不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「港湾法」という項目があります。
どのような不動産が港湾法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
ここでは、不動産の重要事項説明における港湾法について説明します。
次の不動産は「港湾法」について重要事項説明が必要です。
- 港湾区域内
- 港湾隣接区域内
- 臨港地区の分区区域内
港湾法とは
港湾法は、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発し保全することを目的として1950(昭和25)年に定められました。
港湾(こうわん)とは「港」という意味ですが、港とは「船が出入・停泊し、人が乗り降りしたり貨物を積みおろししたりする施設のあるところ」です。法律では、港湾法の対象となる「港湾」と「漁港」(漁港漁場整備法の対象)とに分けられます。
その上で、港湾は次の5つにわけられます。(港湾法第2条)
- 国際戦略港湾:国際競争力の強化を図り、一大拠点となる港湾
- 国際拠点港湾:国際海上輸送網の拠点となる重要な港湾
- 重要港湾:国際および国内海上輸送網の拠点となる港湾
- 地方港湾:重要港湾以外の港湾
- 避難港:小型船舶が台風などを避けるための港湾
港湾には、船舶が停泊し港湾施設が設置される水域と、人の乗り降りや貨物の積みおろしを行う陸上区域(陸域)があります。
港務局は、国土交通大臣または都道府県知事の認可を受けて、港湾として管理運営するための水域に港湾区域を指定します。港務局(こうむきょく)とは、地方公共団体が港湾を管理するために設置する財団法人です。
港湾管理者(港湾を管理する港務局もしくは地方公共団体)は、水域である港湾および港湾施設を維持・保全するために、港湾区域に隣接する陸域に港湾隣接区域(こうわんりんせつくいき)を指定します。
港湾施設とは、港そのものを含めた次の施設のことです。(港湾法第2条第5項)
名称 |
用途 |
水域施設 | 航路、泊地および船だまり |
外郭施設 | 防波堤、防砂堤、防潮堤、水門、閘門、護岸、堤防、突堤など |
係留施設 | 岸壁、係船浮標、桟橋、浮桟橋、物揚場および船揚場など |
臨港交通施設 | 道路、駐車場、橋梁、鉄道、軌道、運河およびヘリポート |
航行補助施設 | 航路標識、船舶の入出港のための信号施設・照明施設・港務通信施設 |
荷さばき施設 | 荷役機械、荷さばき地および上屋 |
旅客施設 | 旅客乗降用固定施設、手荷物取扱所、待合所および宿泊所 |
保管施設 | 倉庫、野積場、貯木場、貯炭場、危険物置場および貯油施設 |
船舶役務用施設 | 船舶のための給水施設、給油施設、船舶修理施設、船舶保管施設など |
港湾情報提供施設 | 案内施設、見学施設その他の港湾の利用に関する情報を提供するための施設 |
港湾公害防止施設 | 汚濁水の浄化施設、公害防止用緩衝地帯など |
廃棄物処理施設 | 廃棄物の受入・焼却・破砕施設、廃油処理施設など |
港湾環境整備施設 | 海浜、緑地、広場、植栽、休憩所など |
港湾厚生施設 | 船舶乗組員・港湾労働者の休泊所、診療所その他の福利厚生施設 |
港湾管理施設 | 港湾管理事務所、港湾管理用資材倉庫など |
港湾施設用地 | 前各号の施設の敷地 |
移動式施設 | 移動式荷役機械および旅客乗降用施設 |
港湾役務提供用移動施設 | 船舶の離着岸を補助する船舶、船舶のための給水、給油のための船舶・車両など |
港湾管理用移動施設 | 清掃船、通船その他の港湾の管理のための移動施設 |
また、港湾区域に接続し、それと一体として機能する陸上の区域で、都市計画法の地域地区として臨港地区(りんこうちく)が定められます。
港湾管理者が指定する護岸・堤防・さん橋等の水際線(みずぎわせん)から100m(概ね20mで指定されることが多い)以内の地域で構築物の建設などを行う場合は原則として港湾管理者の許可が必要です。
【港湾区域、港湾隣接区域、臨港地区内での制限行為】
港湾区域内または港湾隣接区域内において、港湾の開発、利用または保全に著しく支障を与えるおそれのある一定の行為をしようとする者は、原則として、港湾管理者の許可を受けなければならない。
臨港地区内で港湾管理者が指定した分区の区域内においては、各分区の目的を著しく阻害する構築物で地方公共団体が条例で定めるものを建設することができません。また、構築物を改築し、またはその用途を変更して、その条例で定める構築物とすることもできません。
港湾区域・港湾隣接区域・臨港地区については、GoogleやYahoo!で「港湾区域(港湾隣接区域・臨港地区) ◯◯港(もしくは都道府県名)」と検索すれば調べることができます。
調査した結果、売買の対象となる不動産が、港湾区域・港湾隣接区域・臨港地区の分区区域内に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「港湾法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
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