こちらでは、建物譲渡特約付借地権(たてものじょうととくやくつきしゃくちけん)について詳しく説明します。
30年以上経つと建物を地主に売却する特約がある定期借地権
建物譲渡特約付借地権は、定期借地権の種類の1つで、借地権契約締結から30年以上が経過した時点で、借地上の建物を地主に売り渡すことで契約終了することを、契約当初に特約として取り決めておくものです。
建物譲渡(たてものじょうと:売却すること)の特約は、借地契約締結の時にしなければなりません。あとで特約を結んでも、建物譲渡特約付借地権と認められません。この特約を実行して地主が建物を取得すれば、土地と建物の所有者が同じになり、結果として借地権が消滅します。
一般的な定期借地権が、期間終了により建物を取り壊す点に対し、建物譲渡特約付借地権は、建物が存続する点が異なります。
建物譲渡特約付借地権の利用例としては、土地を借りて賃貸建物を建築し、賃貸収益を得る一方で、地主は地代収入を得ることで、有効利用を図るケースがあります。契約後30年以上が経過したあとで、地主は元の建物所有者(借地人)から建物を譲り受けて自分の所有とすることができます。つまり、貸した土地が地上建物付で戻ってきて、それ以降は家賃収入を得ます。
建物譲渡特約付借地権はあまり見かけませんが、登記は、借地権の登記に付記登記で、建物譲渡特約を登記するのが一般的な方法です。
(建物譲渡特約付借地権の登記例)
地主へ建物を譲渡するときに、借りていた人自らが建物を使用していた場合、建物を使用する権利がなくなります。また、建物に賃借人がいる場合、建物譲渡特約付借地権の契約締結時に、将来の建物譲渡を確実にするために、地主が建物へ所有権移転仮登記をしていると、仮登記に後れる建物賃借人は、建物の新所有者である地主に対抗できません。
このような場合に、元の建物所有者(借地人)や建物賃借人を保護するために、期間の定めのない賃貸借が成立することとします。
建物譲渡特約付借地権のまとめ
●1992年(平成4年)8月1日施行の借地借家法によりつくられた、3種類の定期借地権のうちのひとつ。
●契約当初に「30年以上が経過した時点で、相当の対価で借地上の建物を地主に譲渡する」旨の特約を結ぶことで、建物譲渡特約付借地権が設定される。契約のあとで特約を結んでも、建物譲渡特約付借地権と認められない。
●特に書面の必要はなく、口頭でも可(将来の紛争予防のためにも書面による契約書をつくることが望ましい)。
●将来の建物譲渡を確実にするために、所有権移転の仮登記をしておく必要がある。
●地主が建物を買取った日に、借地権が消滅する。
●地主が建物を買取った場合で、借地人または借家人がそのまま建物を利用したいという場合には、引き続きその建物を借家として利用させなければならない。(借家契約)
●一般定期借地権または事業用定期借地権(30年以上)との併用も可。地主が建物を買い取らない場合は、一般定期借地権または事業用定期借地権の契約期間満了で借地権は消滅する。その場合、借地人が建物を撤去して、更地で返還することになる。
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