津波災害とは、地震や火山活動などを原因として生じる大規模な波が陸地に到達して起こる被害のことです。
地震による津波の被害は「波」という言葉から想像するイメージからは程遠いものです。街全体が津波にのみこまれ水の下に沈んだケース、家は流され、バスや電車、大型船が海側から打ち上げられたケース、20m以上の高台に避難していたのに背後から回り込んだ波に流されたケース、津波が地形を駆け上がり発表された津波の高さ以上に達したケースなどもあります。
地震によって発生する津波の全てを正確に予測することは大変困難です。そのため、指定された津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域をインターネットで公表しています。
ここでは、津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域についてまとめました。
津波災害警戒区域(イエローゾーン)とは?
津波災害警戒区域(イエローゾーン)とは、津波防災地域づくりに関する法律に基づき指定された「津波災害のおそれがある区域」で、最大クラスの津波が発生した場合「住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがある区域」で、津波から逃げることができるよう「警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域」のことです。都道府県知事が指定します。
津波災害特別警戒区域とは異なり、区域内であっても開発行為や建築物等の建築は制限されておりません。
都道府県知事は、基本指針に基づき、かつ、津波浸水想定を踏まえ、津波が発生した場合には住民その他の者(以下「住民等」という。)の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における津波による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域を、津波災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。
津波災害警戒区域に指定されたら?
津波災害から生命を守るため、災害情報の伝達や避難が早くできるように、ハザードマップを作成して住民に知らせるなど、警戒避難体制の整備が図られます。
不動産取引(売買・交換・賃借)において、宅地建物取引業者は、対象物件が「津波災害警戒区域」内である旨を記載した重要事項説明書を交付し、説明を行わなければなりません。(宅建業法施行規則第16条の4の3第3号)
・不動産の重要事項説明書における「津波防災地域づくりに関する法律」とはなにか
津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン・レッドゾーン)とは?
津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)とは、津波災害警戒区域のなかで、最大クラスの津波が発生した場合「建築物に損壊が生じ、または浸水し、住民の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある区域」で「特に防災上の配慮を要する方々が利用する社会福祉施設、学校、医療施設の建築とそのための開発行為に関して、居室の床面の高さや構造等を津波に対して安全なものとするために都道府県知事が指定する区域」のことです。
津波災害特別警戒区域(レッドゾーン)とは、オレンジゾーンのうち「特に迅速な避難が困難な区域で、住宅など市町村の条例で定める用途の建築とそのための開発行為に関して、居室の床面の高さや構造等を津波に対して安全なものとするために市町村の条例で指定する区域」のことです。
都道府県知事は、基本指針に基づき、かつ、津波浸水想定を踏まえ、警戒区域のうち、津波が発生した場合には建築物が損壊し、または浸水し、住民等の生命または身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為及び一定の建築物(居室を有するものに限る。)の建築または用途の変更の制限をすべき土地の区域を、津波災害特別警戒区域(以下「特別警戒区域」という。)として指定することができる。
津波災害特別警戒区域に指定されたら?
津波災害特別警戒区域内の土地・建物には次のような制限行為があります。
一定の社会福祉施設、病院、学校について、都道府県知事によって土地利用規制が設けられます(オレンジゾーン)。
- 一定の社会福祉施設、病院、学校が津波に対して安全な構造のものとして省令に定める技術的基準に適合
- 病室等の一定の居室の床面の高さが基準水位以上
- 上記の用途の開発行為が擁壁の設置など土地の安全上必要な措置が省令で定める技術的基準に適合
また、市町村条例で定めた区域について、住宅等の規制を追加することができます(レッドゾーン)。
- 条例で定める用途の建築物が津波に対して安全な構造のものとして省令に定める技術的基準に適合
- 市町村条例で定める基準に適合(①居室の床面の全部または一部の高さが基準水位以上、または②基準水位以上の高さに避難上有効な屋上その他の場所が配置、当該場所までの避難上有効な階段その他の経路)
- 住宅等の開発行為が擁壁の設置など土地の安全上必要な措置が省令で定める技術的基準に適合
津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域についてのQ&A
ここでは、津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域についてよくある質問についてまとめました。
津波防災地域づくりに関する法律とは?
津波災害警戒区域や津波災害特別警戒区域は「津波防災地域づくりに関する法律」に定められています。東日本大震災の甚大な津波被害を教訓に、最大クラスの津波から「なんとしても人命を守る」という考えのもと、津波災害を防止・軽減して安全な地域を整備するための法律で2011(平成23)年に制定されました。 この法律には、都道府県が実施する「津波災害警戒区域の指定」や「津波浸水想定の設定」、市町村が実施する「推進計画の作成」など、津波防災を進めるための取組が規定されています。
最大クラス(レベル2)の津波とは?
例えば、南海トラフ巨大地震など、発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす津波で、現在の科学的知見を基に、過去に発生した津波や今後発生が想定される津波から設定したものであり、住民避難を柱とした総合的な防災対策の対象とする津波です。都道府県によって異なります。
基準水位とは?
基準水位(きじゅんすいい)とは、津波浸水想定の浸水深(しんすいしん:水が浸かったときの深さ)に、津波が建物等に衝突した際のせり上がり高さを加えた水位です。津波災害警戒区域に指定される際に公表され、指定避難施設の指定や津波災害特別警戒区域における建築等の許可の際に基準として用いられます。
つまり、津波に対して安全な高さであるため、避難施設などの効率的な整備の目安となり、住宅の建築等を検討する上でも参考になります。なお、基準水位は津波浸水想定における浸水深と同様、地盤面からの高さ(水深)で表示します。
基準水位が2.0mを超えると建物の約半数以上が全壊、浸水深30cmを超えると歩行困難、死者発生の恐れがあります。
津波浸水想定とは?
津波浸水想定(つなみしんすいそうてい)とは、最大クラスの津波が発生した場合に想定される最大の浸水区域と浸水深を、都道府県知事が設定し公表するものです。津波による浸水の危険度を広くお知らせするもので、警戒避難体制の整備などの津波防災地域づくりに関する各種取組の基礎となる情報です。公表された場合、都道府県のホームページで確認できます。
どのように指定されるのか
最大クラスの津波による浸水想定区域である津波浸水想定の区域を基本として設定します。ただし、かつての津波の痕跡(こんせき)や町丁目などの境、地形など地域の実情を踏まえ、都道府県と市町村が調整し、広く設定することも可能です。
区域指定にあたっては、まずは都道府県と各市町村が事前調整を行い、指定の意向が固まった市町村から順次、関係住民や関係団体への説明会を開催し、最終的な市町村の意向を確認した後、区域指定を行います。説明会については、事前に広報等で開催を通知します。
どこで指定区域を確認できるのか
図面は、都道府県のホームページや土木事務所、津波災害警戒区域が位置する市町村の役所で閲覧できます。
インターネットで公開されている資料を不動産取引の添付書類に利用できるか
インターネットで公表している警戒区域の図面(PDFファイル)や画面等は、参考として情報提供しているものです。そのため、権利や義務の発生する不動産取引の資料として利用するのはふさわしくありません。不動産取引資料など正確な資料が必要な場合は、お住まいの都道府県の土木事務所、市町村の役所などの窓口で取得し、確認する必要があります。(広島県「インターネットにおける公表内容」参照)
特別警戒区域に指定されると既存不適格の住宅は、ただちに移転勧告を受けるのか
既存不適格建築物について、直ちに移転勧告することはありませんし、そもそも移転勧告は、建築物の所有者などに自主的な改善措置を促すもので、強制力はありません。既存不適格とは、当初は適法であったがその後の法改正や指定変更などにより、現在では適法ではないことをいいます。
津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域にある不動産は安くなるのか
結論からいうと、津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域に指定されると不動産価値は下がります。
行政は、「指定されることによって地価が下がったという他都道府県の事例は聞いてない」と言いますが、買主の立場になってみてください。安全・安心の居場所としての家が、津波災害特別警戒区域内や津波災害警戒区域内にある場合、その家を欲しいと思うでしょうか。
また、国は「コンパクトシティ」の概念を打ち出し、立地の良い場所に「集まって住む」ことを政策として推し進めています。そこで各自治体は、集まって住むべき場所として「居住誘導区域」を設定していますが、津波災害特別警戒区域は、原則として、居住誘導区域に含まないこととすべき区域、津波災害警戒区域は、居住を誘導することが適当ではないと判断される場合は、原則として、居住誘導区域に含まれないこととすべき区域に定められているのです。
居住誘導区域内の不動産価格は維持されますが、居住誘導区域外の不動産価値は下落します。
指定されて住民にメリットはあるのか?
津波災害警戒区域を指定する目的は、最大クラスの津波が発生した際に、住民等の生命・身体を守ることです。区域指定により、基準水位を踏まえた効率的な避難場所の確保やハザードマップの公表、避難確保計画の作成等が進み、津波からより確実に「逃げる」体制が整備されるため、津波による人的被害を軽減することができます。
指定解除されるには
防潮堤等の津波対策施設が整備されたり、地形が変化したことなどにより、指定区域の基となる津波浸水想定区域が変更となった場合、指定区域の変更や解除が可能となります。
ただし、現在の津波浸水想定区域は、国が定めた基準により津波が防潮堤等の津波対策施設を乗り越えた時点で施設が破壊するという条件で計算しているため、今後整備する津波対策施設の減災効果が津波浸水想定区域の計算に反映されることが必要となります。
津波災害警戒区域の調べ方
インターネットにより情報公開されている自治体は次のとおりです。(国交省「津波災害警戒区域の指定状況(令和5年8月29日現在)」参照)
津波災害警戒区域の指定があるのは、2023(令和5)年8月現在、26道府県です。
津波災害特別警戒区域の指定があるのは、2023(令和5)年8月現在、静岡県伊豆市のみです。
未指定の都府県は、現在検討中です(薄字は、海に接していない内陸7県です)。
なお、区域の単位は「津波浸水想定」と同様、10m四方ごとであり、「津波浸水想定」では浸水深に応じて着色しますが、「津波災害警戒区域」は中心に基準水位を表示します。
北海道・東北地方 | ||||
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中部地方 | ||||
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中国・四国地方 | ||||
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九州・沖縄地方 | ||||
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※こちらのページは国土交通省HPを参照しています。
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