こちらでは、臨港地区(りんこうちく)について詳しく説明します。
港湾区域に接続し、一体的に利用される陸域
臨港地区とは、港湾区域に接続し、それと一体として機能する陸上の区域で、港湾法に定められています。
港湾(こうわん)とは「港」という意味ですが、港とは「船が出入・停泊し、人が乗り降りしたり貨物を積みおろししたりする施設のあるところ」です。港湾は港湾法の対象です。
港湾には、船舶が停泊し港湾施設が設置される「水域」と、人の乗り降りや貨物の積みおろしを行う陸上区域の「陸域」があります。
港湾は、都市の一部として、物流の場・生産の場・憩いの場といろいろな役割があります。これらの役割を果たすためには、一定の水域とその背後の陸域とが一体的に利用される必要があります。
そこで、このような陸域を都市計画法に基づいて指定したのが臨港地区です。臨港地区は、都市計画法で定める「地域地区」の一つです。地域地区とは、都市計画区域内の土地を、どのような用途に利用すべきか、どの程度利用すべきかなどを定めて21種類に分類したものです。
なお、都市計画区域以外の地域においては、港湾管理者が臨港地区を定めることができます。
また港湾は、利用する方法によって機能が異なってきますので、あらかじめ臨港地区を機能別に分けて、目的の異なる建物が無秩序に混在することを防止するため、分区(ぶんく)を指定し、構築物の規制を行っています。分区には次のものがあります。
- 商港区(しょうこうく):旅客または一般貨物の取扱いのための区域
- 特殊物資港区(とくしゅぶっしこうく):石炭、鉱石その他の大量のばら積をする物資の取扱いのための区域
- 工業港区(こうぎょうこうく):工場その他工業用施設を設置するための区域
- 鉄道連絡港区(てつどうれんらくこうく):鉄道と鉄道連絡船との連絡を行うための区域
- 漁港区(ぎょこうく):水産物を取り扱い、または漁船の出漁の準備のための区域
- バンカー港区:船舶用燃料用の貯蔵・補給を行うための区域
- 保安港区(ほあんこうく):爆発物その他の危険物の取扱いのための区域
- マリーナ港区:スポーツ・レクリエーションのためのヨット、モーターボートなどが利用する区域
- クルーズ港区:観光客が利用する区域
- 修景厚生港区(しゅうけいこうせいこうく):景観を整備し、港湾関係者の厚生のための区域
分区(ぶんく)
分区とは、臨港地区内で、機能・目的別に区分して指定した区域で、それぞれの目的に従って、条例により構築物の用途を規制します。
これら分区の目的を妨げるような建築は禁止されています。
臨港地区の例:大阪市
例えば、大阪市の臨港地区は、商港区・特殊物資港区・工業港区・保安港区・マリーナ港区・修景厚生港区の分区が定められています。
(臨港地区:大阪市)
こちらは大阪市住之江区咲洲(大阪南港)にある「ローレルスクエア大阪ベイタワー」「シーサイドレジデンスコスモスクエア駅前」「リバーガーデンコスモスクエア」の写真ですが、これらのマンションは臨港地区内にあります(とはいっても、分区が指定されていない無分区です)。
臨港地区は、GoogleやYahoo!で「臨港地区 〇〇市(町村)」と検索すれば調べることができます。なお、国土交通省のHPにおいて「都市計画区域、市街化区域、地域地区の決定状況」のページからも臨港地区を確認することができますが、変更や廃止の可能性があるので役所に確認が必要です。
分区内では、構築物の用途について、建築基準法に定める用途地域および特別用途地区の規定は適用されず、「大阪港臨港地区の分区における構築物の規制に関する条例」が適用され、「分区条例」に定める禁止構築物は、建築してはならないことになっています(大阪市HP参照)。
また、臨港地区内で、敷地面積が5,000㎡以上または床面積の合計が2,500㎡以上の工場または事業場を新設または増築するときには、港湾法の規定により届出が必要になります。
このように、臨港地区の分区は、各自治体の条例ごとに内容が異なるため、注意が必要です。
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