親や家族の借金によって、自分の持ち家やマンションが取られるのではないかと不安を抱えている方は少なくありません。
しかし、親や家族の借金があなたの持ち家やマンションに直接影響を与えるのは限定的なケースです。
ここでは、親や家族の借金が、あなたの持ち家やマンションに影響を与えるケースやリスク、およびその対策について解説します。
- 親や家族の借金で、自分の家を取られる可能性があるかどうかがわかる
- 親や家族の借金が、自分の家に影響を与えるのはどのようなケースなのかがわかる
- 親や家族の借金で、自分の家を取られないようにするための対策がわかる
- この記事はこんな人におすすめ!
- 親や家族に借金があり、そのために自分の家を取られるのではないかと心配な人
- 亡くなった親の借金で家を取られるのではないかと心配な人
- 親や家族の借金で家を取られないための対策を知りたい人
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1.親や家族の借金で持ち家が取られる可能性はあるのか?
- 「借金で家を取られる」のは、家やマンションなどを担保にしてお金を借りていて、返せない場合であることがほとんどである
- 家を担保にしていなくても、借金の返済が滞ると家を差し押さえられて売却され、借金の返済に充てられることがある
- 借金は貸した人と借りた人の個別の契約であるため、親や家族の借金で家を取られることはない
まず、そもそも「借金で家を取られる」とはどういうことなのか、また親や家族といった身内の借金によって持ち家やマンションが取られる可能性があるのかについて説明します。
1-1.「借金で家を取られる」とは?
「借金で家を取られる」というケースのほとんどが、家やマンションといった不動産を借金の担保にしている場合です。
家などの不動産を担保にして借りたお金が返済できないと、家を担保にする際に設定した「抵当権」によって家を強制的に売られてしまいます(抵当権については、後ほどくわしく説明します)。
ただし、家を担保にしていない場合でも、借金を返済しなければ家を差し押さえられることがあることも踏まえておきましょう。
借金が約束通りに返済されない場合、債権者(お金を貸した側)は裁判をして、債務者(お金を借りた側)に対して返済を主張してきます。それでも返済がされないと、債権者は債務者の財産を差し押えすることができるようになるのです。
通常、差し押えは債務者の預金や給与から始まりますが、それでも足りない場合は、車や不動産といった財産の差し押さえが行われます。そして、強制的に売られて借金の返済に充てられるのです。
1-2.親や家族の借金で家を取られることはない
親や家族が借金をしていると、もし返済が滞ったら身内である自分が払うことになるのだろうか?お金を用意できなければ、自分の家やマンションを借金の返済として取られてしまうのではないか?と心配している人もいることでしょう。
しかし、たとえ親が借金をしていたとしても、借金をしている親本人が生きている限り、子供に借金の返済義務がおよぶことはありません。
借金は、貸した人と借りた人の個別の契約であり、たとえ子どもであっても契約者ではないため返済義務はないからです。
1-2-1.親の借金を子供が払う必要がない理由
貸金業法では、「債務者等以外の者に対し、債務者等に代わって債務を弁済することを要求すること。」は禁止されています(貸金業法21条1項第7号)。
したがって、仮に貸金業者から「親子なんだから払うべき」などと肩代わりを求められても支払う必要はありません。
2.家族の借金が自分の家に影響するケースとは?
- 親や家族の借金の保証人になっている場合は、借金の返済で自分の家を取られることがある
- 親や家族が借金をする際に、自分の家を担保にしていたら、返済が滞ると家を取られてしまう
- 親が借金したまま亡くなった場合、借金も相続したら、その返済で家を取られることがある
通常は、親や家族の借金で自分の家を取られることはありません。
ただし、次のような場合は、親や家族の借金が自分の家に影響する場合があります。
- 親や家族の借金の保証人になっている場合
- 親や家族が自分の家を担保にして借金している場合
- 親が借金をしたまま亡くなって借金も相続した場合
それぞれの場合について、くわしく説明します。
2-1. 親や家族の借金の保証人になっている場合
まず1つ目が、親や家族が借金をする際に、あなたが保証人や連帯保証人になっている場合です。
この場合、債権者と保証人(または連帯保証人)との間に保証契約が成立するため、返済義務が発生します。したがって、お金を借りた人の生死に関わらず、返済が滞った場合は代わりに支払いをしなければなりません。
返済できなければ、最悪の場合、預金や給与の差し押さえから始まり、最終的には自宅が差し押さえられるリスクが生じます。
2-1-1.保証人と連帯保証人の違い
保証人と連帯保証人には、次の表のような違いがあります。
どのような立場か | 「催告の抗弁権」の有無 | |
---|---|---|
保証人 | お金を借りた人が返済できないときに限り、債権者から返済を求められる | ある |
連帯保証人 | 借主と同じ責任を負い、借主と同等の返済義務を負う(債権者は連帯保証人に直接請求できる) | ない |
※「催告の抗弁権」:「先に借主本人に請求すべきだ」と主張できる権利のこと
こちらの表からわかるように、連帯保証人として契約すると、自宅を差し押さえられるリスクが保証人よりも高いことを理解しておくことが重要です。
2-2. 親や家族が自分の家を担保にして借金している場合
2つ目が、親や家族が借金をする際に、あなたの家を担保に提供している場合です。
たとえ親や家族であっても、所有者の同意を得ずに家を担保にすることは法的にできないため、この場合は家の所有者自身が同意している前提となります。
親や家族があなたの家を担保にして借金をしていてその返済が滞ると、あなたの家が差し押さえられる可能性があります。なぜなら、担保にした不動産には「抵当権」が設定されているからです。
2-2-1. 抵当権とは?
抵当権とは、借金の担保として提供した不動産が返済不履行の場合に、債権者が強制的に処分して換金できる権利のことです。
この抵当権が設定されていることにより、借金の返済が約束通り行われないとき、債権者(お金を貸した側)が担保である家を差し押さえ、強制的に売却することで借金返済に充てることができます。
ただし、自宅を担保に提供するには、所有者の同意が必須です。
たとえ親であっても、あなたの同意がない限り、勝手にあなたの家を担保に入れることはできません。したがって、担保設定がされた覚えがない場合には、自宅が影響を受ける心配はないと言えます。
2-3. 親が借金をしたまま亡くなって借金も相続した場合
3つ目が、親が借金を残したまま亡くなった場合です。
借金などのマイナス財産も、預貯金や不動産といったプラスの財産と同様に相続の対象となります。
亡くなった親の借金としてよくあるのが、次の表のようなものです。
借金の種類 | 内容 |
---|---|
ローンなどの借金 | 事業ローン、カードローン、クレジットカード、個人からの借入金など |
分割払いの未払金 | 携帯電話や絵画、骨董品、ブランド品などを分割払いで購入した残債 |
未払いの家賃、水道光熱費 | 家賃や水道光熱費を滞納していた場合は、負債として相続人に引き継がれる |
未払いの買掛金、リース債権 | 親が事業をしていて未払いの買掛金(購入代金)やリース債権があると、相続人に支払い義務が及ぶ |
未払いの損害賠償金 | 交通事故を起こしたりして損害賠償債務を抱えている場合、相続人に債務が引き継がれる |
未払いの税金 | 親が税金を滞納していると、相続人が払うことになる |
これらの借金を相続すると、相続人には借金の返済義務が発生します。そして、その額によっては、相続した人の家が差し押さえられる可能性が発生するのです。
2-3-1. 借金の相続放棄という選択肢
借金を相続したくない場合、「相続放棄」という手続きを選ぶことが可能です。
ただし、単に相続放棄をすると、借金などのマイナスの財産だけでなくプラスの財産もすべて放棄しなければなりません。
もし、借金だけを相続したくない場合は、亡くなった親のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する「限定承認」という方法を取ることになります。
相続放棄のポイントは、親が亡くなったことを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きしなければならない点です。この期限を過ぎてしまうと、借金も含めて自動的に相続されることになるため、早めの対応が重要です。
相続放棄を行うと、親が残した借金についての返済義務は一切発生しません。そのため、相続放棄を行えば、親の借金で自分の家が取られることはありません。
家や借金の相続放棄については、「借金のため家を相続放棄!それでも残る家の管理責任と免れるための方法」でくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
3. 自分の家を守るためにできる対策
- 保証人や連帯保証人になるときは、リスクをしっかり理解しておくことが大切
- 相続放棄をすれば、亡くなった親が残した借金を回避することも可能
- 親や家族の借金で不安な場合は、弁護士などの専門家に相談する
親や家族の借金から自宅を守るためには、事前の確認や対応が大切です。
ここでは、次の3つの具体的な対策を解説します。
- 保証人や連帯保証人のリスクを理解する
- 相続放棄で親の借金を避ける
- 親や家族の借金で不安な場合は専門家に相談する
3-1. 保証人や連帯保証人のリスクを理解する
保証人や連帯保証人になった場合、返済義務が発生し、最悪の場合、自宅が差し押さえられるリスクもあるため注意が必要です。
特に、連帯保証人として契約すると、借金をした人と同等の責任を負うため、借金返済が滞ったときはあなた自身が返済を求められることになります。
保証人や連帯保証人になってほしいと頼まれた際には、リスクを理解したうえで慎重に判断することが重要です。
もし保証人としての責任が不安な場合は、契約する前に専門家へ相談することをおすすめします。
3-2. 相続放棄で親の借金を避ける
親が亡くなり、借金が残っていた場合、相続放棄を行うことで借金から解放され、自宅を守ることができます。
ただし、相続放棄をすると、借金だけでなく預貯金や不動産といったプラスの財産もすべて放棄しなければなりません。
もし、借金だけを相続放棄したいのであれば、プラスの相続財産の範囲内で借金などのマイナスの財産も相続する「限定承認」をすると良いでしょう。
限定承認をすれば、借金の額が相続したプラスの財産分を超えたとしても、その分を相続した人が負う義務は発生しません。
相続放棄や限定承認の手続きを行うためには、家庭裁判所での申請が必要です。専門的な知識が求められるため、弁護士や司法書士に相談することで、手続きをスムーズに進められます。
3-3.親や家族の借金で不安な場合は専門家に相談する
親や家族が借金をしていて、自分の家などの影響があるかがわからず不安な場合は、専門家に相談してみると良いでしょう。
たとえば、自分の家やマンションが親や家族の借金の担保にされていないかどうかは、自分で登記を調べるほか、司法書士に相談することができます。
また、亡くなった親に借金があり、相続放棄や限定承認をしたい場合は、弁護士への相談がおすすめです。
わからないまま放置しておくと、思わぬ損をすることがあります。不安や心配がある場合は、専門家に相談してみましょう。
4. 具体的なケーススタディを紹介
親や家族が借金を抱えている場合、自分の家にどのような影響があるのかをわかりやすく理解するため、具体的なケースを紹介しならが説明します。
4-1.ケース1: 親が借金を残して亡くなった場合
1つ目のケースは、親が借金を残して亡くなった場合です。
【状況】
- 父親が500万円の借金を残したまま他界
- 遺産:父の預金100万円
- 負債:借金から預金を差し引いた400万円
- 対策:相続放棄をする
このケースでは、相続人である子供が相続の単純承認すると、遺産と借金の両方が相続されて借金の返済を負うことになってしまいます。
対策として相続続放棄を行えば、借金の返済義務がなくなり、家や他の財産を守りながら借金を回避することが可能です。
期限内(相続を知った日から3ヵ月以内)の手続きを忘れないようにしましょう。
4-2.ケース2: 夫が家を担保にして借金していた場合
2つ目のケースは、夫が妻に内緒で家を担保にして借金をしていた場合です。
【状況】
- 夫が夫単独名義の家を担保に300万円の借金をしていた
- 夫が借金をする際、妻は担保にすることを知らなかった
- 夫は300万円の借金を返済できない状況
- 対策:家を守るのであれば、妻や家族が立て替えて借金を返済する
このケースでは、夫が自身の単独名義の家を担保にして借金をしているため、借金を返済するか、返済できなければ家を手放すことになります。
たとえ、妻や家族が住んでいたとしても、夫名義の家を夫自身が担保にして借金したのであれば、家族がそのことを知っていても知らなくても関係ありません。
もし家を守りたいのであれば、家族が借金の肩代わりをするか、担保なしでほかから借り入れをして返済するなどの対策を取る必要があります。
離婚が前提の内容になりますが、夫が夫名義の家を売却するリスクについては、「離婚で旦那名義の家やマンションを勝手に売却されるリスクと対策を解説」でくわしく説明しているので、参考にしてみてください。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 借金とは、お金を貸した人と借りた人との契約なので、親や家族の借金で自分の家が取られることまずない
- 次のような場合は、親や家族の借金で家を取られる可能性がある
・親や家族の借金の保証人になっている場合
・親や家族が自分の家を担保にして借金している場合
・親が借金をしたまま亡くなって借金も相続した場合 - 親や家族の借金で自分の家を取られないための対策として、次のようなものがあげられる
・保証人や連帯保証人のリスクを理解する
・相続放棄で親の借金を避ける
・親や家族の借金で不安な場合は専門家に相談する - 親が遺産と借金を残して亡くなった場合、すべての相続を放棄するのであれば「相続放棄」の手続きをする
- 借金だけ相続したくない場合は、「限定承認」の相続手続きをする
- 相続放棄も限定承認も、手続きの期限は相続の発生を知った日から3ヵ月以内であることに注意
親や家族の借金によって自分の家やマンションを取られる恐れが発生するのは、非常に限定的なケースです。
ただし、親や家族が借金する際に家を担保にすることを承諾していたり、亡くなった親の借金を相続したりすると、借金の返済として家を取られることが起こり得ます。
そのような事態に陥らないようにするには、保証人や連帯保証人のリスクを正しく知ることや、親の借金を相続しないように手続きすることなどの対策が大切です。
親や家族の借金、もしくは自身の借金で家を売却することになった場合については、「借金を返すために家を売る方法を解説!返済できない場合の対処法も紹介」でくわしく説明しています。また、借金があっても家を手放したくない場合の対策については、「家を手放さずに借金を減らす!自己破産・任意整理・個人再生以外の方法はある?」をぜひご覧ください。
万が一、借金の返済を負うことになって家を売るのであれば、まずは家がいくらで売れるのかを調べる必要があります。
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さらに、不動産の売却についてわからないことがあれば、宅建士の資格を持った専門スタッフにいつでも相談できるので安心です。
イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
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