夫は家を売ると言っているのですが、子供の養育費の代わりに家をもらうことってできるのでしょうか?
こちらは、イクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
※イクラ不動産は不動産会社ではなく、無料&匿名で不動産の相談・会社選び・査定ができるサービスです。
離婚するとき、子どもを引き取ると相手側から養育費を払ってもらえますが、その際に、将来にわたる養育費の代わりに「家」をもらうことも可能です。
こちらでは、離婚後に養育費の代わりに家をもらえるのかを説明します。
もくじ
1.養育費の支払いは基本「毎月払い」
離婚してあなた(妻)が親権者となる場合、夫が次のように申し出る場合があります。
また、妻の方からも
あるいは
と希望することもあるでしょう。
このように、養育費を事前に一括払いしたり、家によって代物弁済(だいぶつべんさい:物で支払うこと)したりすることができるのかと考えている方もいるでしょう。
子どもの養育にかかる費用は継続的にかかるため、原則としては養育費は「月払い」が基本となります。
養育費は子どもの養育のためにその都度発生するものですし、金額は子どもの成長や夫婦の収入状況により、刻々と変化するからです。
たとえば、支払う側(夫)の収入がアップすれば養育費の金額は上がり、支払いを受ける側(妻)の収入がアップしたら養育費の金額は減少します。子どもが成長して15歳以上になると、養育費の支払い水準が上がります。
家庭裁判所で「養育費調停」や「養育費審判」をするときにも、事前に養育費の一括払いをしてもらう約束は難しいです。
したがって、家を売ったお金で養育費を一括払いしたり、養育費の代わりに家を分与(ぶんよ:分け与えること)したりすることは、基本的には認められません。
しかし、夫婦間でしっかり話し合って「一括払いにする」と合意した場合は可能です。
2.養育費の代わりに家を譲ってもらう方法
養育費代わりに家やその売却代金をもらう場合「養育費代わり」ということを強調せずに、普通に家を譲ってもらう方法であれば可能です。
つまり、家やその売却代金を財産分与してもらえば良いのです。
家を譲ってもらう方法は、離婚時と離婚後で異なるため、それぞれについて説明します。
2-1.離婚「時」に家を譲ってもらう方法
離婚時に家を分与してもらう方法としては、「財産分与(ざいさんぶんよ)」または「慰謝料(いしゃりょう)」があります。
財産分与とは、夫婦共有財産があるときにその財産を分け合うことです。婚姻後に家を夫婦で購入したケースでは、家も財産分与の対象になります。
財産分与を定めるとき、原則的には夫婦それぞれが2分の1ずつとなりますが、話合いによって2分の1と異なる割合にすることも可能です。
そこで、夫が妻に家の全部の権利を分与するか、売却代金を全額妻に分与することもできます。
離婚時に家をどうするかについては「離婚後の家は、夫婦「どっちのもの」になるの?名義は関係ある?」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
また、夫が不倫したケースなどでは、離婚慰謝料代わりに家を譲り受けたり、家の売却代金を受け取ったりすることもできます。
慰謝料代わりに家を貰う方法については「離婚時、慰謝料や養育費の代わりに家をもらうことはできる?」で説明していますので、こちらもあわせて読んでみてください。
2-2.離婚「後」に家を譲ってもらう方法
離婚後に相手が「養育費を支払いたくないから家を譲りたい」と言い出した場合、家を譲り受ける方法は「贈与契約」となります。家を子ども名義にも妻名義にもできますし、家を売却した代金を贈与することも可能です。
ただし、離婚時に財産分与の取り決めをしなかった場合、双方の合意があれば、離婚後いつでも財産分与として家や家の売却代金をもらうことができます。
また、離婚後3年以内であれば、慰謝料として家や売却金を納めてもらうことも可能です。
3.住宅ローン返済中の場合は要注意
住宅ローンを返済中の家を養育費として財産分与するには注意が必要です。
完済したら名義変更するとの取り決めをしておかなければなりませんし、完済までの何年も住宅ローンの返済ができなくなったときのリスクを抱えなければなりません。
3-1.住宅ローンの名義は夫のままで妻が住み続ける場合
住宅ローンの名義は夫のままで妻と子どもが家に住み続ける場合、住宅ローンを完済したときに家の所有名義を妻に移転する取り決めをして、法的効力のある公正証書にしておきましょう。
完済前に所有者の名義を夫から妻に変えてしまうと、銀行から契約違反として、ローンの全額一括返済を求められる場合があるからです。
しかし、取り決めをしていたとしても、返済途中で元夫が経済的に困窮して住宅ローンの返済ができなくなると、財産分与で妻が得た家は競売(けいばい)にかけられ、妻や子どもの住む家がなくなってしまうリスクがあるので注意が必要です。
3-2.妻が連帯債務者か連帯保証人になっている場合
夫婦でお家を購入するとき、夫が住宅ローンの借入名義人となり、妻が連帯債務者や連帯保証人となるケースがよくあります。
連帯債務とは、1つの住宅ローンの借入契約において債務者(借りる人)が複数になる形です。連帯債務の場合、それぞれの債務者が住宅ローン全額の負債支払義務を負います。つまり、どちらかが支払えなくなっても、残りの1人が全額返さないといけません。
連帯保証とは、夫婦のどちらかが単独で借入をしますが、もう片方が「連帯保証人」として支払いを保証する形です。主債務者が支払いをしない場合には、連帯保証人が返済をしなければなりません。
どちらも夫が住宅ローンの支払いを滞らせると全額の一括返済を要求され、拒むことができないという重い責任を連帯債務者や連帯保証人である妻が負います。
離婚するとき、妻が住宅ローンの連帯債務者か連帯保証人になっていたら、離婚後もこのような重い責任を背負い続けることになります。
夫が離婚後に住宅ローンを支払えなくなったら妻が代わりに一括払いしなければなりませんし、妻が代わりに支払うことができなかったら競売だけでなく、自己破産しなければならない可能性もあります。
詳しくは「連帯債務者が離婚したときの家の処分方法についてまとめた」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
4.実は財産分与や贈与は「養育費」にはならない
家や売却代金を財産分与してもらったり贈与してもらったりしても、実は法的には「養育費」をもらったことにはなりません。
夫婦間の取り決めにより「養育費代わりに家(または売却金)を譲る。妻は今後夫に対して養育費を請求しない」と定めても、養育費の請求権は放棄できません。
子どもが大きくなって養育費が必要になったとき、元夫に別途養育費を請求できる可能性が残ります。
養育費とは、子どもの親権を持った親の権利ではなく、あくまでも子ども自身が持つ権利なのです。
子どもは扶養権利者として親に扶養を請求する権利があり、この子どもの養育請求権を扶養義務者である親が勝手に放棄することはできません。
したがって、母が子の法定代理人として、子の父に対する扶養請求権を放棄する約束は無効になります。
5.税金について
養育費代わりに家や売却代金を分与してもらう場合、税金のことも考えておく必要があります。
財産分与や慰謝料の場合、贈与税や不動産取得税は発生しません。これに対して離婚後に「贈与」として家や売却金を譲り受ける場合、贈与税や不動産取得税が課税されることになります。
また、贈与税や不動産取得税を支払わなくてよい場合でも、不動産の「取得後」にかかる税金は共通してありますので確認しておきましょう。
不動産を取得したときの税金については「離婚で家を財産分与したとき、贈与税などの税金はかかるのか」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
なお子どもが父親から贈与を受けるのであれば、父親が60歳以上、子どもが20歳以上になってからの方が、税金を安く抑えられる可能性があります。
その場合には「相続時精算課税制度」を適用できますし、贈与税の税率も変わってくるからです。
まとめ
このように、養育費代わりに家やその売却代金をもらいたい場合は、夫婦間での合意が大切になります。
ただしその家に住宅ローンの支払いが残っている場合は、家を譲ってもらったとしても注意が必要です。
このようなご心配があるのでしたら、まずは「イクラ不動産」でご相談ください。
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