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居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除を計算してみる

居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除を計算してみる

不動産を売却したときは、税金(譲渡所得)の計算をしなければなりません。譲渡所得とは売却価格から購入価格を差し引いたもので、利益が出ている場合は税金を納める必要があります。

逆に損失が出るのであれば、税金を納める必要はもちろんありませんが、損失を他の所得の利益と相殺することで税金が安くなる特例があります。

ここではその「居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」について実際に計算してましょう。

居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除とは?

あなたが居住用の不動産を売却したとき、①3,000万円特別控除、②10年超所有軽減税率の特例、③特定居住用財産の買換え特例、④居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、⑤特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除という5つの特例の適用を受けられる可能性があります。これをマイホームを売ったときの5つの特例といいます。

ここでは、④の「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と⑤の「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」について説明しますが、そのために「譲渡所得」についてしっかりと理解しておく必要があります。譲渡所得について知らない方は、まず下記を参照してください。

譲渡所得税の計算方法についてわかりやすく説明する

2016.01.24

「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」については以下の通りです。

居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除とは?

2016.02.01
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居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除の計算

では、実際に計算してみましょう。

例題

自宅を買い換えたが、売却の際に2,400万円の譲渡損が発生した。給与所得は600万円で、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用要件を満たしており、住宅ローン控除を併用している場合の計算方法は?またいつから住宅ローン控除を受けることができるのだろうか?

居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除とは、簡単にいうと、不動産売却で損失が出た場合、売却損をその年の他の所得と損益通算でき、損益通算しても赤字となった金額については翌年以降3年間繰り越して所得から控除(=繰越控除)できる制度です。

以下のように計算します。

給与所得 譲渡損失 繰越控除 譲渡損失の残
売却した年 600万円 ▲2,400万円 ▲1,800万円
2年目 600万円 ▲1,800万円 ▲1,200万円
3年目 600万円 ▲1,200万円 ▲600万円
4年目 600万円 ▲600万円 0
5年目 600万円 この年から住宅ローン控除を受けることができる

・売却した年の税金(損益通算

給与所得より大きな譲渡損失があるので、その年に源泉徴収された所得税は確定申告により全額還付されます。

住民税は前年の所得に基づき翌年に課税されるので、恩恵を受けることができるのは1年遅れになります。損益通算により翌年の住民税には所得税同様ゼロになります。

・2年目以降の税金(譲渡損失の繰越控除)

売却した年の譲渡損失で引ききれなかった2,400万円(3,200万円−800万円)は翌年以降3年間その年の給与所得から順次控除されます。今回のケースでは3年間にわたり控除され、各年の所得税はゼロになります。住民税は下表のように1年遅れで3年間でゼロになります。

所得税 住民税
売却した年 損益通算
2年目 繰越控除 損益通算
3年目 繰越控除 繰越控除
4年目 繰越控除 繰越控除
5年目 繰越控除

5年目は繰越控除が適用できなくなりますが、買い換えた物件の住宅ローン控除がこの年から適用できるようになります。

上記のケースの場合、5年目から住宅ローン控除が適用することになります。売却した年から4年目までは、課税所得がゼロとなってしまい、所得税が発生しないので税額控除としての住宅ローン控除は適用できなくなります。例えば、住宅ローン控除について控除期間を10年として選択した場合、売却した年と同じ年に買換え資産を取得(入居)したとすると、1年目が起算点とはなるが、4年間は初年度の損益通算と譲渡損失の繰越控除をした結果、所得がゼロとなって適用できないことになるので、実際に適用される期間は6年間ということになることに注意点が必要です。

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この記事の執筆者

坂根 大介
坂根 大介さかね だいすけ

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。
野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。
「証券×不動産(売買)×IT」という強みと、契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、不動産屋社長のためのノートなどをわかりやすく発信している。
イクラ株式会社では、過去に家が売れた成約価格がわかり、売買実績豊富な信頼できる不動産会社とチャットで相談できる「イクラ不動産」を運営。日本経済新聞にも取り上げられる。
また、司法書士事務所では、不動産登記の専門家として登記だけでなく、離婚協議書の作成や遺産分割協議書の作成、相続登記、自己破産の申請を数多く行っており、住宅ローンなど金銭的問題・離婚・相続などを中心に法律に関わる不動産売却の相談が年間1000件以上ある。
主な資格は、宅地建物取引士JSHIホームインスペクター2級FPなど。

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