不動産を売買する際、重要事項説明書の中に「住宅性能評価を受けた新築住宅である場合」という項目がある。
(この項目では、FRK・宅建協会・全日・全住協の重要事項説明書を念頭に説明しており、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。ここではFRKの記入方法を中心に解説しています。)
住宅性能評価を受けた新築住宅である場合とは?
対象不動産が「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」第5条第1項に規定する住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨をこの項目で説明しなければならない。
この項目では、新築住宅の売買の場合に、「設計住宅性能評価書」および「建設住宅性能評価書」の交付の有無を記入し、住宅性能評価制度を利用しているか否かを説明する。
ちなみに、品確法上の新築住宅の定義は以下の通りとなっている。
新築住宅とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもので、かつ、建設工事の完了の日から起算して1年を経過していないものをいい、新築後1年以上売れ残った建売住宅は、新築住宅に該当しません。
住宅とは、人の居住の用に供する家屋または家屋の部分(居住用以外の部分と共用する部分を含む。)をいい、共同住宅、併用住宅等も住宅に含まれる。
住宅性能表示制度とは?
①新築住宅の住宅性能評価
住宅性能表示制度は、平成12年4月1日に施行された品確法に基づき、同年10月に新築住宅を対象に運用開始された制度だ。
住宅に関する品質や性能について、客観的な基準(日本住宅性能表示基準および評価方法基準)に従い、登録住宅性能評価機関により評価が行われ、その結果が所定の標章(マーク)が付された住宅性能評価書として申請者に交付される。
新築住宅の性能評価には、設計図書等の審査に基づく「設計住宅性能評価書」と、現場での施工状況の検査等に基づき、設計住宅性能評価を受けた設計図書どおりの施工がなされていることを確認する「建設住宅性能評価書」の2種類がある。
②住宅性能表示制度の利用は任意
住宅性能表示制度は任意の制度で、品確法のもう一つの柱である「新築住宅の基本構造部分(構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分)の10年間の瑕疵担保責任の特例制度」が全ての新築住宅に適用されるのに対し、住宅性能表示制度の利用は当事者の任意とされており、住宅性能評価を受けることは義務になっていません。
③住宅性能評価書の交付と契約条件
登録住宅性能評価機関が交付した新築住宅の住宅性能評価書またはその写しを売買契約書に添付した場合や、売主が買主に渡した場合には、その住宅性能評価書に表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことについてを契約したものとみなされる(品確法第6条第2項、第3項)。ただし、この規定は、売主が売買契約書において反対の意思を表示しているときは、適用がない(品確法第6条第4項)。
④新築住宅の住宅性能評価書に表示される性能表示事項
日本住宅性能表示基準で設定されている性能表示事項は10分野34項目(新築住宅は32項目)で、各項目ごとの性能は等級や数値で表示され、等級は数字が大きいほど性能が高いことを表している。
項目 | 評価内容 |
1 構造の安定に関すること | 地震や風等の力が加わった時の建物の強さ(壊れにくさ)に関連すること |
2 火災時の安全に関すること | 火災が発生した場合の避難のしやすさや建物の燃えにくさなどに関連すること |
3 劣化の軽減に関すること | 建物の劣化(木材の腐食、鉄のさびなど)のしにくさに関連すること |
4 維持管理への配慮に関すること | 配管の日常における維持管理(点検、清掃、修繕)のしやすさに関連すること |
5 温熱環境に関すること | 防暑、防寒など、室内の温度や暖冷房時の省エネルギーに関連すること |
6 空気環境に関すること | 化学物質(ホルムアルデヒド)などの影響の抑制や換気など、室内の空気の清浄さに関連すること |
7 光・視環境に関すること | 採光などの視覚に関連すること |
8 音環境に関すること | 騒音の防止などの聴覚に関連すること |
9 高齢者等への配慮に関すること | 加齢等に伴う身体機能が低下した時の移動のしやすさや介助のしやすさ、転落、転倒などの事故の防止に関連すること |
10 防犯に関すること | 開口部(ドアや窓)の侵入防止対策に関連すること |
(2)住宅性能評価の流れ(新築住宅の場合)
①設計住宅性能評価書
設計住宅性能評価は、新築住宅の設計段階で行われるもので、指定住宅性能評価機関が日本住宅性能基準および評価方法基準に基いて設計図書(設計図面や仕様書など)を評価し、その結果を「設計住宅性能評価書」として交付する。
②建設住宅性能評価書
新築住宅の建設住宅性能評価は、設計住宅性能評価を受けた住宅が対象で、設計住宅性能評価を受けていない住宅は、建設住宅性能評価を受けることはできない。
指定住宅性能評価機関は、3階建以下の住宅の場合、原則として施工段階と完成段階の計4回の現場立入検査と工事内容の記録書類の確認を行い、建設された住宅の性能を評価し、その結果を「建設住宅性能評価書」として交付する。
建設住宅性能評価書は、設計住宅性能評価書と同じ性能項目の評価結果が記載されるので、記載内容を容易に比較することができる。
なお、建築基準法で工事の完了検査が義務付けされているにもかかわらず、検査済証の交付を受けていない住宅については、建設住宅性能評価書は交付されない。逆にいうと、建設住宅性能評価書が取得されている不動産は検査済証も取得しているということになる。
③指定住宅紛争処理機関
建設住宅性能評価書が交付された住宅については、国土交通大臣が指定する指定住宅紛争処理機関(各地の単位弁護士会)に紛争処理を申請することができる。指定住宅紛争処理機関は、住宅の紛争を円滑・迅速に処理(あっせん、調教、仲裁)するための機関で、建設住宅性能評価書が交付された住宅の紛争であれば、評価書の内容だけでなく、売買契約に関する当事者間の全ての紛争の処理を扱う。
(3)重要事項説明をする内容
①住宅性能評価を受けた新築住宅である場合
対象不動産が新築住宅の場合で、住宅性能評価を受けているときは「該当する」を選択する。逆に、住宅性能評価を受けていない新築住宅、または既存(中古)住宅のときは「該当しないので、説明を省略します。」を選択する。
重要事項説明時に交付する場合は、末尾付属書類欄にも記載する。また、売買契約書の特約欄にも交付する住宅性能評価書の名称を明記しておいた方がよい。
②なぜ既存(中古)住宅の住宅性能評価は該当しないのか
平成14年8月の日本住宅性能表示基準・評価方法基準等の改正で、住宅性能表示制度の対象に、既存住宅(新築住宅以外の住宅)が追加されたのだが、既存住宅の住宅性能評価を重要事項に加える国土交通省令の改正はないため、既存住宅の場合には説明は不要となっている。
(4)住宅性能評価書と契約内容との関係
①契約したものとみなされる内容
住宅性能評価書もしくはその写しを売買契約書に添付、または買主に交付した場合に、契約したものとみなされる内容は、売買契約の締結時期によって異なる。
未完成物件の売買の場合は「設計住宅性能評価書」、完成物件の売買の場合は「建設住宅性能評価書」に表示された性能を実現することが必要になる。
②引渡し時点で住宅性能評価書記載の性能が実現されていない場合
ア.設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の評価内容が異なった場合
未完成物件の売買の場合、建設住宅性能評価書は引渡しの際に交付されるので、買主は、建設住宅性能評価書の評価内容が設計住宅性能評価書のものと相違がないか確認することができる。もし、建設住宅性能評価書の内容が設計住宅性能評価書の内容より劣っている場合は、売主の債務不履行または契約不適合責任として、買主は売主に修補の工事または損害賠償等を請求することができる。
イ.引渡し後に施工不良が判明した場合
引渡しを受けた後に、住宅性能評価書に表示された性能どおりの住宅になるように施工されていないことが判明した場合、売主の債務不履行または契約不適合責任として、買主は売主に修補または損害賠償等を請求することができる。ただし、引渡し後に年数を経過したことによる自然の劣化で生じた性能の低下は、契約不適合責任の対象にはならない。施工不良等が原因の場合に限られることに注意が必要だ。
③契約内容から除外する場合
設計住宅性能評価書を参考資料として買主に交付する場合など、売主が設計住宅性能評価書に表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことを約束できないときは、その旨を売買契約書に明記(特約)し、重要事項説明書その他重要な事項欄にもその旨を記載する。
(5)建築基準法との関係について
品確法と建築基準法は、別々の法律であり、品確法に基づく住宅性能表示制度と建築基準法に定める確認検査は別の手続きで行われ、住宅性能評価を受けたからといって、建築基準法に定める確認申請手続きや工事の完了時に検査が省略されることはない。
(6)財団法人住宅保証機構の「住宅性能保証制度」について
財団法人住宅保証機構が新築住宅を対象に実施している「住宅性能保証制度」はあらかじめ住宅保証機構に登録した業者が利用できる制度で、品確法に基づく10年保証をいわば先取りしてきた仕組みで、法律に基づくものではない。
住宅保証機構が派遣する検査員の工事中2回の現場審査に合格した住宅に保証書が発行され、売主または施工業者が基本構造部分に係る瑕疵の発生に対応して修補を行う場合に、その修補費用を保険でサポートする制度だ。もし売主または施工業者が倒産して債務の履行が困難となった場合でも、保険金が買主に支払われる。
なお、瑕疵担保責任の特例制度や瑕疵保証制度の保険制度は、あくまでも基本構造部分について生じた構造耐力や雨水の侵入に影響のある瑕疵を対象とするものであり、住宅性能表示制度によって評価された住宅性能が維持されることなどを10年間保証するものではないことに注意する必要がある。
(7)既存(中古)住宅の住宅性能評価について
既存住宅の住宅性能評価は、建設済みの住宅が対象となっているので、設計住宅性能評価は無く、当該住宅の現況の検査および必要に応じての設計図書等の審査によって評価する建設住宅性能評価のみが行われる。交付される既存住宅の住宅性能評価書は、品確法上は建設住宅性能評価書に該当するが、新築住宅のものとは異なる点が多く、消費者の誤解を避けるため、運用上の名称は「現況検査・評価書」で国土交通省令で定める標章(マーク)が表示される。
重複するが、既存住宅の場合、品確法第6条の規定は適用されないので、既存住宅の住宅性能評価書の記載内容は、売主と買主との間でその記載内容を契約内容とする旨の合意がなければ、契約内容とみなされることはないことに注意が必要だ。
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