不動産の調査の中でも、水道・電気・ガス・下水道といった生活関連施設の配管(ライフライン)調査は非常に重要です。不動産売買における重要事項説明の項目にも含まれています。
ここでは、水道(上水道・飲用水)の配管調査方法についてわかりやすく説明します。
重要事項説明書に記載されている水道(飲用水)の調査項目
ここでの水道とは、下水と区別して、飲用水・上水道をさします。
こちらが重要事項説明書に記載されている項目になります。
直ちに利用可能な施設、配管等の状況、整備予定・負担金の項目があります。
直ちに利用可能な施設
直ちに利用可能な施設として利用できる水道は、次の3種類です。
- 公営水道:水道法の適用を受ける自治体または自治体に準ずる団体(水道事業団)等が、水道事業を運営し、維持管理をしている水道。
- 私営水道:民間(法人、組合等)が、水道法に基づく許可を得て、別荘や団地等に給水を行う水道。公設の水道管がない地域に多く、数軒~数十軒で地下水などを利用、管理しているような水道。
- 井戸:自分の敷地に井戸を掘り、飲用水として利用している場合
配管等の状況
配管等の状況の項目は重要で、調査が必要です。水道管については、対象物件の敷地内配管・前面道路配管を調査し、配管の口径を調査します。敷地内配管とは、前面道路配管から敷地内メーター類まで引き込まれている配管のことです。水道局や役所で確認し、現地と照らし合わせます。
- 前面道路の埋設管の位置・口径・(材質)
- 敷地内への引込管の位置・口径・(材質・年度)
- 私設管の有無(管の所有者について)
水道管は所有者によって次の2種類にわけることができます。
- 公設管(自治体が所有し、維持・管理する管)
- 私設管(個人で埋設したため個人が所有し、個人で維持・管理する管)
私設管を利用する場合、設置者の承諾を得る必要があります。
整備予定金・負担金
もし、水道管を引く(敷設)予定がある場合や私設管の場合は、その時期と費用が発生するか(負担金の有無)について、こちらの項目で記載します。
水道管(配管)の調査方法
配管の調査では、水道管管理図面(上水道管管理図面)を取得し、次の調査ポイントを踏まえて、前面道路配管の種類・口径・調査物件への引込管を確認します。あわせて取得できる場合は、宅内図面も取得します。
①引込管の口径
昔は13mm管が主流でした。13mmの口径では水栓(蛇口)5つぐらいが目安です。現在の戸建ては、蛇口の数が7〜8個あるのが一般的なため、13mmでは容量不足となる可能性があります。水道局にもよりますが、再建築時に最低20mmか25mmに増径するよう指導(水道管を引き直すこと)されることが多く、その工事代は、通常自己負担となるため注意が必要です。
アパートの場合はなおさらです。アパートには規模により40~50mm程度の口径が必要で、従来の住宅を取り壊してアパートを建てる場合、口径が小さいため引き直すケースが多いです。
止水栓と水道メーターについて
止水栓(しすいせん)が右側にあるため、右から左へ水が流れていることがわかります。
②引込管の材質
水道局にて引込管の材質を調べます。引込管の材質には、主流の塩化ビニル管のほか、鋳鉄管(ちゅうてつかん)、鉛管(えんかん)、ステンレス鋼管、ポリエチレン管などがあります。なお、鉛管(LP管)は毒性があるため、取り替えるように指導されることが多く、工事費は通常自己負担となります。
③宅内図面の確認
水道管管理図面(上水道管管理図面)は、公設管の埋設状況を示す図面であり、敷地内への引込管の詳細については参考となる程度に過ぎません。そのため、他人地利用・他人管埋設については、必ず宅内図面で確認しなければなりません。宅内図面は個人情報なので、原則として所有者の委任状(または、所有者の「媒介契約書」でもよい場合もある)が必要です。
隣地の引込管の位置が不明確の場合は、水道局や役所の担当者にその近隣宅の引込状況をヒアリングします。ただし、個人情報のため教えてもらえない場合もあります。
他人管埋設と他人地利用
配管が他人の土地を通っており、その土地の所有者が変わって新たに使う場合に制限があったり、逆に他の土地への配管が地下を通っているため、建築に制限が生じる場合があります。
配管のトラブルの多くが他人管埋設・他人地利用によるものです。売主や現地、水道局での聞き取り調査(ヒアリング)や取得資料を付け合わせて、十分な調査が必要です。
・Aの敷地から見ると、Bの管が「他人管埋設(たにんかんまいせつ)」している
・Bの敷地から見ると、Aの敷地に「他人地利用(たにんちりよう)」している
このような場合、Bに前面道路から自分の敷地に、直接引込管を引き直してもらうのが一番良いのですが、費用がかかるため、隣地間のトラブルにつながりやすいのです。引き直してもらうこともあれば、将来Bが再建築する際に管を引き直すことの同意書を取り付けることもあります。引き直しの費用については、助成金が出るかどうか、水道局や役所に相談した方が良いでしょう。
④1宅地1引込の原則
1つの宅地につき、1つの引込管が原則です。引込管が複数あると、再建築の際に撤去を求められ、費用がかかる場合があります。
⑤行き止まり管の場合
位置指定道路など行き止まり道路に面する数区画の土地で、先に建てた住宅が、表の道路から私設管で引き込んだときは、その住宅の分だけの口径しかなく、あとから建てる住宅では、改めて本管から引き直さなければならないことがあります。
行き止まり管の場合は、使用軒数と口径の太さによって容量の限界があるためで、個別に調査の上、確認しなければなりません。
例えば、東京都の場合、行き止まり管の容量として、前面配管(共有の私設管)40mmのときは、20mm引込管7〜8軒分、前面配管50mmのときは、20mm引込管12〜13軒分が目安とされています。図の場合、40mm管から引込20mm管×10軒となり、容量不足で50mmへの増径工事をする必要があります。
⑥新たに管を引く場合や管を増径する場合
新たに宅内引込管を引く場合や、増径する場合には、水道局へ加入金(局納金)が発生する場合があるので確認が必要です。もちろん、加入金とは別に引き込み工事代金が必要です。
⑦前面道路の配管が送水幹線の場合
前面道路の配管が送水幹線(水を遠方地域に送るための大きな管)の場合、一般住宅へ引き込むための引込管と直接接続できないことがあるため、確認が必要です。例えば、東京都水道局では、350mm以下の水道管でないと引込管と接続できません。
私営水道や井戸の調査のポイント
公営水道ではなく、私営水道(組合水道など)の場合には、売主に供給先を確認し、公営水道の調査内容のほかに、管の維持費、使用者変更手続きの方法、公営水道になる予定はないかなどを確認します。
井戸水を使用している場合は、飲み水として利用しているかどうか、保健所などの定期的な水質検査の必要性と費用などを確認します。なお、井戸水を飲用水として利用する場合は、基本的に無料ですが、公共下水で排水していると、水量メーターが付けられて下水料金の支払いを求められる場合もあります。
また、井戸水を個人で自己使用するだけの場合には、必ず水質検査を受けなければならないというわけではありません。ただし、一定人数の利用や飲食店、旅館・ホテル等で井戸水を利用する場合には、必ず定期的に水質検査を受けなければなりません。
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