不動産を売却するときには減価償却費を計算しなければなりません。
ただ、この減価償却は、勉強しても非常にわかりづらいものです。
ここでは、減価償却の考え方と主にマイホームやセカンドハウス以外の不動産の減価償却費の計算方法についてわかりやすく説明します。
減価償却とは?
減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少していく固定資産を取得した際に、購入費用をその耐用年数に応じて計上していく会計上の処理のことをいいます。
固定資産というのは不動産でいうと建物部分に該当します。例えば、家を新築で購入して、20年後も新築と同じ価値というのは無理がありますよね。その20年の間に、家の劣化が進み、キッチンや風呂などの設備も老朽化しているからです。
つまり減価償却とは、時間が経過すると価値が下がる資産の価値を、正しく評価するために行なう作業といえます。不動産の土地部分のように、時間の経過や使用により価値が減少しないものは、減価償却資産には含まれません。
減価償却の一般的な目的
減価償却の一般的な目的としては、不動産の取得のために掛かった費用を、最初に支払い時に全て一回きりの費用とするのではなく、収益を得るために利用した期間に応じて経費として計上することが、企業会計にとって望ましいために使うとされています。
そもそも税金は、収入から経費を引いて残ったお金にかけられます。経費の方が大きくなると赤字になり、税金が払えないため、払う必要はありません。そこで、儲かったお金を全て税金に取られるというのは厳しいので、節税の方法の一つとして、経費をできるだけ多く計上しようという考えになります。できるだけ収入に近い経費になると黒字額が少なくなり、税金が少なくて済むからです。減価償却費は、数字上で価値が減っているだけなので、実際に支出した費用ではないが、経費として計上することができるので、減価償却費を計算した上できちんと経費とすることは節税のために重要なポイントになります。
最初に「一般的な目的」としたのは、不動産売却において、利益を目的として投資用不動産を購入した場合には上記の目的に該当しますが、マイホームを売却する場合は、経費などはあまり関係ないからです。それより知りたいことは「現在の税法上の建物の価値は?」という部分ですよね。なぜなら、実際に売れた金額より、税法上の建物の価値の方が低い場合、売却益とみなされて譲渡所得税がかかってくるからです。
そこで、ここではマイホーム以外の不動産を売却する上での減価償却について説明します。
マイホームにおける減価償却を知りたい方は以下をご参照ください。
減価償却費の計算方法(定額法)
平成19年3月31日以前取得分
減価償却費 = 建物の購入代金 × 0.9 × 耐用年数に応じた償却率平成19年4月1日以前取得分
減価償却費 = 建物の購入代金 × 耐用年数に応じた償却率
こちらで年間の減価償却費を求めることができます。中古建物の場合、この数字に経過年数を掛ければ、取得費の計算に必要な建物の減価償却費を計算することができます。この居住用の建物(=非事業用)の経過年数を計算する場合、6ヶ月以上の端数は1年とし、6ヶ月未満は切り捨てます。
① 耐用年数を知る
建物の法定耐用年数とは、法律上で決まっている建物の耐用年数で、その年数のMAXを超えると法律上では価値がゼロということになります。不動産の場合、建物の構造によって大きく以下のように法定耐用年数が決められています。
- 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)・鉄筋コンクリート(RC)造→47年
- 重量鉄骨造→34年
- 木造→22年など
減価償却資産耐用年数表 | |||||
建物 | 構造・用途 | 細目 | 耐用年数 | ||
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 事務所用のもの | 50 | |||
住宅用のもの | 47 | ||||
飲食店用のもの | 延べ面積のうちに占める木造内装部分面積が3割を超えるもの | 34 | |||
その他のもの | 41 | ||||
店舗用のもの | 39 | ||||
車庫用のもの | 38 | ||||
金属造のもの | 事務所用のもの | 骨格材の肉厚が | 4mmを超えるもの | 38 | |
3mmを超え、4mm以下のもの | 30 | ||||
3mm以下のもの | 22 | ||||
店舗用・住宅用のもの | 骨格材の肉厚が | 4mmを超えるもの | 34 | ||
3mmを超え、4mm以下のもの | 27 | ||||
3mm以下のもの | 19 | ||||
飲食店用・車庫用のもの | 骨格材の肉厚が | 4mmを超えるもの | 31 | ||
3mmを超え、4mm以下のもの | 25 | ||||
3mm以下のもの | 19 | ||||
木造のもの | 事務所用のもの | 24 | |||
店舗用・住宅用のもの | 22 | ||||
飲食店用のもの | 20 | ||||
車庫用のもの | 17 | ||||
建物付属設備 | 店用簡易装備 | 3 | |||
冷暖房設備 | 冷凍庫の出力が22キロワット以下のもの | 13 | |||
電気設備(照明設備を含む) | 蓄電池電源設備以外のもの | 15 | |||
給排水・衛生設備、ガス設備 | 15 |
詳しくは国税庁のHP「耐用年数(建物・建物付属)」を参照してください。
②耐用年数の償却率を調べる
建物の耐用年数の償却率は、国税庁のHP「減価償却資産の償却率表」で耐用年数にあてはめます。なお、平成19年4月1日に償却率の改正があり、物件の取得時期によって参考する償却率が変わります。つまり、同じく耐用年数の建物でも、取得した時期が平成19年4月1日より前か後ろかで償却率が変わることに注意が必要です。