不動産を売却したときは、税金(譲渡所得)の計算をしなければなりません。譲渡所得とは売却価格から購入価格を差し引いたもので、利益が出ている場合は税金を納める必要があります。
そのときに条件を満たせば、利益から3,000万円差し引くことができる「3,000万円特別控除」という制度があります。ただし「3,000万円特別控除」は「住宅ローン控除」との併用が認められていません。
「3,000万円特別控除」と「住宅ローン控除」どちらを利用した方が有利なのでしょうか。
3000万円特別控除の計算をするにあたって
あなたが居住用の不動産を売却したとき、①3,000万円特別控除、②10年超所有軽減税率の特例、③特定居住用財産の買換え特例、④居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、⑤特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除という5つの特例の適用を受けられる可能性があります。これをマイホームを売ったときの5つの特例といいます。
「マイホームを売ったときの5つの特例」を理解するためには「譲渡所得」についてしっかりと理解する必要があります。譲渡所得について知らない方は、まず下記を参照してください。
「3,000万円特別控除」と「10年超所有軽減税率の特例」について知らない方は以下を先に必ず参照してほしい。
3,000万円特別控除と住宅ローン控除を比較してみよう
実際に計算してみましょう。
例題
平成20年1月にマンションを3,000万円(土地1,500万円・建物1,500万円)で購入し、平成28年2月に3,500万円で売却した。譲渡費用は150万円であった。そして、売却と同時に個人の売主の中古マンションを4,000万円で購入した。4,000万円の内訳は、自己資金1,000万円、住宅ローン3,000万円であった。この場合、「3,000万円特別控除」か「住宅ローン控除」のどちらを使った方が有利だろうか。
・3,000万円特別控除を適用した場合
A:譲渡益を求める 減価償却費=1,500万円×0.9×0.015×8=162万円 減価償却費の求め方を知りたい方は、以下の「譲渡所得の計算に必要な取得費・譲渡費用を簡単に知ろう」を参照してください。 B:「3,000万円特別控除」を適用する 512万円−3,000万円=0円 よって税金はかかりません。 |
・住宅ローン控除を適用した場合
個人が売主の不動産を購入し、平成27年に入居した場合は、住宅ローン控除を適用する上での年末ローン残高の上限は2,000万円です。入居した年から10年間の年末ローンの残高が2,000万円以上であり、かつ毎年の年間の所得税額が20万円を超える人物を前提とすると、10年間の住宅ローン控除適用による減税額は200万円となります。 つまり、住宅ローンで控除される税額(所得税)は200万円ということになります。 住宅ローン控除について詳しく知りたい方は以下の「所得税が還ってくる住宅ローン控除をわかりやすく説明する」を参照してほしい。 |
住宅ローン控除を選択すると3,000万円特別控除を使うことができないので、譲渡所得の税金(所得税・住民税)は、512万円×20.315%=1,040,128円ということになります。
・譲渡所得税の税金控除額:1,040,128円
・住宅ローン控除額:200万円
ということで、差し引きして、住宅ローン控除の方が3,000万円特別控除の控除額より、959,872円分さらに控除されることになり、このケースでは住宅ローン控除の方が有利ということになります。
一方、このケースでは、譲渡税1,040,128円は先払いで、ローン控除の所得税200万円分は年間20万円ずつで10年間で還付されることに注意が必要です。
このように、3,000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらを選択した方が有利かは、あなた自身の状況によっても異なるので、計算して求める必要があります。
配偶者特別控除と3,000万円特別控除は一緒に使えるのか
配偶者特別控除(配偶者の所得に応じ最高38万円の控除)は、その人の合計所得が1,000万円以下であることが条件です。この合計所得は、3,000万円特別控除前の譲渡所得と他の所得の合計額で判定します。したがって、仮に居住用の3,000万円特別控除で納税額がなくても、3,000万円特別控除前の合計所得が1,000万円超になると配偶者特別控除の適用は受けられません。