不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「宅地造成等規制法」という項目があります。
どのような不動産が宅地造成等規制法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
ここでは、不動産の重要事項説明における宅地造成等規制法について説明します。
次の不動産は「宅地造成等規制法」について重要事項説明が必要です。
- 宅地造成工事規制区域内
宅地造成等規制法とは
宅地造成等規制法は、宅地造成にともなう工事による崖崩れや土砂の流出および地盤損傷による宅地被害を防止するための法律で、1961(昭和36)年に制定されました。
ここでの宅地(たくち)とは、農地・採草放牧地・森林・公共施設用地以外の土地のことをいい、必ずしも居住用の土地のみを指すわけではありません。また、登記簿謄本の地目に記載されている「宅地」とも関係がありません。
また、宅地造成(たくちぞうせい)とは、宅地以外の土地を宅地にするために、傾斜をなくすため切土(きりど)や盛土(もりど)の工事、擁壁(ようへき)の設置工事、排水施設の設置工事、地盤の改良工事など土地の形質の変更をいいます。
都道府県知事(政令指定都市等は市長)は、市街地およびその周辺地域で、宅地造成にともない災害が生じるおそれが大きい場所を宅地造成工事規制区域(たくちぞうせいこうじきせいくいき)に指定します。
そのため、宅地造成工事規制区域内で次の工事を行う場合は、工事着手前に都道府県知事の許可が必要です。
①切土2m超:高さ2mを超える崖ができることとなる切土
②盛土1m超:高さ1mを超える崖ができることとなる盛土
③切土盛土合わせて2m超:切土と盛土が同時に行われて、全体で2mを超える崖ができるもの
④これらに該当しない「切土または盛土の工事を行う面積が500㎡を超える土地」
(画像は盛岡市HP参照、以下同じ)
・切土(きりど)・盛土(もりど)とはなにかわかりやすくまとめた
不動産用語で「宅造(たくぞう)」とは、上記の制限がかかる宅地造成工事規制区域内かどうかを聞いているのです。
【宅地造成工事規制区域内での制限行為】
宅地造成工事規制区域内で宅地造成に関する工事を行なおうとするときは、造成主は、工事着手前に都道府県知事(指定都市、中核市または特例市の長)の許可を受けなければなりません。
宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成工事の許可を受けた者が宅地造成工事の計画を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。
(宅地造成工事規制区域)
許可にあたっては、宅地造成による地盤や擁壁(ようへき)が技術基準に適合しているかを審査し、工事完了時に検査を行います。
なお、都市計画法による開発許可を受けた宅地造成工事は、あたらめて宅地造成等規制法による許可を受ける必要はありません。
また、高さ2mを超える擁壁や排水施設の除却(じょきゃく:取り壊すこと)を行うときは、届出が必要です。宅地造成工事規制区域内の宅地で、既存の擁壁や排水施設が不完全で、崖崩れなどの危険性が高い場合、都道府県知事は、宅地の所有者等に改善命令を出すことができます。
宅地造成工事規制区域内の宅地において、擁壁等に関する工事その他の工事で政令で定めるものを行おうとする者(第8条第1項本文もしくは第12条第1項の許可を受け、または同条第2項の規定による届出をした者を除く。)は、その工事に着手する日の14日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
不動産調査のポイントは次の通りです。
- 調査物件が、宅地造成工事規制区域内かどうかを調べる
- 宅地造成工事規制区域内に該当していれば、過去に宅地造成等規制法に基づいた工事を行い、建築許可・検査済を受けているか、受けていればその許可年月日・検査年月日を確認する
宅地造成工事規制区域に該当しているかどうかは、GoogleやYahoo!で「◯◯(都道府県名) 宅地造成工事規制区域」と検索して調べます。
(宅地造成工事規制区域:大阪府)
調査した結果、売買の対象となる不動産が、宅地造成工事規制区域に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「宅地造成等規制法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
造成宅地防災区域について
造成宅地防災区域(ぞうせいたくちぼうさいくいき)とは、都道府県知事が宅地造成等規制法第20条1項に基いて、宅地造成工事規制区域に指定されていない土地(宅地造成等規制法区域外)で、宅地造成に伴う災害の発生のおそれが大きい区域に指定される区域です。
造成宅地防災区域内の所有者は、災害防止のために擁壁の設置などの努力義務が課されており、「宅地または建物が宅地造成等規制法20条1項により指定された造成宅地防災区域内にあるとき」は、重要事項説明する必要があります。
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