個別具体的に一つ一つの建物の建築に関して規制するのが「建築基準法」です!
不動産の売買を扱うようになると「都市計画法」と「建築基準法」が頻繁に出てきます。
でも、あまりにも頻繁に出てくるため、これが「都市計画法」で、これは「建築基準法」で…と混乱してしまいます。その内、どこが違うのかと疑問に思うことでしょう。
「都市計画法」と「建築基準法」は切っても切れない関係にありますが、「都市計画法」と「建築基準法」は、どのような違いがあるのでしょうか。
都市計画法とは
そもそも都市計画法とはどのような法律なのでしょうか。都市計画法第1条は次のように定めています。
この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(都市計画法第1条)
都市計画法は「都市計画に関し必要な事項」を定めている法律なのです。
都市計画とは、都市の将来あるべき姿(人口、土地の利用方法、主要施設等)を想定し、そのために必要な規制、誘導、整備を行い、都市を適正に発展させようとする方法や手段のことです。
もし、きちんとした都市の計画がなく自由に建築OKな場合、みんな自分の都合だけを考えた家を立ててしまい無茶苦茶になってしまいます。100階建ての家ばかりできるかもしれませんね。当然、道路なんてお金を出してわざわざ誰も作りませんし、道路に寄付として土地を提供する人もほとんどいないでしょう。水道もひけませんよね。
現代の人々の快適で住みやすい暮らしのためには、計画的に都市づくりを進めなければなりません。そこで、きちんと計画された都市をつくるために、規制の内容を示した法律として都市計画法があるのです。
実現するためには大きく2つの方法があります。
- 行政が自ら整備することで、都市づくりを行う
- 行政が都市づくりの計画に基づいて規制しながら、民間の開発や建築を誘導することで都市づくりを進める
これらの方法を都市計画法で定めているのです。
- 第1条〜第28条:都市づくりの内容
- 第29条〜第58条:民間の開発や建築に関する規制
- 第59条〜第75条:行政が自ら整備するとき(事業実施)に関する規制
- 第76条〜第98条:その他
計画的に都市づくりを進めるための具体的な規制
計画的に都市づくりを進めるための具体的な規制について説明しましょう。
都市計画法は、計画的に都市づくりを進めるエリアを都市計画区域と定め、そしてそれ以外のエリアを都市計画区域外として分けています。また、都市計画区域外で、そのまま自由勝手に開発・建設が行われると、将来、都市としての整備をするときに支障が生じる恐れがあると認められる区域を準都市計画区域として定めています。
都市計画の内容としては、市街化区域および市街化調整区域に分ける(区域区分)、用途地域などの地域地区を定める、都市施設などがあります。
都市施設とは、都市計画法に定められている道路、公園、水道・電気・ガス・ごみ焼却場、河川、学校・図書館・研究施設、病院・保育所、火葬場、市場などが都市施設にあたります。これらは都市に必ず必要な施設であり、適正に配置するために都市計画法で定める都市計画決定により設置を決める施設です。
区域区分や地域地区、そして都市計画法について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
・都市計画・区域区分・用途地域・地域地区・地区計画等とはなにか
建築基準法とは
次に建築基準法についてどのような法律なのかみてみましょう。建築基準法第1条は次のように定めています。
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
(建築基準法第1条)
建築基準法は「建築物の最低基準」を定めている法律なのです。
建築物の最低基準を定めることには、安全を確保するだけでなく、都市計画法による計画的な都市づくりと調和したものとすることが含まれています。そのため、都市計画法と建築基準法は切っても切れない関係にあるのです。
都市計画法による定めに従って、建築基準法による用途制限や容積率・建ぺい率の制限が課されます。
例えば、都市計画法で「市街化区域を12種類の用途地域に分けなさいよ」と定められていますが、「第1種低層住居専用地域は、高さ10mもしくは12mまでの建築物しか建ててはいけない」という規制の内容は建築基準法に定められています。
集団規定と単体規定について
建築基準法のうち、計画的な都市づくりのための規定(集団規定)は、都市計画区域および準都市計画区域に限って適用され、それ以外の個別の建築物の構造や、防火上、衛生上に関する規定(単体規定)は、安全性の確保を図るものとして、原則、全国一律に適用されます。
集団規定として具体的に、建築物の敷地と道路との関係、用途制限、建ぺい率・容積率、高さの制限などが定められています。「建築物の敷地は、建築基準法上の道路(幅員が4m以上)に、2m以上接しなければならない」がこれにあたります。
また、都市計画によって決められた用途地域内の土地については、建築できる建築物の用途地域による制限があり、建築物の延べ面積・建築面積は、都市計画によってそれぞれ決められた建ぺい率・容積率を超えることはできません。
単体規定としては、個々の建築物の防火や防災などの安全性の観点から、屋根、外壁、防火壁、廊下、階段、出入口などに関する規定があり、また衛生の観点から、採光、換気、石綿に関する事項などについて規定があります。
まとめ:都市計画法と建築基準法の関係
このように都市計画法は、建築基準法と密接な関係を有し、都市における建築等を規制しています。計画された街を実現するために大きなビジョンで規制するのが都市計画法、そして、個別具体的に一つ一つの建物の建築に関して規制するのが建築基準法といえるでしょう。
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