こちらでは、第1種歴史的風土保存地区・ 第2種歴史的風土保存地区について、詳しく説明します。
また、明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法について、詳しく説明します。
奈良県明日香村に指定されている地区
第1種歴史的風土保存地区・ 第2種歴史的風土保存地区とは、飛鳥時代の遺跡などを含めた歴史的風土を保存するために、奈良県明日香村内に指定されている地区のことです。
明日香村全域を2つに区分して定めており、特に重要な部分といえる高松塚古墳、石舞台古墳、飛鳥宮跡などの周辺地区が第1種歴史的風土保存地区、その他の地区が第2種歴史的風土保存地区として指定しています。
歴史的風土(れきしてきふうど)とは、歴史的な建造物や遺跡とそれらをとりまく樹林地などの自然的環境が、一体となって古都らしさを醸し出している土地の状況をいいます。古都(こと)とは、かつてわが国の政治や文化の中心として歴史上重要な地位を持つ都市のことです。
明日香村は、かつて政治的中心として都があり、また飛鳥文化の中心地でもありました。村内には、当時の宮跡、寺跡、古墳や万葉集に登場する飛鳥川など、わが国にとって重要な歴史的文化的遺産が数多く存在し、それが古都としての伝統と文化を継承し、明日香村らしい歴史的風土を形成しています。
特に明日香村の歴史的文化的遺産は、村内の広範な地域にまたがって存在し、村内のどこにたたずんでも往時を偲ばせるよすが(身や心のよりどころとすること)となる特色ある風景がみられます。この点において明日香村における歴史的風土は他に類をみないものであり、明日香村の歴史的風土が、その伝統と文化を現代に継承しているだけでなく、日本人のアイデンティティ、心のふるさとともいわれる理由なのです。
これらを守るのが「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法(明日香村特別措置法、明日香法)」です。
第1種(第2種)歴史的風土保存地区の制限内容
明日香村全域は、明日香村特別措置法による第1種歴史的風土保存地区、第2種歴史的風土保存地区による制限があります。
第1種歴史的風土保存地区は、歴史的風土の保存上重要な部分を構成しているため、現状の変更を厳に(げんに:妥協を許さないさまの意味)抑制し、その状態において歴史的風土の維持保存を図るべき地域とします。また、第2種歴史的風土保存地区は、著しい(いちじるしい:はっきりわかるほど目立つさまの意味)現状の変更を抑制し、歴史的風土の維持を図るべき地域です。
第一種歴史的風土保存地区は、歴史的風土の保存上枢要な部分を構成していることにより、現状の変更を厳に抑制し、その状態において歴史的風土の維持保存を図るべき地域とし、第二種歴史的風土保存地区は、著しい現状の変更を抑制し、歴史的風土の維持保存を図るべき地域とする。
それだけでなく、明日香村風致地区条例により第1種、第2種、第3種風致地区に指定されており、次のような行為をしようとするときは、許可申請が必要になります。
- 建築物その他の工作物の新築、改築、増築または移転
- 宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 土石類の採取
- 水面の埋め立てまたは干拓
- 建築物等の色彩の変更
- 屋外広告物の表示または提出
- 屋外における土石、廃棄物または再生資源の堆積
このように明日香村は、全域で歴史的風土特別保存地区と風致地区に区分されています。
種別 | 建ぺい率 | 高さ | 外壁後退 | 緑地率 | ||
歴史的風土 | 風致 | 道路側 | 隣地側 | |||
第1種 | 第1種 | 20%以下 | 5m以下 | 3m以上 | 1.5m以上 | 40%以上 |
第1種 | 第2種 | 30%以下 | 10m以下 | 2m以上 | 1m以上 | 30%以上 |
第2種 | 第3種 | 40%以下 | 10m以下 | 2m以上 | 1m・1.5m以上 | 20%以上 |
【建築物】新築・改築・増築及び移転
- 屋根
(形状)
・切妻、入母屋、寄棟、方形、差掛け等の勾配屋根 (片流れ屋根、招き屋根及び極端な緩勾配又は急勾配のもの等を除く。)
(部材・色彩・仕上げ)
・和型瓦(J型)、わら、檜皮、銅板、木材、その他これらに類似する外観を有する材料とし和型瓦の場合はいぶし瓦とする。 - 外壁
(部材・色彩・仕上げ)
・外壁の表面が、土、漆喰、木板、その他これらに類似する外観を有する材料で仕上げられたものとする。
なお、外壁面に柱等が露出せず、リシン吹付け等により仕上げられる場合、色はベージュ、グレー等とする。
【工作物】新築、改築、増築及び移転
- 塀等
(部材・色彩・仕上げ)
・表面が、木、土、漆喰その他これに類似する外観を有する材料で仕上げられたものとする。 - 擁壁
(部材・色彩・仕上げ)
・石積み又はこれに類似する外観を有するものとする。
古都保存法との関係
明日香村は、全域が1966年(昭和41)年1月に制定された古都保存法の歴史的風土特別保存地区となっていました。しかし、宅地化の波が明日香村に及んだことから、現行の法律では適切に対処できない場合に、特別に制定される法律である特別措置法を作り、1980(昭和55)年に制定された明日香特別措置法に基づき、現状の変更を厳しく規制する第1種歴史的風土保存地区と、著しい現状の変更を抑制する第2種歴史的風土保存地区が指定されたという背景があります。
この法律は、飛鳥地方の遺跡の歴史的文化的遺産がその周辺の環境と一体をなして、我が国の律令国家体制が初めて形成された時代における政治及び文化の中心的な地域であったことをしのばせる歴史的風土が、明日香村の全域にわたって良好に維持されていることにかんがみ、かつ、その歴史的風土の保存が国民の我が国の歴史に対する認識を深めることに配意し、住民の理解と協力の下にこれを保存するため、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和41年法律第1号)の特例及び国等において構ずべき特別の措置を定めることを目的とする。
(明日香法第1条)
明日香村の不動産を売買する場合
明日香村内の不動産を売買する場合は、第1種歴史的風土保存地区か 第2種歴史的風土保存地区のどちらかに該当するため、制限の内容を調査するとともに、重要事項説明が必要です。
第1種歴史的風土保存地区と第2種歴史的風土保存地区は、都市計画法で定める「地域地区」の一つです。地域地区とは、都市計画区域内の土地を、どのような用途に利用すべきか、どの程度利用すべきかなどを定めて21種類に分類したものです。
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