あなたの不動産(土地・一戸建て・マンション)の近くに鉄塔や、上空に送電線・高圧線はありませんか?
これらは電気を運ぶ重要なインフラ施設ですが、眺望や景観を損ねることや、電磁波を気にする人にとっては嫌悪施設として捉えることもあるため、不動産売買においては往々にしてマイナスに働きます。
不動産を売却するにしても購入するにしても、近くに鉄塔・送電線・高圧線がある場合、何を、どのように調査すればよいのか、ここではわかりやすく説明します。
鉄塔・送電線・高圧線とはなにか
発電所でつくられた電気を最寄りの変電所(電気の電圧を変える場所)まで送るのが送電線(そうでんせん)で、それを支えるのが(送電)鉄塔(てっとう)です。発電所で作られた電気は、送電のときのロスをへらすために電圧を高くして電気を送っています。変電所で、使用場所にあった使いやすい電圧に変えます。その近くの変電所から家庭に結ぶ架線(かせん)が電線(配電線)であり、配電線を支えているのが電柱(でんちゅう)です。
・電柱は移せるの?電柱が近くにある不動産の調査方法についてまとめた
街じゅうに張り巡らされている電線から、各家庭へ引き込まれる最後の配電線(引込電線)が低圧線であり、それ以外は高圧線(こうあつせん)です。
しかし、一般的には高圧線としてイメージされるのは鉄塔と送電線です。また、鉄塔のことを送電線としてイメージされる方も多いです。
では、鉄塔と送電線の近くにある不動産はどのような調査が必要なのでしょうか。
鉄塔・送電線の調査方法
鉄塔・送電線の下または近隣の物件(いわゆる「送電線下の土地」といいます)については建築制限があります。そのため、鉄塔・電線を所有する会社(東京電力・ JR東日本・電源開発など)の看板やプレートで特定した上で調査します。
鉄塔・送電線の調査では次の3つのポイントが重要になります。
- 17万ボルト以上・未満
- 垂線下水平距離3m(すいせんかすいへいきょり)
- 離隔距離(りかくきょり)
電圧が17万ボルト以上の場合は、鉄塔下の敷地だけではなく、一番外側の電線の真下から水平距離3m(垂線下水平距離3m)かつ定められた離隔距離(電線が最も下がった位置からの距離)を保った位置でなければ、住宅など建物を建てることができない。
ここでは東京電力の例からみてみましょう。
- 50万ボルトの場合:隔離距離(A)10.05m以上
- 27.5万ボルトの場合:隔離距離(A)6.60m以上
一番外側の電線の「垂線下水平距離3m」かつ「離隔距離」を保った位置でないと建築不可
- 15万4千ボルトの場合:隔離距離(A)4.80m以上
- 6万6千ボルトの場合:隔離距離(A)3.60m以上
「離隔距離」を保てば線下でも建築可
こちらは東京電力の例であり、電力会社によってはそれ以上の推奨安全距離を定めていることもあります。また、上空の送電線が17万ボルト未満の場合でも、電力会社と土地の所有者との契約に基づいて、建築そのものが制限されている場合もあります。
そのため手元に住宅地図と公図を準備して、鉄塔・電線を所有している会社に、電話でヒアリングでの調査をします。確認する内容は次の通りです。
- 電圧(ボルト数)
- 地役権設定の有無
- 補償契約の有無
- 最下線(最も低い電線)の高さ
- 離隔距離
- 建築における制限の有無
②の地役権(ちえきけん)とは、自分に都合がいいように他人の土地を利用することができる権利です。電力会社などは、送電線をひくと、その下にある他人の土地に高い建物を建てられると困るため、「◯m以上の建物は建ててはいけない」という地役権(送電線路敷設地役権)を設定しようとします。その対価として、電力会社が土地の持ち主に一括でお金を支払って、その権利(地役権)を購入する場合もあれば、③の補償契約を結んで、何年も持ち主にお金を支払うこともあります。まず、登記簿謄本をみて地役権が設定されているかどうかを確認すればよいのですが、山間部などでは地役権登記されていないケースもあり、契約の内容も含めて電力会社等にヒアリングしなければわかりません。
建築が可能な「送電線下の土地」が安いのは、嫌悪施設として人気がないだけでなく、離隔距離による制限のため、建築基準法上では3階建てまで可能なところ、実際は2階までしか建てられないなどの制限があるからです。
加えて、もし地役権設定で前所有者に一括でお金が支払われている場合、新所有者への恩恵は全くないため、土地の価値としてさらに低くなるからです。
送電線の電圧や、送電線の高さによって建築できる条件が異なるため、売却や購入するときには事前に鉄塔・送電線を所有している会社にヒアリングして、問題がないかどうか制限の内容をしっかりと確認する必要があります。
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