家やマンションなどを売却した際、売買契約を結んで引越しをし、残代金決済と物件の引渡しをすれば不動産売却は完了です。
ここでは、家を売るときの残代金決済・物件引渡しの当日の流れと売主が持参する必要のあるものついてわかりやすく説明します。
この記事で具体的にわかる3つのポイント
- 家やマンションを売却した際の残金決済・引渡し日の流れと売主が用意するものについて
- 残金決済・引渡し日に注意すべきこと
- 契約者本人が残金決済・引渡しに立ち会えない場合はどうすれば良いかについて
- この記事はこんな人におすすめ!
- 家やマンションを売却する予定がある人
- 残金決済・引き渡し当日に、売主として何が必要になるかを知っておきたい人
- 売主自身が、残金決済・引き渡し当日に立ち会えない場合にどうすれば良いかを知りたい人
1.残代金決済・物件引渡しの当日の流れ
まず、残金決済と引渡し日の当日の流れを確認しましょう。
残代金決済・物件引渡し当日は、売主と買主、仲介をした不動産会社の担当者、司法書士および金融機関の担当者が一堂に会して引渡しと残金決済の手続きを進めます。
場所は、買主が指定することがほとんどです。一般的には、買主が住宅ローンを組んだ銀行などの金融機関や不動産会社の事務所で行われます。
物件の引渡しと残金決済の当日に行う手続きの流れは、次の通りです。
①登記申請の依頼
②残代金の受領
③固定資産税などの清算
④関係書類の引渡し
⑤鍵の引渡し
⑥諸費用の支払い
残金決済および引渡し日に行う手続きについて、一つずつ順番に確認していきましょう。
1-1.①登記申請の依頼
所有権移転登記などの登記を代行する司法書士に必要書類を渡して登記を依頼します。必要書類とは、売買した不動産の権利証(登記識別情報)、実印および印鑑証明書などです。
また、司法書士が不動産の所有者であることの本人確認を行います。すでに顔見知りであっても必ず行うことになっているので、運転免許証やパスポートなど身分証明書を忘れずに持参しましょう。
1-2.②残代金の受領
登記申請の書類確認が済んだら、買主から売主に売買代金から手付金を差し引いた残代金をの支払いが行われます。残代金のやり取りは、金融機関の担当者が手続きをしれくれることがほとんどです。
残代金を受け取ったら、不動産会社が準備している領収書を買主に発行します。
不動産を売却した時のお金のやり取りについて、くわしくは「【不動産売買】家を売ったらお金はいつもらえる?」をご覧ください。
1-3.③固定資産税・都市計画税などの清算
次に、固定資産税と都市計画税、マンションの管理費や修繕積立金の清算が必要です。それぞれを日割りにして引渡し日までの金額を計算し、買主から売主に清算金を支払います。
引渡し前日までは売主負担、引き渡し当日以降は買主側の負担として清算を行うのが一般的です。
固都税の清算方法について、詳しくは「固都税(固定資産税・都市計画税)の清算(精算)方法についてまとめた」をご覧ください。
1-4.④関係書類の引渡し
物件の付帯設備の保証書や取扱説明書、マンションの管理規約や分譲時のパンフレットなど、買主に引き継ぐ書類をまとめて引渡します。
量が多い場合は物件内のわかる場所に置いておき、その旨を買主に告げて引き渡す方法も可能です。
1-5.⑤鍵の引渡し
最後に、買主に玄関の鍵だけでなく、勝手口や門扉など建物のすべての鍵を引き渡します。買主が署名、捺印した「不動産引渡確認証(引渡確認票)」を売主が受け取れば引渡し完了です。
1-6.⑥諸費用の支払い
残金決済と引渡しの手続きがすべて完了すれば、不動産会社への仲介手数料や司法書士への報酬などの諸費用を支払います。支払方法は、現金の手渡しか振り込みがほとんどです。領収書は不動産会社が準備しています。
不動産会社に支払う仲介手数料については、「家を売るときの仲介手数料はいくら?高い?なぜかかるの?」で詳しく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
2.残代金決済・引渡し時に売主が持参するもの
残代金決済・引渡しのときに、売主は次のものを用意して持参しなければなりません。
- 実印
- 印鑑証明書(3ヶ月以内のもの1通)
- 本人確認書類
- 登記済証(権利証)または登記識別情報通知
- 住民票または戸籍の附票
- 戸籍謄本
- 売却物件の鍵一式
- 買主に引き継ぐ資料等
- 通帳・銀行印
- 仲介手数料
- 登記費用
- 固定資産税評価証明書
一つずつ詳しくみてみましょう。
2-1.①実印
不動産の引き渡し書類などに押印したり、所有権の移転登記を司法書士へ委任したりするために実印が必須です。契約時に使用した実印を用意しましょう。
不動産が共有名義の場合(例:夫と妻)には、それぞれの実印が必要となります。
2-2.②印鑑証明書(3ヵ月以内発行のもの1通)
実印と印鑑証明書のセットは、間違いなく本人であることと、売主自らの意思によって取り引きに同意していることの証明のために必要となります。
一般的に印鑑証明書の有効期限は3ヵ月とされているため、決済時点において発行後3ヵ月以内のものが1通必要です。
居住地の役所、またはマイナンバーカードを持っている場合は、コンビニエンスストアでも取得できます。
また、こちらも共有名義の場合は、それぞれの印鑑証明書が必要です。
2-3.③本人確認書類
司法書士に提示するため、本人と確認できる写真付きの公的証明書が必要となります。
- 個人の方(運転免許証・パスポート 等)
- 法人の方(登記事項証明書・印鑑証明書 等)
司法書士には「本人確認義務」があるので、提示がないと手続きを代理することができません。顔見知りであっても、必ず用意するようにしましょう。
2-4.④登記済証(権利証)または登記識別情報通知
不動産購入したときの登記済証(権利証)または登記識別情報通知を必ず持参します。
(画像は法務省のHPに掲載されているものです)
紛失した場合は、司法書士にその旨を伝えて証明書を発行してもらいましょう(証明書を作成するのに5万円程度の費用がかかります)。
登記済証と登記識別情報
従来、不動産登記が完了した時に、登記済みであることの証明として「権利に関する登記済証」(いわゆる「権利証」)が登記名義人(所有者)に交付されていました。そして、この権利証を持っていることが不動産の登記名義人の証とされていました。
しかし、平成17年3月の不動産登記法の改正によって、権利証を交付する制度を順次廃止し、その代わりに「登記識別情報」を登記名義人に通知する制度へと変わりました。
この「登記識別情報」とは無作為に決められた12桁の英数字で、その不動産の登記名義人の本人確認のための資料です。
この登記識別情報通知に記載されている英数字を知っていることで、その不動産の登記名義人であることを確認することができるものとされています。
なお、登記識別情報が通知されていない不動産については、発行済の権利証が登記申請の際に必要となります。
2-5.⑤住民票または戸籍の附票
住民票は、登記簿に記載の住所から住所移転している場合にのみ必要です。なぜなら、印鑑証明書の住所と登記簿に記載の住所が一致していなければ、書面上での本人確認ができないからです。
また、2回以上住所が変わっている場合は、戸籍の附票(こせきのふひょう)が必要になります。戸籍の附票とは、住所の「移転履歴」が記載された書類のことです。
ただし、本籍地ではない役所からは交付してもらうことはできませんので注意しましょう。
2-6.⑥戸籍謄本
戸籍謄本は、結婚や離婚などで、登記簿上の氏名と現在の氏名が一致しない場合に必要になります。
登記の本質は、「家の所有者が登記簿に記載されている本人かどうか」なので、住所と同様に、名字が変わった場合は、変更登記しなければならないからです。
2-7.⑦売却物件の鍵一式
物件の鍵一式(勝手口の鍵や物置の鍵なども含む)すべてを持参してください。紛失の場合は、不動産会社が用意した書類にその旨の記載が必要です。
また、併せて宅配ボックス等のカードやポストの暗証番号も必要となるので準備しておきましょう。
2-8.⑧買主に引き継ぐ資料等
建築・分譲時のパンフレットや管理規約、総会資料(直近のものがあれば)、各種設備の取扱説明書、検査済証、境界確認書、測量図などを持参します。
紛失した場合は、不動産会社に確認しておきましょう。
2-9.⑨通帳・銀行印
残代金決済日には、契約時に受け取った手付金を除いた残りの売買代金等が一括で支払われるため、振り込みで受け取ることが一般的です。
そのため、通帳の持参が必須になります。また、住宅ローンが残っている場合は、ローン返済口座の通帳も必要です。
銀行印は不要な場合が多いので、不動産会社に確認しておきましょう。
2-10.⑩仲介手数料
一般的に仲介手数料は、契約時に半金、残代金決済時に半金を不動産会社に支払います。
売買代金(税抜) | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下の場合 | 売却価格×5%+6万円+消費税 |
200万円超え〜400万円以下の場合 | 売却価格×4%+6万円+消費税 |
400万円を超える場合 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
400万円以下で別途費用がかかった場合 | 18万円+消費税 |
ただし、買主から受け取る残代金の中から支払うこともあるため、実際には現金を持参しなくてもよいケースが多いです。
こちらも、不動産会社に前もって確認しておくようにしましょう。
2-11.⑪登記費用
「抵当権抹消登記」や「住所変更登記」などが必要な場合に、司法書士に支払う費用です。売却物件の登記状況によって異なります。
抵当権抹消登記とは、住宅ローンを返済したときに、ローンがある旨(抵当権が設定されている旨)を抹消するための登記のことです。
住所変更登記は、前述した通り、登記簿に記載されている住所と現住所が変更されている場合、変更登記が必要となります。
登記費用については、仲介手数料と同じく、買主から受け取る残代金の中から支払うことが多いため、実際に現金を持参しなくて良いケースが多いです。
2-12.⑫固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書の評価額が、登録免許税(所有権移転登記する際などの税金)の算出元となるため、司法書士に提出が必要となります。
3.残金決済・引き渡し日の注意点
最後に、残金決済と引渡し日の注意点も確認しておきましょう。
3-1.物件確認
残代金決済と引渡しの前に、売主と買主が立ち会って物件の最終チェックを現地で行います。これは、契約内容の状態で引渡しができるかを確認するためです。
引き渡しが完了した後にチェックするケースや、売主が立ち会わず買主と不動産会社の担当者だけがチェックするケースもあります。
3-2.決済は午前中
所有権移転登記手続きをすると、その時点で物件の所有者は買主です。
万が一、買主が所有権を移転してから残代金の支払いをしなければ、売主は代金を受け取れずに不動産を手放してしまうことになってしまいます。
そのような事態を引き起こさないために、登記手続きは残金決済後に行われるのが一般的です。
登記手続きをする時間を確保するために、通常、残代金の決済と引渡しは午前中に行われます。
3-3.本人が残代金決済日に出席できないときは?
残代金決済・引渡し日は、銀行が開いている平日の午前中に行われることが多いため、売主本人(共有者を含む)が出席できない場合は、代理人が出席することも可能です。
その場合は、次の書類が必要となります。
- 本人の委任状(本人の自署と実印を押印)
- 本人の印鑑証明書(3ヵ月以内のものを1通)
- 代理人の印鑑証明書(3ヵ月以内のものを1通)と実印
- 売主の本人確認書類と代理人の本人確認書類
たとえば、夫と妻の共有名義の場合で、妻だけ出席する場合にも上記の書類が必要です。ただし、当日出席できなくても、事前に司法書士と本人確認の面談が必要です。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 残金決済・引渡し当日の流れ
①登記申請の依頼
②残代金の受領
③固定資産税などの清算
④関係書類の引渡し
⑤鍵の引渡し
⑥諸費用の支払い - 残金決済・引き渡し日に、売主が用意すべきもの
・実印
・印鑑証明書(3ヶ月以内のもの1通)
・本人確認書類
・登記済証(権利証)または登記識別情報通知
・住民票または戸籍の附票
・戸籍謄本
・売却物件の鍵一式
・買主に引き継ぐ資料等
・通帳・銀行印
・仲介手数料
・登記費用
・固定資産税評価証明書 - 契約者本人が立ち会えない場合は、委任状を作成して代理人を立てることができる
残代金決済・物件引渡しの日程や書類などのセッティングは、すべて仲介を依頼した不動産会社が行います。
これらの費用も仲介手数料に含まれているので、基本的には不動産会社に任せれば大丈夫です。
しかし、残代金決済・引渡し日に持参しなければならない書類などについては忘れないように注意しましょう。
また、残代金決済と引渡しは、金融機関と法務局の開いている平日の午前中に行うことが一般的です。あらかじめ仕事などのスケジュールと調整しておく必要があります。
なお、家を売却する時の全体的な流れについては「【不動産売却の期間・流れ・費用のまとめ】初めての不動産売却で知っておくべきこと」で詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。
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