不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「地すべり等防止法」という項目があります。
どのような不動産が地すべり等防止法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
ここでは、不動産の重要事項説明における地すべり等防止法について説明します。
次の不動産は「地すべり等防止法」について重要事項説明が必要です。
- 地すべり防止区域内
- ぼた山崩壊防止区域内
地すべり等防止法とは?
地すべり等防止法は、地すべりやぼた山の崩壊を防ぐことを目的として1958(昭和33)年に定められました。
地すべりとは、土地の一部がすべる現象、またはこれに伴って移動する現象をいい、ぼた山とは、石炭または亜炭にかかる捨石が集積されてできた山です。
こちらは、福岡県飯塚市忠隈のボタ山の写真で、かつて住友忠隈炭鉱があったところです。高さは141mと、現在の様子を見ると普通の山と変わりません。
こちらは、1950年代に撮影された同じ飯塚市忠隈のボタ山です。このように単なる捨石(すていし)集積場のため、安定性に欠け容易に崩壊します。ボタ山は、主に石炭産業が栄えた北海道や九州北部などで見ることができます。
主務大臣(国土交通大臣または農林水産大臣)は、地すべりしている区域、または地すべりのおそれが極めて大きい区域、及びこれらに隣接する地域のうち、地すべりを助長・誘発するおそれの極めて大きいものを地すべり防止区域に、ぼた山のある区域で、ぼた山の崩壊による被害を除却、軽減するために、公共の利害に密接な関連を有するものをぼた山崩壊防止区域として指定することができます。
地すべり防止区域内で地下水の排水施設の機能を阻害する行為や、ぼた山崩壊防止区域内で土石の採取や集積を行う場合は、都道府県知事の許可が必要です。
【地すべり防止区域内における制限行為】
地すべり防止区域内において、地下水の排除を阻害する行為、地表水の浸透を助長する行為、工作物の新築、改良等をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
【ぼた山崩壊防止区域内における制限行為】
ぼた山崩壊防止区域内において、立木竹の伐採、のり切、土石の採取等をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
地すべり防止区域内の制限 |
|
このように、区域内での開発行為は原則としてできないため、一般的な不動産仲介においてほとんど売買するケースはありません。
なお、空中写真や現地調査、災害の記録から地すべりの発生のおそれがあり、人家や公共施設に被害を生じるおそれのある箇所を地すべり危険箇所としています。
地すべり危険箇所に対して地すべり防止区域は、現に地すべりの兆候がみられる箇所や、地すべり防止の対策施設の設置とともに、一定の開発行為を制限する必要のある区域に指定されます。
よく混乱しがちになるのが、土砂法(土砂災害防止法)と急傾斜地法を含む土砂三法(砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地法)の違いです。
土砂法(土砂災害防止法・土砂災害防止対策推進法)は、土砂災害の被害を受ける土地への対策としての法律ですが、地すべり等防止法は、そもそもの災害発生源である地すべり対策について定めています。
なお、地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域は区域内に設置される標識により確認することができます。
調査している物件が地すべり防止区域内もしくはぼた山崩壊防止区域内にあるかについてはGoogleやYahoo!で「◯◯(都道府県) 地すべり防止区域(ぼた山崩壊防止区域)」と調べるか、わからない場合は地域を所管している各土木事務所の窓口で確認します。
調査した結果、売買の対象となる敷地が地すべり防止区域内もしくはぼた山崩壊防止区域内に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「地すべり等防止法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
不動産会社だけど、プロに不動産の基本調査や重要事項説明書などの書類の作成を依頼されたいという方は、「こくえい不動産調査」にご相談ください。
地方であっても複雑な物件でも、プロ中のプロがリピートしたくなるほどの重説を作成してくれます。