こちらでは、都市再生特別地区(としさいせいとくべつちく)について、詳しく説明します。
都市再生のために高度利用を図る地区
都市再生特別地区とは、都市再生緊急整備地域内で、都市再生のために高度利用を図る地区で、都市再生特別措置法に定められています。
・不動産の重要事項説明書における「都市再生特別措置法」とはなにか
ここでの高度利用の「高度(こうど)」とは、小さな建物ではなく、より大きな建物を建ててハイレベル(高次元)に土地を利用するという意味です。
こちらは、2014(平成26)年に建てられた大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」の写真です。地上60階建て、高さ300mと、建てられた当時、日本で最も高い超高層ビルです。周りのビルと比べても、明らかに高さが突出しているのがわかります。これはあべのハルカスが、用途制限や建ぺい率・容積率・高さの最高限度・斜線制限・日影規制などのあらゆる規制制限を除外できる都市再生特別地区に指定されているからです。
都市再生特別地区とは、都市の再生拠点として、都市再生緊急整備地域(都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域)内において、建築基準に定める用途規制や容積率などの一般的な規制を適用せず、自由度の高い計画を定めることができる特例です。
都市再生特別地区とは、都市再生緊急整備地域のうち、都市に貢献し、土地の合理的・健全な高度利用を図る特別の用途、容積、高さ、配列等の建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域において、都市計画において定められる。
既存の用途地域等に基づく規制は適用除外とし、誘導すべき用途、容積率の最高限度および最低限度、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度、高さの最高限度ならびに壁面の位置の制限は、新たに都市計画において定められる。
都市再生特別地区内の建築物については、斜線制限および高度地区の規定は適用されず、日影規制も一部適用除外される。また誘導すべき用途に供する建築物については、用途地域および特別用途地区の規定は適用されない。
まとめると規制にとらわれずに次のことを定めることができます。
- 建築物その他の工作物の誘導すべき用途(当該地区の指定に必要な場合のみ)
- 建築物の容積率の最高限度
- 建築物の容積率の最低限度
- 建築物の建ぺい率の最高限度
- 建築物の建築面積の最低限度
- 建築物の高さの最高限度
- 壁面の位置の制限
また、次の規制を除外できます。
そのため、都市再生特別地区内においては、建ぺい率や容積率などの制限は、原則として都市再生特別地区に関する都市計画において定められた内容に適合しなければなりません。
あべのハルカスは大阪市によって「阿倍野町筋一丁目地区」という都市再生特別地区に指定されています。
こちらを見ると、容積率は1600%、高さの最高限度が310mとなっています。他の都市再生特別地区の高さ制限より高いため、周りのビルと比べても明らかに高さが突出しているのです。このように都市再生特別地区は、建築基準法のようなどれも同じような一律的な基準によらず、1件ごとに個別審査して決定しているので、それぞれの地区ごとに内容や制限が全く異なっています。
調査している不動産が、都市再生特別地区に該当しているかはGoogleやYahoo!で「◯◯市 都市再生特別地区」と検索すれば調べることができます。
上記の不動産は、都市再生特別地区内にありません。
都市再生特別地区は、都市計画法で定める「地域地区」の一つです。地域地区とは、都市計画区域内の土地を、どのような用途に利用すべきか、どの程度利用すべきかなどを定めて21種類に分類したものです。
こちらは近年大きく様変わりした大阪梅田のJR大阪駅周辺の写真です。右上にグランフロント大阪が見えます。このJR大阪駅やグランフロント大阪はそれぞれ都市再生特別地区に指定されています。さらに、右下に見えているヨドバシカメラも都市再生特別地区に指定されており、ヨドバシ梅田2期開発のプロジェクトも完了しました。現在では、うめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」のプロジェクトが進んでおり、2024年9月頃、一部分が先行開業する予定です。阪急百貨店本店や阪神百貨店本店の建替えも都市再生特別地区によるものです。
都市再生特別地区の目的は、少子化が進み人口構成や産業構造が大きく変わった中、停滞した都市機能の再構築をどうするかにあり、都市再生効果の大きい事業計画に対して広範な都市計画特例を認めることにより、民間事業者の創意工夫を活かした優良なプロジェクトの実現を図ろうとするものです。
そして、都市機能を高め国際競争力や都市の魅力の向上につながる民間プロジェクトの重点的な誘導を図ることとしています。そのため、その地域の新しい顔となるプロジェクトが多く、近年大きく様変わりし、あなたの近くに誕生したランドマーク的な建物は都市再生特別地区に関係しているかもしれません。
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