住宅用家屋証明書とは簡単にいうと次のような書類です。
- 登記費用(登録免許税)を安くするために必要な書類
- 床面積50㎡以上の自己居住用のマンションか戸建てであること
- 鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨造のマンションや戸建ては25年以内、それ以外の木造や軽量鉄骨造などの戸建ては20年以内に建築されたものが条件
登記費用(登録免許税)の減税を受けるために必要な書類
不動産を購入したとき登記をしますが、その登記に対する税金が登録免許税(とうろくめんきょぜい)です。この登録免許税に司法書士への報酬を加えたものがいわゆる登記費用です。
この登録免許税には、税金が安くなる「軽減の特例」がありますが、優遇を受けるために、その建物が居住用の住宅用家屋で特例の適用を受けれることを証明した、市区町村長の「住宅用家屋証明書」が必要になります。
住宅用家屋証明の制度は、個人が良質なマイホームを購入するときに、減税することによって購入の後押しになるものとして設けられた制度です。
住宅用家屋証明の根拠となる租税特別措置法には、次の登記に関して減税規定が定められています。
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※なお、ここでの「新築」とは、戸建住宅でも建築主が所有者自身である場合を指しており、不動産業者が建築主である「建売住宅」は新築であっても「未使用」にあたります。
つまり、「新築住宅の際の登記である所有権保存登記」「中古不動産売買の際の登記である所有権移転登記」「住宅ローンを利用する際の登記である抵当権設定登記」の場合で、その建物部分が住宅用家屋証明の適用対象であれば、登録免許税が軽減されるということになります。
減税の税率は次の通りです。
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これらは、個人に適用され、法人には適用できません。また外国人や共有持分の場合であっても適用可能です。
住宅用家屋証明の適用条件
住宅用家屋証明の適用対象になる条件は次の通りです。
①自己居住用建物であること
自己居住用の建物かそうでないかは、建物部分の登記記録上の「種類」で判断されます。
a.専用住宅の場合 (併用住宅でない場合)
登記記録上の「種類」は、原則として「居宅」でなければなりません。 「居宅」であっても、賃貸用など投資用物件には適用できません。
なお、登記記録上の「種類」が「居宅・車庫」などの場合、車庫は住んでいるからこそ使われる建物であるため、専用住宅として扱われ建物全体について適用が受けられます。
b. 併用住宅の場合
併用住宅で、登記記録上の「種類」が「居宅・店舗」「居宅・事務所」のように、建物全体として住宅の役割果たしていると言えない場合、居宅部分の床面積が総床面積の90%以上であれば、建物全体について適用が受けられます。逆にそうでない場合は、建物全体の適用が受けられないことになります。
この床面積の内訳は、原則として建築確認書を参考に市町村が判断することとなりますが、表題登記を担当した土地家屋調査士が作成した「床面積の内訳を証する書面」を提出することが実務上の通例となっています。
付属建物がある場合、上記aとbと同様に扱われます。
②居住済みであること
また、居住用の建物かそうでないかを証明するには、住宅用家屋証明の申請者が、申請しようとする建物に既に入居済みでなければなりません。
ただし、不動産の売買決済が終わっていないのに、売主の家に勝手に住むことなどできません。この入居済みかどうかは、住民票で判断するのが慣習となっています。そのため、中古不動産売買の場合、決済の前に買主に購入物件所在地への住所移転を促します。
ただ、市町村役場では「現実に住んでいない場合は転居届を受け付けない」としているため、決済前に住民票を移動することは本来ダメなのですが、それでは住宅用家屋証明書が取得できないため、役所に「既に引越し済です」と申告しているのが現状です。
上記が一般的ですが、新築の場合など、実務上住民票を移せない場合もあります。このような場合は、役所に「申立書」と「現住居の処分方法の根拠資料(例えば、現住所の賃貸借契約書や売買契約書、社宅証明書など)」を提出し住民票を移動できない旨を説明することで、減税の措置受けられます。(ページ文末参照)
③床面積50㎡以上であること
床面積は登記簿面積で50㎡以上でなければなりません。
④構造の制限
「構造」についても登記記録上で判断します。
a.新築建物の保存登記・建売住宅の移転登記の場合
戸建の場合は「構造」による制限はありません。
区分所有建物(マンション)の場合は「耐火建築物」「簡易耐火建築物」「低層集合住宅」のいずれかの場合に限って適用が受けられます。
b.中古住宅の移転登記の場合
登記記録上の「構造」が、マンションや戸建てで耐火建築物や準耐火建築物(登記記録上の「構造」が「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」など)は25年以内、戸建てなどで木造等耐火建築物以外(登記記録上の「構造」が「木造」「軽量鉄骨造」など)は20年以内に建築されたものが条件です。
この年数を超えている場合には「耐震基準適合証明書」を発行している建物や、「既存住宅売買瑕疵保険」に加入している建物であれば、適用が受けられます。
⑤1年以内に登記すること
新築(増築)または取得後、1年以内に登記しなければなりません。
なお、新築後1年以内の付属建物は、主たる建物を保存登記する場合に、主たる建物と同様に適用が受けられますが、1年を超える場合、主たる建物についてのみ適用が受けられます。
抵当権の設定登記について
住宅ローンを借りる場合などの抵当権の設定登記については次の通りです。
・適用があるのは抵当権だけです。住宅ローンであっても、根抵当権が設定される場合には適用が受けられません。
・借入原因は、建物の新築、増築、取得のためでなければなりません。 保証会社が抵当権者(ていとうけんしゃ)となり、将来の求償債権を担保に抵当権設定をするような場合も適用が受けられます。
・土地と建物を一括購入する場合(建売住宅やマンションなど)で、土地の購入資金と建物の購入資金とが一括で融資されて内訳が明記されていない場合は、ほとんどのケースで土地購入資金を含めた全額について適用が受けられます。
・登記上の「債務者」は、建物所有者の全部または一部(共有の場合)と一致していることを要します。
・銀行などの金融機関からの借入れに限りません。借入先はノンバンク、共済などでも適用が受けられます。
・建物の底地だけでなく、他の土地建物を共同担保とする場合でも適用が受けられます。
住宅用家屋証明書の取得方法
一般的に住宅用家屋証明書の申請は、司法書士が申請者の代理者として行ない、市区町村から交付を受けます。
正確にいうと、住宅用家屋証明書の申請は誰でもできますが、業(取得すること自体を商売とする場合)として取得する場合は弁護士、司法書士または建築士の資格が必要になります。行政書士は業として行うことはできません。売主の協力(登記原因証明情報)が必要になるため、一般的に司法書士に依頼します。
住宅用家屋証明書は、各市区町村役所の建築課・市民税課・資産税課などで取得することができます(手数料は1件につき1,000円~1,300円前後)。中古マンションや中古戸建ての住宅用家屋証明書を取得する際、次の書類が必要です。
- 住宅用家屋証明申請書(申請書は役所のHPから取得できます。GoogleやYahoo!で「◯◯市 住宅用家屋証明書」と検索。)
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 不動産を取得する人の新居先の住民票
- 売渡証書または登記原因証明情報(所有権移転日が明記されたもの)
また、新居先に住民票を移すことができす、未入居(住民票を移す前)で申請する場合は、次の書類が別途必要になります。
- 申立書
- 現在居住している家屋の処分方法を明らかにする書類
(申立書の例:大阪市)
「現在居住している家屋の処分方法を明らかにする書類」とは、持家の場合、「売買契約書」や「媒介契約書」など売却することを証明する書類で、賃貸している場合には、「賃貸借契約書」や「媒介契約書」などの書類を指しています。
持家以外の場合(寮・社宅など)は、「賃貸借契約書」や「使用許可書」「家屋証明書」などの書類を指しています。
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女性の司法書士で、かつ近年増えている外国人の売買の登記についても、英語・中国語の通訳、翻訳をしてくれます。