災害危険区域(さいがいきけんくいき)とは、津波や高潮、出水(洪水)などの自然災害による危険性が高い場所に指定されるもので、指定されると住宅(戸建・マンション)の建築は禁止されます。大規模災害が起きた被災地に指定し、区域内の建築物を制限や禁止することで災害による被害を予防することを目的としています。
ここでは、災害危険区域についてまとめました。
災害危険区域とは
災害危険区域は、建築基準法第39条に定められています。
1 地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる。
2 災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、前項の条例で定める。
災害危険区域を定めるのは地方公共団体(多くは都道府県)で、条例によって定められますが、区域や内容は各自治体によって異なります。おおまかに「災害危険区域」とはなにかを説明すると、津波、高潮、洪水などの災害に備えて、住宅や福祉施設といった居住用建築物の新築・増改築(リフォーム)を制限する区域ということになります。
ただし、指定されたら完全に建築禁止というわけではなく、条例の要件を満たすものについては、建築が可能な場合もあるため、各自治体の条例を確認する必要があります。
指定される特徴としては、土砂災害や洪水、津波、火山噴火などが起きた場所で、再来性(過去と同じ事柄・状態がまた起こること)のある被災地で災害危険区域に指定されることが多いとされています。例えば、1959年の伊勢湾台風、1993年の北海道南西沖地震、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災があげられます。東日本大震災では、過去2番目の大きさの津波(明治三陸大津波)に対応できる防潮堤の整備を前提に、東日本大震災と同等の津波によるシミュレーションを行った結果、浸水被害の発生する可能性が高い区域を3段階に区分し、甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸部37市町村が災害危険区域に指定されました。
災害危険区域のうち、特に住民の居住に適当でないと認められる区域は住居の集団移転を促す「移転促進区域」とすることが可能で、移転に関わる経費は国から補助金が支給されます。
災害危険区域についてのQ&A
ここでは、災害危険区域についてよくある質問についてまとめました。
どのように指定されるの?
まず、被災範囲及び被災状況を把握します。その上で、災害危険区域の指定エリアを検討し、学識者等による安全性の調査、居住者の移転意向の把握等の実施を行います。被災者の移転、再建に関する意向の把握をした上で、災害危険区域条例を作成します。条例によって災害危険区域の指定がなされます。
どこで指定区域を確認できるの?
現地に標識などは設置されず、図面により範囲を確認できます。図面は、インターネット、市役所(町村役場)などの窓口で閲覧できます。
指定されると既存不適格の住宅は、ただちに移転勧告を受けるの?
既存不適格建築物について、直ちに移転勧告することはありませんし、指定される前から建っている住宅には、住み続けることができます。ただし、建物の新築・増築・改築はできません。また、移転の支援を受ける際は、既存の住宅に住み続けることができません。
住宅(住居の用に供する建築物)以外は建築可能なの?
事業所、店舗、工場、倉庫などの居住用の建物でないものは、建築可能とされています。
災害危険区域に指定されたらどうしたらいいの?
不動産取引(売買・交換・賃借)においては、宅地建物取引業者は、対象物件が「災害危険区域」内である旨を記載した重要事項説明書を交付し、説明を行わなければなりません。(宅建業法第35条第1項第14号)
調査の際は、建築基準法第39条による災害危険区域が指定されているかどうか、指定されている場合は、災害危険区域内の土地利用制限を定めている条例についても忘れず調査しなければなりません。
災害危険区域にある不動産は安くなるのか
結論からいうと、災害危険区域に指定されると不動産価値は下がります。
こちらは、福島県相馬市磯部地区の災害危険区域内にあるメガソーラーです。
基本的には、居住用の建築物、いわゆる住宅の建築だけでなく、増築や改築などのリフォームも禁止されるため、居住用不動産の価値としてはほぼ無価値になります。
また、国は「コンパクトシティ」の概念を打ち出し、立地の良い場所に「集まって住む」ことを政策としておしすすめています。そこで各自治体は、集まって住むべき場所として「居住誘導区域」を設定していますが、建築基準法第39条第1項に規定する災害危険区域のうち、同条第2項の規定に基づく条例により住居の用に供する建築物の建築が禁止されている区域は、居住誘導区域に含まれないこととされている区域、また住宅の建築が禁止されていない災害危険区域内であっても、原則として、居住誘導区域に含まないこととすべき区域に定められているのです。
居住誘導区域内の不動産価格は維持されますが、居住誘導区域外の不動産価値は下落します。
災害危険区域に指定された後、地価が下がった場合でも、それは自然災害に起因するものであり、下落分を地方自治体が補償するものではありません。
建築基準法に規定されている他の建築制限とどう違うの?
建築基準法において、規定されている被災地の建築制限には、災害危険区域の他に、特定行政庁が復興のための都市計画や土地区画整理事業を前提に建築制限をかける場合があります。
1 特定行政庁は、市街地に災害のあった場合において、都市計画または土地区画整理法による土地区画整理事業のため必要があると認めるときは、区域を指定し、災害が発生した日から1か月以内の期間を限り、その区域内における建築物の建築を制限し、または禁止することができる。
2 特定行政庁は、更に1か月を超えない範囲内において、前項の期間を延長することができる。
84条の規定は、災害からの復旧を目指し、かつ適用対象範囲を都市計画区域内に限るのに対し、災害危険区域は災害を予防するための規定で、提供対象範囲は都市計画区域に限りません。
また、84条の規定は、建築制限の期間が限定される(延長は可能)のに対し、災害危険区域は、期間が定められません。
指定解除されるには?
災害危険区域は原則として解除できません。
・災害危険区域の設定は、時限的な規制である建築制限とは異なり、地権者に対しては大きな利用制限となる。
・集落等移転が行われる場合には、将来的に危険区域が宅地化されることのないよう、災害危険区域を設定しておく必要がある。
(内閣府HPより抜粋)
災害危険区域の調べ方
これまでに全国で約18,000箇所ほど指定されていますが、都道府県のHPに整備されていないケースが大半のため、市区町村レベルで調べます。GoogleやYahoo!で「◯◯市(町村) 災害危険区域」と検索しましょう。
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