不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「新住宅市街地開発法」という項目があります。
こちらは新住宅市街地開発法が初めて適用された大阪府の千里ニュータウンの開発当時の写真です。
どのような不動産が「新住宅市街地開発法」の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
ここでは、不動産の重要事項説明における新住宅市街地開発法について説明します。
次の不動産は「新住宅市街地開発法」について重要事項説明が必要です。
- 新住宅市街地開発事業により造成された宅地
新住宅市街地開発法とは
新住宅市街地開発法とは、人口集中の著しい市街地の周辺の地域において、健全な住宅市街地の開発及び住宅に困窮する国民のための、居住環境の良好な住宅地を大量に供給することを目的としたもので、新住宅市街地開発事業について定めたものです。
新住宅市街地開発事業の特徴としては、地域全体の都市基盤整備を前提に、単なる住宅だけでなく、道路・公園・学校・病院・ショッピングセンター・事業所などを、生活する上で全てそろった複合都市機能を持った、いわば本格的なニュータウンづくり事業であることです。
開発にあたっては、事業区域の土地を全面的に買収し、マスタープラン(計画)に基づいて宅地や公園用地・道路などを造成、その後、公募を原則として住宅の需要者に売却するという方法をとります。大規模になるので、事業の施工者は、都道府県・政令市・住宅供給公社・都市再生機構(UR都市機構)のどれかであることが一般的です。
制限の内容については、開発施行者が売却する際に、原則として譲受人(購入希望者)を公募すべきこと、譲受人に住宅の5年以内の建築義務を課すこと、義務違反等の場合の買戻特約を付すことなどが必要とされていることが特徴です。また、購入した土地・建物を10年以内に売却する場合には、都道府県知事の承認を受けなければなりません。これは、不動産の転売益の阻止が目的です。
【新住宅市街地開発事業により造成された宅地の制限行為】
新住宅市街地開発事業の施行者又は処分計画に定められた信託を引き受けた信託会社等(以下「特定信託会社等」という。)から建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者(その承継人を含むものとし、国、地方公共団体、地方住宅供給公社、特定信託会社等その他政令で定める者を除く。)は、その譲受けの日の翌日から起算して5年以内に、処分計画で定める規模及び用途の建築物を建築しなければなりません。
造成事業完了の公告の日の翌日から起算して10年間は、造成宅地等又は造成宅地等である宅地の上に建築された建築物に関する所有権、地上権等の権利の設定又は移転については、原則として、当事者が都道府県知事の承認を受けなければなりません。
こちらは、新住宅市街地開発法が初めて適用された大阪府の千里ニュータウンの現在の写真です。このように大都市圏の近郊に大規模な住宅市街地を建設するために活用され、東京都の多摩ニュータウン、茨城県のつくば研究学園都市なども新住宅市街地開発事業によって建設された例です。
こちらは千里ニュータウン内の桃山台の戸建街ですが、大阪府の抽選でした(公募)。この法律のテーマが、住宅に困窮する者への住宅地の供給が目的であるため、特別な事情がない限り、他へ譲渡(売却)することはできないことを定めており、転売阻止のための法律ともいえます。
新住宅市街地開発事業と土地区画整理事業の違い
新住宅市街地開発事業の仕組みは、都市計画決定された区域内の土地を全面買収し、道路や公園などの公共施設を整備し、造成した宅地に実際に住宅を建設するか土地のままで販売し、用地費や工事費に充てる。
一方、土地区画整理事業の仕組みは、地権者が公平な負担に基づいて土地を出し合い、その土地を道路や公園などの公共施設用地として活用するとともに、一部を保留地として確保しそれを売却して工事費に充てるといった違いがある。
現在は人口が減少していることもあり、大規模なニュータウン開発はあまり行われていません。新住宅市街地開発事業は、国土交通省のHPで確認(例:【調査結果】令和4年調査結果→No.9市街地開発事業(2)新住宅市街地開発事業をクリック)することができます。
調査した結果、売買の対象となる不動産が新住宅市街地開発事業により造成された宅地に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「新住宅市街地開発法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
不動産会社だけど、プロに不動産の基本調査や重要事項説明書などの書類の作成を依頼されたいという方は、「こくえい不動産調査」にご相談ください。
地方であっても複雑な物件でも、プロ中のプロがリピートしたくなるほどの重説を作成してくれます。