登記
仮処分登記とは、仮処分が執行された後に行われる登記のことです。処分の制限に関する登記の1つであり、不動産に関する権利の処分を制限します。
仮処分(かりしょぶん)とは、自分が当然受けるべき権利が侵害される緊急事態が差し迫っているときに、それを防止するための法的手続です。執行(しっこう)とは、法律・命令・裁判・処分などの内容を実際に実現するという意味です。
裁判訴訟において、確定判決が出て決着するまでには時間がかかるために、権利を保全するために暫定的な処分行うもので、仮差押(かりさしおさえ)が金銭債権を対象するのに対し、仮処分は金銭債権以外の権利を保全します。金銭債権(きんせんさいけん)とは、ある人が他のある人からお金を受け取る権利のことをいいます。
仮差押と仮処分はどちらも、自分の権利を保全するために、裁判所が発する命令で、まとめて保全処分といいます。保全処分は急いでいるため、手続きを早くする必要があり、一般的に書面だけで行われ、短期間で決定されます。裁判所は、保全処分を行うにあたり、一般的に保証金の供託(きょうたく:預けて保管してもらうこと)を命じます。
仮処分の対象は様々ですが、不動産に関しては多いのは「処分禁止仮処分」です。処分禁止の仮処分の登記がなされているのは、例えば次のようなケースです。
- 登記上はAがCに不動産を売却し、Cが所有者となっている。
- ところが、AからCに対する所有権移転登記は、BがAに無断で勝手に売買したものであるとして、AがCに対し、登記を自分名義に戻すよう訴えている。
- しかし、AからCに対する裁判訴訟において確定判決が出るまでの間に、Cが第三者であるDに不動産を売却してしまうとAの権利が保護されなくなってしまう可能性がある。
- そこで、Aの権利を保護するために、Aが処分禁止の仮処分決定を求め、裁判所の決定によってCから第三者であるDに対して不動産を売却することが、暫定的に禁止される。
処分禁止の仮処分とは、裁判所から一時的に所有者に不動産の売却を禁止する命令が出ていることを意味します。これは、一時的なものであり、所有者に売却の権限がなくなるわけではありませんが、仮に裁判で所有者の権利(不動産を所有していること)が否定された場合、仮に所有者から不動産を購入していても、仮処分命令を受けた債権者(権利を持っている人)に対抗できないため、結果として購入できなくなります。
そのため、登記に「処分禁止仮処分」の記載がある場合は、仲介を進めるべきではなく、弁護士に相談が必要です。
他にも、日照を阻害するマンション建築差し止めの仮処分などがあります。
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