あなたが1人ではなく夫婦で、もしくは両親と一緒に不動産の購入を検討しているとしましょう。
一緒に買うことになるので、その物件の所有についてはあなたと一緒に買った人と共有名義(きょうゆうめいぎ)になり、出した金額によって、その所有分の比率(共有持分:きょうゆうもちぶん)を持つことになります。
不動産の場合、売買代金以外にも仲介手数料や登記費用などいろいろとお金がかかりますが、いったいどこまで出した金額を持分に含めることができるのでしょうか。
ここでは不動産の共有名義・共有持分の決め方についてわかりやすく説明します。
共有名義・共有持分の決め方
不動産を購入するためには多額の資金が必要です。足りない資金は、住宅ローンなどで借入れすることになります。あなた1人で購入することが困難な場合、夫婦や両親と共同で購入する場合があります。その場合、出したお金の金額によって持分割合(もちぶんわりあい)というのが決まります。
例えば、4,000万円の物件を、あなたが3,000万円、あなたのお父さんが1,000万円出したとします。その場合、あなたの持分は3/4、お父さんの持分は1/4ということになります。
このように、持分とはその不動産の所有している割合を示しています。この所有権の持分は、不動産登記の際に法務局に登録されます。
(共有持分の登記の例)
不動産を登記する理由は、自分の所有物と証明するためのものであることから、登記の際には、資金の出所と持分の関係(誰がいくら出したのか)を慎重に精査する必要があります。
そのため、次のような誤った登記をしてはなりません。
- お金を出した人と所有者が異なる
- 借金の当事者と所有者が異なる
- お金の出所を無視して、単純に夫婦2分の1ずつの持分にするなど
これらは、実際に資金を出した人から、資金を出さないのに不動産を所有することになった人への贈与(ぞうよ)とされ、贈与された人に贈与税が課税される可能性があります。
・不動産の贈与税とはなにか計算方法についてわかりやすくまとめた
このように、不動産の「持分」は、購入資金を誰がいくら出したのかによって決めなければなりません。
不動産持分の決め方(登記の割合)
その人の持分割合 = 出した資金(借入金含む) / 不動産の購入代金(取得費)
では、不動産の購入代金というのは、いったいどこまでの費用を含めることができるのでしょうか。言い換えると、不動産を買う際に出したお金の内、どこまでのお金が不動産の取得費(しゅとくひ)となるのでしょうか。
次の表にまとめました。
取得費となるもの | |
土地 | 建物 |
|
|
取得費にならないもの | |
|
※居住用ではなく事業用不動産の場合は、土地・建物の取得にかかる不動産取得税・登記費用(登録免許税)は必要経費として処理します。また、既に他の不動産所得がある場合については、土地・建物の借入金金利のうち借入日から使用開始までの期間分についても、必要経費として処理できます。
実際に計算してみましょう。
例題
物件価格3,500万円で、仲介手数料・登記費用・印紙代・不動産取得税・リフォーム代が500万円とします。夫の貯金が1,000万円、妻の貯金が1,000万円ありますが差し引き2,000万円足りないので、夫が住宅ローンで2,000万円を借りたとします。この不動産は夫婦の共有名義となりますが、共有持分の比率はどうなるでしょうか。
上記の諸費用はすべて取得費に含むことができるので、不動産購入代金(取得費)は4,000万円になります。夫が出した金額は合計3,000万円で、妻の出した金額は1,000万円なので、夫は3,000万円/4,000万円で3/4になり、妻は1,000万円/4,000万円で1/4になります。
もし、お互いに夫婦で持分を1/2ずつにしたいときは、夫婦それぞれ2,000万円ずつ出さなければなりません。そうなると、夫は住宅ローンで1,000万円、妻も住宅ローンで1,000万円それぞれ借りなければなりません。
まとめ
まとめると次のようになります。
・「持分」とは、その不動産の名義を誰がどのくらい所有しているかの割合のこと。
・共有名義とは、その不動産の「持分」を持っている人のこと。
・共有持分とは、共有名義人が持っている「持分」のこと。
・「持分」は不動産の購入資金を、誰がいくら出したのかによって決まる。
・その購入資金(取得費)に含めることができる費用とできない費用がある。
・実際に資金を出していないのに共有名義にすると、贈与税がかかる可能性がある。