不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「土壌汚染対策法」という項目があります。
どのような不動産が土壌汚染対策法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
特に危険物取扱工場やガソリンスタンド跡の土地を取引する場合、この法律に関わってくる可能性があるため、十分な調査が必要になります。
ここでは、不動産の重要事項説明における土壌汚染対策法について説明します。
次に該当する不動産は「土壌汚染対策法」について重要事項説明が必要です。
- 要措置区域内
- 形質変更時要届出区域内
土壌汚染対策法とは
土壌汚染対策法(どじょうおせんたいさくほう)は、特定有害物質による土壌汚染の状況を把握し、土壌汚染による人への健康被害を防止するために土壌汚染対策を行うことを目的として2003(平成15)年に定められました。土対法(どたいほう)とも略されます。
具体的には土壌汚染の可能性の高い土地の所有者らに対して土壌汚染状況調査を義務づけています。
土壌汚染(どじょうおせん)とは、法律で規定する一定基準値以上の有害物質が地表または地中に存在するため、それを除去しなくては土地の利用が妨げられる状態をいいます。
特定有害物質を製造・使用・排出する工場が取り壊されるなど、廃止する場合には、環境大臣指定の調査機関による土壌汚染調査を行い、都道府県知事へ報告されます。
特定有害物質とは、鉛・砒素(ヒ素)・トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く)で、それが土壌に含まれていることによって人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいいます(土壌汚染対策法第2条第1項)。
特定有害物質名 | 主な用途(現在使用禁止されているものも含む) | |
1 | カドミウム及びその化合物 | 合金、電子工業、電池、めっき、写真乳剤、塩化ビニル樹脂安定剤 |
2 | 六価クロム化合物 | 酸化剤、めっき、触媒、写真、漁網染色、皮なめし、石版印刷 |
3 | エチルアミノ、シマジン(CAT) | 農薬 |
4 | シアン化合物 | めっき、試薬、触媒、有機合成、蛍光染料。冶金、鉱業、金属焼入れ、写真薬、医薬 |
5 | チオベンカルプ又はベンチオカーブ | 農薬 |
6 | 四塩化炭素 | フロンガス原料、消火剤、溶剤、脱脂洗浄剤、ドライクリーニング |
7 | 1,2-ジクロロエタン | 塗料溶剤、洗浄、抽出、殺虫、塩化ビニル中間体 |
8 | 1,1-ジクロロエタン(塩化ビニリデン) | 溶剤(油脂、樹脂、ゴムなど)、医薬(麻酔) |
9 | シス-1,2-ジクロロエチレン | 同上 |
10 | 1,3-ジクロロプロペン(D−D) | 農薬 |
11 | ジクロロメタン(塩化メチレン) | 溶剤、冷媒、脱脂剤、抽出剤、消化剤、局所麻酔剤、不燃性フィルム溶剤 |
12 | 水銀及びその化合物 | 電解電極、金銀の抽出、水銀灯、計器、医薬、顔料、農薬、整流器、触媒、農薬、有機合成 |
13 | セレン及びその化合物 | 半導体、光電池、鋼材の防食被覆、特殊ガラス、乾式複写機感光体、芳香族化合物の脱水素材、浮遊選鉱の気泡剤、頭髪化粧水 |
14 | テトラクロロエチレン | ドライクリーニング溶剤、原毛洗浄、石けん溶剤、その他の溶剤 |
15 | チラウム又はチラム | 農薬 |
16 | 1,1,1-トリクロロエタン | 溶剤、金属の常温洗浄、塩化ビリニデン原料 |
17 | 1,1,2-トリクロロエタン | 同上 |
18 | トリクロロエチレン | 金属表面の脱脂洗浄、羊毛の脱脂洗浄、香料抽出、冷媒、殺虫剤 |
19 | 鉛及びその化合物 | 合金、はんだ、活字、水道管、鉛ガラス、ゴム加硫、電池、防錆ペイント、顔料、殺虫剤、染料、塩化ビニル樹脂安定剤 |
20 | 砒素及びその化合物 | 半導体製造、殺虫剤、農薬 |
21 | ふっ素及びその化合物 | めっき、ガラス加工、電子鉱業、樹脂 |
22 | ベンゼン | 各種有機合成原料、抽出、溶剤、燃料(混入) |
23 | ほう素及びその化合物 | ガラス原料、ほうろう、陶磁器のうわ薬、医薬品、めっき、防腐剤、殺虫剤 |
24 | PCB | 熱媒、電気絶縁体、変圧器、コンデンサ、複写機、インキ溶剤、顔料、塗料、合成樹脂製造 |
25 | 有機りん化合物(パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン、EPNに限る。) | 農薬 |
土壌汚染の調査は、すべての土地で必要なわけではなく、汚染の可能性が高い土地について行われます。おおまかに調査が行われるパターンとして次の4つがあります。
- 有害物質使用特定施設(以前に有害物質を扱っていた施設)の敷地として使用されていた土地:土地所有者等に、汚染の有無を調査し、その結果を都道府県知事に報告することを義務づけます。
- 3,000㎡以上の土地の形質変更で、土壌汚染のおそれがある土地:30日前までに届出が必要で、都道府県知事は、形質変更により土壌汚染のおそれがあると判断した場合は、汚染の有無の調査を命じることができます。
- 土壌汚染により健康被害が生ずる可能性が高い土地:都道府県知事は、土地所有者等に対して、汚染の有無の調査を命じることができます。
- 自主的調査:法律が定める調査対象に該当しなくても、自主的に調査を行うことがあります。自主的調査により土壌汚染が判明したとき、後述する規制対象区域の指定を申請できますが、申請はあくまでも任意であり、義務ではありません。
(環境省パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」参照)
調査の結果、土壌中に特定有害物質が存在し、土壌汚染が判明した場合、汚染の程度によって規制を行うべき区域として、健康被害防止対策の有無により、要措置区域(ようそちくいき)と形質変更時要届出区域(けいしつへんこうじようとどけでくいき)のいずれかに指定されます。
「要措置区域」とは、土壌中の特定有害物質により健康被害が生じるおそれがあると判断された区域(土地)です。都道府県知事は、要措置区域内の土地の所有者に対し相当の期限を定めて、要措置区域内において汚染除去対策を行うよう指示をします。要措置区域内においては、土地の形質の変更が禁止されます。
一方、「形質変更時要届出区域」とは、土壌汚染があるものの、健康被害が生ずるおそれがないと判断された区域(土地)です。現時点で対策を取る必要はありませんが、将来、掘削等など土地の形質の変更をする場合は、工事着手する日の14日前までに、都道府県知事に届出が必要となります。
【要措置区域内・形質変更時要届出区域内における制限行為】
要措置区域内においては、何人も土地の形質の変更をしてはなりません。ただし、次の各号に掲げる行為については、この限りではありません。
1 都道府県から指示を受けた者が指示措置等として行う行為
2 通常の管理行為、軽易な行為であって、環境省令で定めるもの
3 非常災害のために必要な応急措置としての行為形質変更時要届出区域内において土地の形質の変更をしようとする者は、その着手する日の14日前までに、都道府県知事にその旨を届け出なければなりません。
なお、汚染の除去が行われた場合は、要措置区域や形質変更時要届出区域の指定が解除されます。
要措置区域、形質変更時要届出区域に該当しているかはGoogleやYahoo!で「◯◯市 要措置区域(形質変更時要届出区域)」と検索すれば調べることができます。また、役所でも要措置区域台帳と形質変更時要届出区域台帳を作成し、閲覧できます。
調査した結果、売買の対象となる不動産が、要措置区域内・形質変更時要届出区域内に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「土壌汚染対策法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
具体的な調査方法
実際、土壌汚染が発覚し、土壌改良工事が必要となると、数百万円〜数千万円という費用がかかる可能性があります。
役所の環境課(環境保全課・環境推進課・環境管理課・環境対策課など役所によって呼称の違いあり)に行きましょう。
形質変更時要届出区域に指定されていた場合
要措置区域に指定されていた場合
土壌汚染に関して、規制対象区域(要措置区域・形質変更時要届出区域)かどうかを調査するのは最低限のことであり、区域外であっても、土壌汚染の可能性を調査する必要があります。特に建物がない更地も注意しなければなりません。
規制対象区域外の土地でも、実際に建築しようとしたら土壌汚染が判明することがあります。しかし、土壌汚染があるかどうかは、実際に調査してみなければわかりません。
とはいえ、土壌汚染の可能性があるかどうかぐらいは調査することができ、これを「土地の履歴調査」といいます。
土地の履歴調査は、過去の土地・建物登記簿(閉鎖事項証明書)や過去の住宅地図などにより、その土地が土壌汚染の可能性のある用途に利用されていたかどうかを過去にさかのぼって調査します。
調査対象となる物件が工場や作業所、クリーニング店などであった場合には調査する必要があり、土壌汚染の調査費用や除去費用は汚染原因の状況にもよりますが、原則土地所有者の負担となります。履歴調査で汚染が疑われる場合は、さらに詳細な調査を行います。
土壌汚染は与える影響が大きいため、土壌汚染法の規制対象外の土地についても、地方公共団体の条例で同様の規制を行うことがあるので、条例レベルの調査を行う必要があります。
(環境省HP参照)
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