「家を売却したいが、引っ越しの準備に少し時間が欲しい」「新居への移動のスケジュールが合わない」などの理由で、売却後に少しだけ住み続けたい場合があります。
このような時に役立つのが「引き渡し猶予(ひきわたしゆうよ)」です。
売買契約を結ぶときに、「引き渡し猶予」という特約を付ければ、買主から家を売った代金を受け取っても一定期間住み続けることができるため、引き渡ししを待ってもらえます。
ここでは、家の売却や買い替えの際に役に立つ「引き渡し猶予」についてわかりやすく説明します。
- 家を売却する際の「引き渡し猶予」とはどのようなものか
- 家の買い替えで「引き渡し猶予」を使った場合の流れ
- 「引き渡し猶予」を利用する際の注意点
- この記事はこんな人におすすめ!
- 家やマンションなどの買い替えを検討している人
- 家が売れても、少しの間、引っ越しをせずに住み続けたいと考えている人
- 「引き渡し猶予」の利用で注意すべき点について知りたい人
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1.「引き渡し猶予」とは?売却後も住み続けられる選択肢
- 「引き渡し猶予」とは、家を売却したあとも、期間を定めて住み続けられるようにしてもらう特約のこと
- 引き渡し猶予が必要になるのは、今の家の売却代金を新居の購入費用に充てる場合や引っ越し時期の調整が必要な場合
- 引っ越し猶予には、引っ越し時期の調整がしやすくなるというメリットがある一方で、売却チャンスを逃す恐れがあるというデメリットがある
まず、「引き渡し猶予」とはどのようなものなのか、また、引き渡し猶予の利用がおすすめの場合について説明します。
1-1.「引き渡し猶予」とは?
「引き渡し猶予」とは、家を売却して買主に所有権が移したあとも、期間を定めて、そのまま住み続けられるようにしてもらうことです。
売買契約時に引き渡し猶予を設定しておけば、家を売却した際の「代金決済」や、家の所有者を変更する「所有権移転登記」は通常の流れで実施したうえで、およそ数日〜数週間程度の間、家の明け渡しを待ってもらうことができます。
引き渡し猶予は、売主の都合で設定するため、当然ですが、買主からの承諾を得なければなりません。
1-2.引き渡し猶予が必要になるケース
引き渡し猶予が必要になるケースとして、次のようなものがあげられます。
- 買い替えで今の家の売却代金を新居の購入費用に充てる場合
- 家族の学校や勤務先の都合で引っ越し時期の調整が必要な場合
- 物件の解体や修理を実施する必要がある場合
1-2-1.買い替えで今の家の売却代金を新居の購入費用に充てる場合
今の家を売ったお金で新しい物件を買う場合、先に売却代金を受け取らないと新しい物件の購入代金を支払うことができない場合があります。
そのような場合、買主と交渉をして引っ越し猶予をつけてもらえば、今の家を売ってから新しい物件を購入して引越しするまでの間、売却した物件に住まわせてもらうことが可能です。
1-2-2.家族の学校や勤務先の都合で引っ越し時期の調整が必要な場合
家族の学校や勤務先の都合をはじめ、さまざまな事情から、売却した今の家を買主へ引渡す日までに引っ越しができない場合があります。
このような場合にも、引っ越し猶予をつけおくことで、家を売却してから実際に引っ越しするまでの期間の調整が可能です。
1-2-3.物件の解体や修理を実施する必要がある場合
売却した家を買主に引き渡す前に、建物の解体や大規模な修理が必要な場合、それが完了するまでの期間として引き渡し猶予を設定することがあります。
特に、老朽化した家の取り壊しや修繕が必要な場合、買主との合意のもとで猶予期間を設定することが多いです。
1-3.引き渡し猶予利用のメリットとデメリット
売主が引き渡し猶予を利用するメリットとデメリットとして、次のようなものがあげられます。
- メリット:買い替えで新居に引っ越しするスケジュールの調整がしやすくなる
- デメリット:買い手の承諾が必要なため、売却チャンスを逃す恐れがある
引き渡し猶予を利用するメリットは、買い替えで、今の家から新しい家に引っ越しするスケジュールが調整しやすくなる点です。
買い替えで仮住まいが必要になるような場合であっても、引き渡し猶予をうまく利用すれば、仮住まいしなくても済むでしょう。
一方で、あくまでも引き渡し猶予は売主の都合によるものなので、買主が承諾しなければ利用できない点がデメリットです。
買主が引き渡し猶予の利用を認めてくれないことで、せっかくの売却チャンスを逃すことにもなりかねません。
あとで説明する注意点とともに、引き渡し猶予を付けることには、デメリットやリスクがあることも踏まえておきましょう。
2.「引き渡し猶予」を付けた買い替えの流れ
- 引き渡し猶予を付ける場合は、売却活動を開始する時点で不動産会社に相談しておくことが大切
- 引き渡し猶予の期間に発生した物件の不具合や破損についても、どのようにするのかを取り決めておくようにする
- 引き渡し猶予期間中に明け渡しができなかった場合の損害賠償などについても、取り決めておくほうが良い
引き渡し猶予を付けて買い替えをする際は、次のような流れになります。
- 「引き渡し猶予」の特約を付けて売却活動をする
- 売買契約を結んで売却物件の残代金決済をする
- 売却代金で購入物件の残代金決済をする
- 新しく購入した物件への引っ越しをする
- 売却物件の引き渡しを完了する
具体的な流れの内容を一つずつみていきましょう。
2-1.①「引き渡し猶予」の特約を付けて売却活動をする
引き渡し猶予特約は、買主にとっては不利な契約内容になります。なぜなら、売主の都合で買主に引き渡しの延長をお願いするものだからです。
よって、不動産会社に依頼して売却活動の最初から「引き渡し猶予特約」を付けての売却だということを明示してもらうようにしましょう。
2-2.②売買契約を結んで売却物件の残代金決済をする
「引き渡し猶予特約」を付けて売却していた物件の売買契約がまとまれば、残代金決済を行います。
売主は残代金決済のときに買主からすべての売却代金を受け取るので、通常であれば残代金決済の前日までに引越しを済ませておかなければなりません。
しかし、「引き渡し猶予特約」が付いていれば引き渡しを猶予してもらえるので、しばらくの間、そのまま住むことができます。
なお、売却代金の支払いは完了しているので、引き渡しはまだでも物件の所有権は買主に移っていることに注意が必要です。
2-3.③売却代金で購入物件の残代金決済をする
売却物件の残代金決済と同日もしくは数日以内に、新しい物件(引越し先)の残代金を支払って決済を行います。
購入した家の代金を支払った時点で、新しい住まいとなる物件が引渡され所有権を得ることになります。
2-4.④新しく購入した物件への引っ越しをする
引き渡しを待ってもらっている、今の売却済みの家から、購入した新しい家への引越しをします。
引き渡し猶予の期間に発生した物件の不具合や破損についても、どのようにするのかを契約時に取り決めておきましょう。
2-5.⑤売却物件の引き渡しを完了する
新しい物件への引っ越しが完了し、売却した家が空き家の状態になれば、購入してくれた買主に改めて引き渡しをします。
これで、「引き渡し猶予」を付けた買い替えがすべて完了です。
万が一、引っ越し猶予期間に明け渡しができなかった場合、買主に対してどのような損害賠償をするのかについても、売買契約時に取り決めておきましょう。
3.引き渡し猶予の注意点
- 引き渡し猶予を付けると、売れにくくなったり値下げを要求されたりすることがある点に注意する
- 引き渡し猶予が付けられない場合は、リースバックを利用するという手もある
- 引き渡し猶予中の賃料は不要だが、何かあった場合は売主側の責任になることに注意する
ここでは、引き渡し猶予を利用する際の注意点について説明します。
3-1.引き渡し猶予を付けると売れにくくなることがある
先に述べたとおり、引き渡し猶予は買主にとって不利な契約になるため買い手が現れにくくなることがある点に注意が必要です。
また、引き渡し猶予を付けることで、買い手から値下げを要求されることもあります。
引き渡し猶予を付けて売りに出す場合は、不動産会社の担当者とよく相談をして、できるだけ売却の妨げにならないような内容にしましょう。
3-2.引き渡し猶予ができない場合はリースバックもおすすめ
引き渡し猶予が使えない場合、家を売ってから新しい家に入居するまでの間、仮住まいを用意しなければなりません。
引き渡し猶予を使わずに、かつ、仮住まいもしたくない場合におすすめなのがリースバックです。
リースバックを利用すれば、家を売却した売却代金を受け取ってから新しい家が見つかるまで、今の家に賃貸として住み続けることができます。
また、買取なのですぐに現金化でき、買い手を探す手間もかかりません。
ただし、通常の仲介での売却よりも、売却価格が安くなってしまう点がデメリットです。
リースバックについては、「【リースバックのまとめ】家を売っても住み続けられる!利用方法や注意点を詳しく解説」でくわしく説明しているので、ぜひ一読してみてください。
3-3.引き渡し猶予の賃料は不要
一般的に、「引き渡し猶予」の間の賃料は基本的には発生しません。
そのため、残代金決済の時点で所有権は買主に移っていますが、引き渡し猶予の期間中に何かあった場合は、基本的に売主の責任になります。
ただし、このあたりの条件(天災地変があった場合や電気・ガス・水道の支払いなど)も特約の内容によって異なるため、あらかじめ契約時に取り決めておくことが必要です。
特約の内容については不動産会社に必ず確認し、自分の目でも書類を確認しておきましょう。
引き渡し猶予期間の使用料について
所有権移転(代金支払い)と引き渡しとが同時ではない場合には、一定の期間、所有者ではない者が他人の物を使用することになり、その間の使用料を支払うかどうかが問題になることがあります。
このような場合に使用料などを支払うかどうかは、売主・買主の当事者の協議に委ねられますが、所有権移転(代金支払い)が先行して引き渡しが後になるときには、後日の引き渡しに際して売主に引き渡し拒否の理由を与えないため、使用料の授受はない方が良いと考えられます。
不動産取引における引き渡しについて、詳しくは「不動産売買契約書の“引き渡し”とは」をご覧ください。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 「引き渡し猶予」とは、家を売却して買主に所有権が移転したあとも、期間を定めて住み続けられるようにしてもらうこと
- 引き渡し猶予が必要になるのは、次のような場合
・今の家の売却代金を新居の購入費用に充てたい場合
・家族の事情などで引っ越し時期の調整が必要な場合 - 引っ越し猶予には、次のようなメリットとデメリットがある
・メリット:引っ越し時期の調整がしやすくなる
・デメリット:売却チャンスを逃す恐れがある - 引き渡し猶予を付ける場合は、売却活動を開始する時点で不動産会社に相談しておくことが大切
- 引き渡し猶予を付ける際は、契約時に次のようなことも取り決めておく
・引き渡し猶予の期間に発生した物件の不具合や破損についてどうするか
・引き渡し猶予期間に天災地変があった場合や、電気・ガス・水道の支払いなど
・引き渡し猶予期間中に明け渡しができなかった場合の損害賠償 - 引き渡し猶予が付けられない場合は、リースバックを利用するという手もある
家やマンションを売却した際、買主の承諾を得て、売却した物件に一時的に住まわせてもらうのが「引き渡し猶予」です。
売主にとっては、売却した自宅の決済日までに自宅を空き家にしなくてもよく、また売却代金で新居を購入できたり、自宅のローンを完済した上で新居のローンを組んだりできるため、買い替えの場合などに便利な特約だと言えます。
しかし、「引き渡し猶予特約」は買主にとっては不利な内容になるため、家が売れにくくなる場合があります。
引越し猶予を希望する場合は、売却前に不動産会社へ相談し、引き渡し猶予の条件をつけて売却活動してもらうようにしましょう。
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イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。