こちらでは、敷地(土地)が異なる複数の用途地域にまたがる場合、建ぺい率や容積率などの制限はどうなるのかについて、詳しく説明します。
各種の制限ごとに適用方法が異なる
敷地(土地)が異なる複数の用途地域にまたがっている場合は、単純に面積が大きい方の制限が全体に適用されるわけではなく、制限ごとに適用方法が異なります。
用途地域は次のようにわかれています。
種類 | 制限内容 | |
1 | 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域で、小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられる。 |
2 | 第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅のための地域で、小中学校などのほか、150㎡までの一定のお店などが建てられる。 |
3 | 第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための地域で、病院・大学・500㎡までの一定のお店などが建てられる。 |
4 | 第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住宅のための地域で、病院・大学などのほか、1500㎡までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられる。 |
5 | 第一種住居地域 | 住居の環境を守るための地域で、3000㎡までの店舗・事務所・ホテルなどは建てられる。 |
6 | 第二種住居地域 | 主に住居の環境を守るための地域で、店舗・事務所・ホテル・カラオケボックスなどは建てられる。 |
7 | 田園住居地域 | 都市部における貴重な田園風景とそれがもたらす周辺の良好な低層住宅の環境を守る地域で、その地域で生産された農産物を使用する場合は500㎡までのお店が建てられる。 |
8 | 準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域。 |
9 | 近隣商業地域 | まわりの住民が日用品の買物などをするための地域で、住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられる。 |
10 | 商業地域 | 銀行・映画館・飲食店・百貨店などが集まる地域で、住宅や小規模の工場も建てられる。 |
11 | 準工業地域 | 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域で、危険性・環境悪化が大きい工場のほかはほとんど建てられる。 |
12 | 工業地域 | どんな工場でも建てられる地域で、住宅やお店は建てられるが、学校・病院・ホテルなどは建てられない。 |
13 | 工業専用地域 | 工場のための地域で、どんな工場でも建てられるが、住宅・お店・学校・病院・ホテルなどは建てられない。 |
複数の用途地域にまたがる場合には、各種の制限は次のようになります。ここでは、図のように土地が第1種低層住居専用地域と第2種中高層住居専用地域にまたがっているとして考えてみましょう。
①建物の用途制限
敷地(土地)面積の大きい方の用途地域が、敷地全体に適用されます。ここでは、土地全体が第2種中高層住居専用地域の制限を受けます。
②高さの制限
用途境をもって分かれるため、それぞれの用途地域の制限を受けます。建物の高さに関する制限は、大きく次の4つの制限があります。
用途境より南側は第2種中高層住居専用地域なので、3種高度・最高高さ25m(高度地区)までの建物の建築が可能ですが、北側は第1種低層住居専用地域なので、絶対高さ10m(絶対高さ制限)までの建築となります。
ただし、日影規制については、建物の影が落ちるエリアの中で最も厳しい日影規制の制限を受けます。ここでは周辺はわかりませんが、建物の影がおちる北側の規制の方が厳しいため、3-2h/1.5mの規制を守らなければなりません。
③防火規制(防火地域・準防火地域)
最も厳しい規制が、土地全体に適用されます。第1種低層住居専用地域の区域にのみ建物を建てれば準防火地域内における制限でよいが、第2種中高層住居専用地域に少しでもかかるように建てると、建物全部を防火地域の規制で建てなければなりません。
⑤建ぺい率・容積率
用途地域ごとの敷地面積の加重平均で計算します。
容積率は、前面道路幅員に注意が必要です。前面道路幅員が12m未満の場合、道路の幅員による容積率(基準容積率)の制限があります。前面道路の幅員に各自治体が指定した数値(40・60・80)を掛けた値と、用途地域で指定されている容積率(指定容積率)の数値と比較して、小さい方の容積率が適用されます。ここでは60とすると、5m×60=300%になり、指定容積率の400%より小さいので、基準容積率の300%が適用されます。
敷地(土地)の面積が100㎡とすると次のような計算となります。
【建ぺい率】
第1種低層住居専用地域:敷地面積40㎡×40%=16㎡ 16㎡+48㎡=64㎡ 64㎡/100㎡ 建ぺい率は64% |
【容積率】
第1種低層住居専用地域:敷地面積40㎡×80%=32㎡ 32㎡+180㎡=212㎡ 212㎡/100㎡ 容積率は212% |
実際に計算してみて、本当にこれで正しいのかどうか役所の建築指導課で確認を取った方が良いでしょう。
写真のマンションは2つの用途地域にまたがっており、用途境で中高層と低階層に分かれているため、このようなデザインになっています。
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