不動産を売却したときは、税金(譲渡所得)の計算をしなければなりません。譲渡所得とは売却価格から購入価格を差し引いたもので、利益が出ている場合は税金を納める必要があります。
このとき、税金が安くなる「マイホームを売ったときの5つの特例」という制度があります。
ここでは、その中の「特定居住用財産の買換え特例」についてわかりやすく説明します。
マイホームを売ったときの5つの特例とは?
あなたが居住用の不動産を売却したとき、①3,000万円特別控除、②10年超所有軽減税率の特例、③特定居住用財産の買換え特例、④居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、⑤特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除という5つの特例の適用を受けられる可能性があります。これをマイホームを売ったときの5つの特例といいます。
ここでは、③の「特定居住用財産の買換え特例」について説明しますが、そのために「譲渡所得」についてしっかりと理解しておく必要があります。譲渡所得について知らない方は、まず下記を参照してください。
①の「3,000万円特別控除」と②の「10年超所有軽減税率の特例」について知りたい方は以下を参照してほしい。
④の「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と⑤の「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」について知りたい方は以下を参照してください。
特定居住用財産の買換え特例とは?
特定居住用財産の買換え特例とは、居住用の不動産(=マイホーム)を譲渡(=売却)した金額より、買い換えたマイホームの取得金額(=購入金額)の方が大きければ課税さないという制度です。
この制度は税金の支払いが免除されるわけではなく、事実上税金の繰延べです。この売却した譲渡資産(=売却したマイホーム)に対する税金(譲渡所得税)は、買換え資産(=購入したマイホーム)に引き継がれ、将来、この新たに購入したマイホームを売却するときに繰延べた譲渡益を加えて課税されるからです。
この際、売却した不動産(=譲渡資産)の「取得費」は次の購入した不動産(=買換え資産)に引き継がれますが、「取得日」は引き継がれません。この特例を受けるためには、税務署に確定申告しなければなりません。
譲渡所得の計算 | |
譲渡(=売却)代金 > 買換え代金の場合 | 譲渡(=売却)代金 ≦ 買換え代金の場合 |
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譲渡所得はなし |
譲渡所得の計算方法について知りたい方は以下を参照してください。
条件として、まず居住用の不動産でなければなりません。しかし、その不動産に住まなくなった場合でも、その日から3年目の年末までに売れば特例の適用が認められます。また、
・譲渡資産(=売却するマイホーム)の譲渡価額(=売却価格)が1億円以下であること
・買い換える建物の床面積が50㎡以上で土地の面積が500㎡以下のものであること
・売却の年の前年から翌年までの3年の間に買い換えること
・買換える建物が中古の耐火建築物(=マンション等)は、新築後25年以内のものまたは新耐震基準に適合していることが証明されたものや、既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のもの
などの条件があります。
加えて、「売却した年の1月1日現在において、土地・建物の所有期間がいずれも10年を超え、かつ売却した人の居住期間が10年以上であること」という条件があります。ただし、こちらについてはその居住用財産(=マイホーム)の所在する場所に10年ということであり、連続して居住している必要はなく、転勤などにより一時的にその場所以外に居住している期間がある場合には、通算して10年以上であれば問題ありません。
特定居住用財産の買換え特例は、基本的に建物の所有者に適用されます。しかし、土地と建物の所有者が異なった場合でも、土地の所有者と建物の所有者が、譲渡(=売却)時から居住の用に供すべき期間(=新居を取得した年の翌年末)まで生計を一にする親族関係があるという条件に加えて、次の要件を満たしたときは特例の適用を受けることができます。
譲渡資産(売却したマイホーム) | 買換資産(購入したマイホーム) |
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また、特定居住用財産の買換え特例は、売却した前年、前々年にこの「①3,000万円特別控除」と「②10年超所有軽減税率の特例」を受けていないことも条件となります。その他、親子間や夫婦間で不動産を売買した場合には適用することはできません。また、以下のような特例と重複して適用することも不可能です。
・収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例 ・交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例 ・換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例 ・収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除 ・特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例 ・特定の事業用資産を交換した場合の譲渡所得の課税の特例 ・大規模な住宅地等造成事業の施行区域内にある土地等の造成のための交換等の場合の譲渡所得の課税の特例 ・認定事業用地適正化計画の事業用地の区域内にある土地等の交換等の場合の譲渡所得の課税の特例 ・承継業務の事業計画の施行区域内にある土地等の交換の場合の譲渡所得の課税の特例 ・特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の譲渡所得の課税の特例 |
その他、特殊な要件などについては国税庁のHPを参照してください。
まとめ
③「特定居住用財産の買換え特例」をまとめると以下のようになります。
特定居住用財産の買換え特例 | ||
適用条件 |
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共通条項 |
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その他 |
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所有期間 | 譲渡した年の1月1日で、家屋と土地の所有期間がともに10年超 | |
居住期間 | 通算10年以上 | |
連年適用の制限 | 前年、前々年において、3,000万円特別控除、10年超所有軽減税率の特例の適用を受けていないこと | |
譲渡資産の譲渡価額 | 1億円以下 | |
税額の計算 |
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買換え資産の要件 | 取得期限 |
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居住の用に供する期限 |
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面積制限 | 家屋の床面積50㎡以上(登記簿面積)かつ土地の面積の500㎡以下 | |
経過年数 | 中古のマンション等の耐火建築物は新築後25年以内のものまたは新耐震基準に適合していることが証明されたものや、既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のもの(木造は制限なし) |
なお「特定居住用財産の買換え特例」と「3,000万円特別控除」を比較したい場合は以下を参照してください。
店舗兼住宅の場合の居住用の買換え・事業用の買換えの場合
もし、店舗兼住宅とその土地を譲渡(=売却)し、そのお金で土地付きの店舗兼住宅を取得(=購入)して、特定居住用財産の買換え特例の制度を適用したい場合、家屋の床面積50㎡以上(登記簿面積)かつ土地の面積の500㎡以下という条件があります。
これについては、買換え資産の家屋(=建物)は、居住用部分の床面積が50㎡以上という基準で判定します。買換え資産の土地は、全体部分の土地面積で判定します。居住用部分、店舗部分は原則として面積の比により判定することになっています。