不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「流通業務市街地整備法」という項目があります。
どのような不動産が流通業務市街地整備法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
ここでは、不動産の重要事項説明における流通業務市街地整備法について説明します。
次の不動産は「流通業務市街地整備法」について重要事項説明が必要です。
- 流通業務地区内
流通業務市街地整備法とは
流通業務市街地整備法の正式名称は「流通業務市街地の整備に関する法律」といい、1966(昭和41)年に制定されました。流通業務市街地は、流通業務施設(トラックターミナル・鉄道の貨物駅・卸売市場・倉庫・流通業関連の事務所や店舗や一定の工場など)が1ヵ所に集中された地区のことで、流通機能の向上と道路交通の円滑化を図るための法律です。
都心部に流通機能が集中するとトラックやトレーラーが集まるため、道路交通混雑を引き起こし、流通業務の低下につながります。このような状態が続いていたため、流通業務施設を交通要衝地に適度に分散・再配置し、都市交通の緩和と流通機能の向上を図るとともに、地域開発の拠点となるよう一体的に整備するというのが流通業務市街地整備法です。
流通業務市街地整備法に基づいて、流通機能の向上および道路交通の円滑化を図る地区として、都市計画で流通業務地区を定めます。
流通業務地区内では、流通業務施設以外の建設や改築、用途変更は原則として禁止されます。また、流通業務地区内で、流通業務施設の敷地の造成・整備を行う事業である流通業務団地造成事業を都市計画事業として施行します。
流通業務団地の造成敷地には、一定期間内に流通業務施設を建築しなければならず、工事完了から10年間は、造成敷地または敷地上の流通業務施設に関する権利設定および移転等については、都道府県知事の承認が必要です。
【流通業務地区内での制限行為】
流通業務地区内において、流通業務施設等以外の施設を建設し、または施設の改築や用途の変更により流通業務施設等以外の施設としようとするときは、原則として、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
流通業務団地造成事業の施行者から、流通業務施設を建設すべき敷地を譲り受けた者やその承継人は、施行者が定めた期間内に、流通業務施設の建設の工期、工事の概要等に関する計画を定めて、施行者の承認を受けた上、その計画に従って流通業務施設を建設しなければなりません。
流通業務団地造成事業に係る工事完了の公告の翌日から10年間は、造成敷地等またはその上に建設された流通業務施設や公益的施設に関する所有権、地上権等の権利の設定または移転について、当事者は、原則として、都道府県知事の承認を受けなければなりません。
具体的にみてみましょう。
例えば大阪府の場合、流通業務市街地(流通センター)は、茨木市の北大阪流通センターと東大阪市の東大阪流通センターの2ヵ所です。こちらは北大阪流通センターの写真です。
北大阪流通センターは、都心から約10kmで近畿自動車道と名神高速道路という交通要衝地に整備されており、「北大阪流通業務地区」内にトラックターミナルや流通倉庫、配送センターを整備しています。
流通業務地区では、原則として流通業務に関連する施設のみしか建築できません。そのため、一般的な居住用の不動産売買をする上で流通業務市街地整備法に関係することはほとんどありません。
しかし、調査した結果、売買の対象となる不動産が流通業務地区内に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「流通業務市街地整備法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
流通業務地区は、都市計画法で定める「地域地区」の一つです。地域地区とは、都市計画区域内の土地を、どのような用途に利用すべきか、どの程度利用すべきかなどを定めて21種類に分類したものです。
不動産会社だけど、プロに不動産の基本調査や重要事項説明書などの書類の作成を依頼されたいという方は、「こくえい不動産調査」にご相談ください。
地方であっても複雑な物件でも、プロ中のプロがリピートしたくなるほどの重説を作成してくれます。