こちらでは、風致地区とはなにか、詳しく説明します。
都市の中の自然を守る地区
風致(ふうち)とは「自然の景色などのおもむき、あじわい」という意味で、風致地区は都市に残された水や緑などの貴重な自然環境を守る地域に指定され、都市における風致を維持するために定められる地区です。
自然公園法が都市の外にある自然を対象としているのに対して、風致地区は都市の中の自然を対象としているのが特徴です。
風致地区内では、風致を維持するために、建ぺい率、建築物の高さ、外壁後退、建築物の色彩・形態・意匠、植栽などについて、通常の制限よりも厳しい規定が適用されます。
風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為については、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で、都市の風致を維持するため必要な規制をすることができる。
厳しい規制の裏返しとして、風致地区が指定されている地区には、風格や由緒ある高級住宅街を形成しているところもあります。
都市の緑地保全に関する制度では一番古く、はじめて風致地区に指定されたのは、1926(大正15)年に東京の「明治神宮内外苑付近地区」です。
風致地区の指定は、10ha以上であれば都道府県または政令市が、10ha未満であれば市町村(東京特別区を含む)が行ない、次の行為をするときには、あらかじめ都道府県知事・市町村長の許可が必要になります。
- 建築物その他の工作物の新築、改築、増築または移転
- 建築物その他の工作物の色彩の変更
- 宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更
- 水面の埋立てまたは干拓
- 木竹の伐採
- 土石の類の採取
- 屋外における土石、廃棄物または再生資源の堆積
- その他、都市の風致の維持に影響を及ぼすおそれのあるものとして条例で定める行為
具体的な制限の基準や内容は、各地方公共団体の条例で定められます。
調査している不動産が風致地区に該当しているかどうかはGoogleやYahoo!で「◯◯市 風致地区」と検索すれば調べることができます。
上記の不動産は風致地区内にないということになります。
風致地区は、都市計画法で定める「地域地区」の一つです。地域地区とは、都市計画区域内の土地を、どのような用途に利用するべきか、どの程度利用するべきかなどを定めて21種類に分類したものです。国土交通省のHPによると2022(令和4)年3月31日現在、749地区で指定されており、地域地区の中でもポピュラーな地区の1つです。
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風致地区の例:千里山
風致地区はあくまでも都市の風致を 「維持」することが目的の制度であり、良好な自然環境や住環境をこれからつくろうとするものではないので、基本的には「現状の環境を変えないこと」に主眼が置かれているのが特徴です。
こちらは、大阪府吹田市千里山の写真ですが、ここは「千里山西風致地区」という風致地区に指定されています。庭に緑(植栽)が多いのがわかります。
千里山は、イギリスのレッチワースをモデルとした日本初の田園都市(1920年)として知られています。
田園都市とは、居住環境をよくするため、特に緑地・広場・公園・道路などを広くとり、田園的要素をもった都市のことで、大都市の市街地域から離れ、農村的景観の残るところに大規模な住宅地を形成しています。
明治時代後半の大阪市内では工業化の進展とともに、大気汚染、騒音などの公害問題が深刻化しており、そこへ人口の増加による住環境の悪化、コレラ・ペスト・チフス・肺結核の蔓延が重なり平均寿命を下げていました。
それらを避けるために、郊外への移住というのが背景にありました。さすがに、現在の千里山は、農村的景観は残っていませんが、かつての名残として噴水が残っておりラウンドアバウトとなっています。この噴水のロータリーを中心に直線の街路が放射状に伸び、その延長線上の北部と南部に小さなロータリーを配置し、全体を半環状に構成する設計で、開発総面積は9万8300坪、宅地区画は743区画(1区画80坪)、建築された住宅の建坪の多くは20坪前後でした。このような千里山の風致を守るために「千里山西風致地区」が定められました。
(真ん中の「千里山西」の文字の右側が噴水となっている)
現在の航空写真を見ても、当時と区割りが大きく変わっていないことがわかります。風致地区などにより大きく街並みを変えるような開発は行われず、当時の環境が守り続けられているからです。
街並みを含めて、当時の環境を守り続けるにはお金が必要になります。現在の千里山は北摂を代表する高級住宅街の1つとしてあげられます。
もちろん、地価が高い理由として、駅からの距離や人気の学校区という要因もありますし、風致地区の制限内容によってはそれほど厳しくないところもあるので、全ての風致地区が高級住宅街ではありませんが、風致地区≒高級住宅街のケースは多いと言えるでしょう。
こちらをみると風致地区の制限が厳しく、事細かに決められているのがわかります。
風致地区内の敷地はある程度の広さがなければ、思うような大きさの住宅は建てられません。風致地区に指定された土地の購入を検討する際には、事前に規制内容をよく確認し、考えているような建物を本当に建築できるかどうか十分に調査する必要があります。
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