こちらでは、伝統的建造物群保存地区(でんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)について詳しく説明します。
伝統的建造物群と一体をなしてその価値を形成している環境を保存する地区
伝統的建造物群保存地区とは、文化財保護法に規定され、伝統的建造物群と一体をなしてその価値を形成している環境を保存するために、市町村が定める地区です。
例えば、城下町・宿場町・門前町・港町・山村集落などに残る歴史的な集落やまち並みが指定の対象となっています。国は、伝統的建造物群保存地区の中から特に価値の高いものを、重要伝統的建造物群保存地区として選定しています。
伝統的建造物群とは、周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している建造物群で、価値の高いものをいいます。歴史的風致とは、地域におけるその固有の歴史や伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる歴史上価値の高い建造物やその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境のことを意味します。
具体的には、全国各地の城下町・宿場町・門前町などに残る歴史的な建造物とその街並みや集落に指定されています。
例えば、白川郷の荻町集落は伝統的建造物群保存地区(重要伝統的建造物群保存地区)に指定されています。
伝統的建造物群保存地区は、それまでは建物単体でしか保存できなかった歴史的建造物を、面的な広がりのある空間として保存するための制度となっています。そのため保存地区内では、社寺・民家・蔵などの「建築物」はもちろん、門・土塀・石垣・水路・墓・石塔・石仏・燈籠などの「工作物」、庭園・生垣・樹木・水路などの「環境物件」を特定し、保存を図ります。
つまり、白川郷の合掌造(建物)を保存するのではなく、水路など残っている雰囲気(風致)なども含めて集落として保存する地区なのです。
また、住民が暮らしながら伝統的建造物群を保存することが前提となっており、地元住民が市町村と協力の上で主体的に保存活動を行います。歴史的風致を守るため、外観を変更する際の制限はありますが、建物内部の改装などは比較的自由にできます。
伝統的建造物群保存地区の制限内容として、建物の外観を変更(新築・増改築・改修・模様替え)するときは、市町村に申請して許可を得てから実施しなければなりません。
市町村は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第五条又は第五条の二の規定により指定された都市計画区域又は準都市計画区域内においては、都市計画に伝統的建造物群保存地区を定めることができる。この場合においては、市町村は、条例で、当該地区の保存のため、政令の定める基準に従い必要な現状変更の規制について定めるほか、その保存のため必要な措置を定めるものとする。
許可を与える基準については、許可対象となる行為をした後の伝統的建造物等の位置・形態等が伝統的建造物群の特性を維持していること、伝統的建造物以外の建築物等については、その位置・形態等が当該保存地区の歴史的風致を著しく損なうものでないことなどです。
また市町村は、現状変更の規制と保存のための必要な措置を確保するため必要と認める場合においては、国土交通大臣の承認を得て、条例で建築基準法の規定(建ぺい率・斜線制限・道路内建築制限など)を緩和することができます(建築基準法第85条の3)。
2021(令和3)年8月2日現在、重要伝統的建造物群保存地区は、104市町村で126地区が指定されています(文化庁HP)。
重要伝統的建造物群保存地区は、都市計画法で定める「地域地区」の一つです。地域地区とは、都市計画区域内の土地を、どのような用途に利用するべきか、どの程度利用するべきかなどを定めて21種類に分類したものです。
不動産会社だけど、プロに不動産の基本調査や重要事項説明書などの書類の作成を依頼されたいという方は、「こくえい不動産調査」にご相談ください。
地方であっても複雑な物件でも、プロ中のプロがリピートしたくなるほどの重説を作成してくれます。