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遺言書がある場合の家の相続手続きについてわかりやすく説明する

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遺言書がある場合の家の相続手続きについてわかりやすく説明する

相続の手続きや遺産分割を大きく左右するのが、遺言書(いごんしょ・ゆいごんしょ)です。

こちらでは、遺言書がある場合の相続の流れと家の相続登記手続きの方法についてわかりやすく説明します。

この記事で具体的にわかる3つのポイント

  • 遺言書(自筆遺言書と公証遺言)の特徴と確認方法についてわかる
  • 遺言書がある場合の不動産相続登記の方法についてわかる
  • 遺言書の内容に不満がある場合の遺留分滅殺請求についてわかる
この記事はこんな人におすすめ!
遺言書のある相続手続きについて知りたい人
遺言書の効力がどうなるのかわからない人
遺言書がある場合の相続登記手続きについて知りたい人

1.遺言書とは?まずは遺言書の有無を確認する

遺言書とは、亡くなった人の遺志を法的に正しい手段に則って作成したものであり、相続の際に何よりも優先されるものです。

遺言書で財産の分け方や相続人(相続する人)が指定されている場合、基本的に遺言書に沿って相続されることになります。

そのため、相続が発生したら、まずは遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書がない場合は、相続人全員で話し合いをして相続財産の分け方を決めなければなりません。

遺言書がない場合の相続が発生した際の話し合いと家の分け方については、「家を相続したときの話し合いと家を分ける方法についてまとめた」でくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。

2.「自筆遺言書」と「公正証書遺言」について

遺言には大きく分けて次の2つの種類があります。

  1. 自筆遺言書
  2. 公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
(※秘密証書遺言という方法もありますが、手続きの複雑さからほとんど利用されません。)

それぞれどのような遺言なのか、くわしく説明します。

2-1.自筆遺言書

自筆遺言書とは、その名のとおり、亡くなった人が生前に自分で書いた遺言書で、正式には「自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)」と言います。

自筆の遺言書は簡単に自分の意思を遺せるため、多くの方が選択される遺言の遺し方です。

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法968条

上記のように民法によって遺言方法が規定されているため、次のようなものは自筆遺言書として認められません。

  • 自書ではなく、ワープロなどを使って書かれたもの
  • 作成日が特定できないもの
  • 押印がないもの

ただし、民法の改姓により2019年1月13日から、財産目録(相続財産の種類や内訳、評価額などをまとめた一覧表のこと)については自書でなくてもよいこととなりました。

これにより、パソコンで作成したり、通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付することも認められるようになりました。

2-2.公正証書遺言

公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)とは、公的な手続きを取って遺された遺言書で、亡くなった人が生前に公証人(こうしょうにん:私的紛争の予防を防ぐため、証明行為を行う公務員)に頼んで作成した遺言書です。

公正証書遺言の作成は、原則として公証役場で行われます。2名以上の証人の立ち会いのもと公証人が遺言書を作成し、遺言を遺す人がその内容で間違いないかどうかを確認してから署名・押印をすれば完成です。

公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、所在がわからなくなっても、最寄りの公証役場に問い合わせすれば見つけて確認することができます。

自筆遺言書と違って無効になるケースが少なく、信用性が高い点が公正遺言のメリットですが、一方で、作成に費用がかかるという点がデメリットです。

公正遺言の作成には、公証人に支払う公正証書遺言作成の手数料と証人への謝礼が必要になります。作成手数料の額は、遺言に記載する財産によって決まりますが、多くの場合、2万~5万円程度、証人への謝礼は、一人につき1万円程度です。

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3.遺言書の内容の確認方法

遺言書がある場合、内容の確認方法は、自筆遺言書か公正証書遺言かによって異なります。

それぞれの相続手続きについて説明します。

3-1.自筆遺言書の確認方法

自筆遺言書は専門家が立ち会って書かれたものではないので、内容や効力を家庭裁判所に必ず検認してもらう必要があります。

自筆遺言書を見つけたときに封が閉じてある場合は、相続人であっても決して開封してはいけません。そのまま家庭裁判所に持っていくようにしましょう。

検認(けんにん)は、遺言書が本当に亡くなった方が書かれたものなのかを裁判所が確認し、その内容を認定するための手続きです。

内容が適正かどうかを判断するものではなく、検認が終わればどんな内容だとしても遺言書通りに財産を分けることが優先されます。

検認の手続きが終わり「検認済証明書(けんにんずみしょうめいしょ)」の交付を受けたら、原則的に遺言書の内容に沿って家の相続登記をします。検認には1ヵ月以上の時間を要することもあります。

自筆証書遺言の保管制度がスタート

直筆遺言書は、紛失の恐れや、相続人による遺言書の破棄・隠匿・改ざんなどの問題が指摘されていました。

そこで、これらを解決する方法として「自筆証書遺言の保管制度」が創設され、2020年7月10日から施行されました。

これにより、全国312か所の法務局において、作成した本人が遺言書の保管を申請することができます。

遺言書保管所に保管されている遺言書については、上記の問題点が起きることがないため、家庭裁判所の検認が不要となります。

3-2.公正証書遺言の確認方法

公正証書遺言は公文書として扱われるため、裁判所による検認は不要です。

遺言書の正本と亡くなった人と相続人との関係書類を用意するだけなので、自筆遺言書に比べるとスムーズに手続きすることができます。

4.遺言書がある場合の不動産の相続登記

遺産分割や相続登記をしなければ、相続した家の売却や活用はできません。

遺言書自体に時効はありませんが、不動産の相続登記申請は義務化されたため、相続を知った日から3年以内に行わなければなりません。

相続登記と相続登記申請の義務化については、「相続した家の売却に必要な相続登記とは?手順と義務化についても解説」でくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。

4-1.遺言書がある場合の相続登記の方法

遺言書がある場合の相続登記は、その遺言の内容が法定相続人に対するものなのか、遺贈(いぞう:財産を相続人以外の者に譲り渡すこと)なのかによって手続き方法が異なります。

遺言の内容が法定相続人に対する相続分の指定であった場合は、相続人の1人が単独で申請することが可能です。一方、遺贈の場合は、受贈者(遺贈を受ける人)と相続人全員の共同申請となります。

遺言執行者が選任されていたケースでは、遺贈の場合のみ相続人に代わって、遺言執行者が受贈者と登記申請を行います。法定相続人の場合は遺言執行者は関与しません。

4-1-1.遺言がある場合の必要書類

遺言がある場合の相続登記の必要書類は、以下の通りです。

  • 遺言書(自筆遺言書の場合は、検認済証明書付き)
  • 登記申請書
  • 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 遺言者の住民票の除票または戸籍の附票
  • 不動産の相続を受ける者の住民票
  • 不動産の相続を受ける者の戸籍謄本
  • 対象不動産の固定資産評価証明書

遺贈の場合は、さらに以下の書類が必要です。

  • 対象不動の権利証または登記識別情報
  • 相続人全員の印鑑証明書(または遺言執行者の印鑑証明書)
  • 相続人全員の戸籍謄本(遺言執行者がいる場合は不要)

ただし、これらはあくまでも基本的なものなので、状況に応じて流れや必要書類は変わります。

4-2.相続登記手続きは専門家に依頼するのが安心

相続登記は自ら行うこともできますが、相続人が誰なのか調査するために戸籍をすべて集めるのは容易ではありませんし、集めた場合でも、昔の戸籍を読めなければなりません。

そこで、相続登記は専門家に依頼することができます。

相続の専門家として、弁護士・司法書士・行政書士がいますが、それぞれ役割が異なります。

●遺産分割において、争い事があるとき
→弁護士
●遺産分割において、遺産の中に不動産が含まれないとき
→行政書士
遺産分割において、争い事がなく、不動産が含まれるとき
司法書士

司法書士に依頼すれば、書類の準備や登記を全て丸投げすることができます。費用は、税金(登録免許税)や報酬を含めて合計平均10~15万円ぐらいです。

5.遺言書による相続手続きの注意点

遺言書による相続手続きを行う際の注意点をまとめました。

5-1.遺言執行者が指定されているケースがある

遺言書には、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)が指定されているケースと指定されていないケースがあります。

遺言執行者とは、遺産の管理や分割手続きをする人で相続人(相続を受ける人)に関係なく誰でもなれます。

手続きは相続人がすることもできますが、相続人全員の承諾と全員の印鑑証明や戸籍謄本が必要になるため、スムーズな手続きが難しいケースもあります。

遺言執行者なら1人で対応できる手続きが多いので、円滑に相続手続きを行うことができます。

遺言書で遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任申し立てをおこなうこともできます。相続人のうちの1人が遺言執行者になることも可能です。

5-2.遺言書に不満があるときはどうすればいい?

遺言書はその内容が何よりも優先されるものであり、遺言書に沿って相続されるのが原則です。ただし相続人全員の承諾があれば、分け方などを変更することができます

たとえば、

  • 親子の縁を切った子には一切相続しない
  • すべての財産を愛人に相続する

遺言書の内容がこのような場合でも、基本的に亡くなった方の意思が優先されます。

しかし、法定相続人は、最低限保証されている「遺留分(いりゅうぶん)」の請求が可能です。

5-2-1.遺留分とは?

遺留分とは、法定相続人に最低限保証された遺産の取得分のことです。

民法では、次のように定められています。

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
1.直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
2.前後に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
民法1028条

「兄弟姉妹以外の相続人」とは、親と配偶者と子のことで、これらの人たちに遺留分が保証されていることになります。

「直系尊属(ちょっけいそんぞく)」とは、祖父母や両親、子や孫といったいわゆる縦の流れの関係の人です。

5-2-2.遺留分の割合について

遺留分を請求することを「遺留分滅殺請求」と言います。

遺留分滅殺請求できる割合は、次の表のとおりです。

相続人 全体の遺留分 相続財産に対する相続人の遺留分
配偶者のみ 1/2 配偶者1/2
配偶者と子 1/2 配偶者1/4 子1/4
子のみ 1/2 子1/2
配偶者と親 1/2 配偶者1/3 親1/6
親のみ 1/3 親1/3
兄弟姉妹 0 遺留分なし

たとえば、「財産のすべてを愛人に相続させる」と遺言書に記されてたとしても、配偶者は被相続人(亡くなった人)の財産の2分の1を遺留分として「「遺留分減殺請求」できます。

遺留分減殺請求は、次のいずれかで時効となります。

  • 遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないとき
  • 相続開始のときから10年を経過したとき

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まとめ

この記事のポイントをまとめました。

  • 遺言書の内容は何よりも優先されるため、まずは相続が発生したら遺言書の有無を確認する
  • 遺言書には、次の2種類がある
    ・自筆遺言書:亡くなった人が生前に自分で書いた遺言書
    ・公証遺言:公証役場で公的な手続きを取って作成した遺言書
  • 自筆遺言書と公証遺言では確認方法が異なる。自筆遺言書は、家庭裁判所で検認の手続きをして「検認済証明書」を交付してもらう必要がある。公証遺言の場合は不要
  • 遺言書に時効はないが、相続登記申請は義務化されたため、相続が発生したらすみやかに遺言書の内容に沿って相続登記を行うのがおすすめ
  • 遺言書による相続手続きの注意点として、次のようなものがあげられる
    ・遺言執行者が指定されているケースがある
    ・遺言書の内容に不満がある場合は、遺留分を請求できる場合がある
  • 遺留分が請求できるのは、親と配偶者と子のみである

遺言書がある場合は、基本的に遺言書の内容に従って相続が行われます。

ただし、遺言書があったとしても、不動産を売却するには、まずは相続登記をしなければなりません

実際に相続した家や土地などを売るときの流れについては「相続する不動産を売るときの流れ」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。

相続した不動産の売却は、相続人全員の戸籍を集め、すべての相続人とやり取りしながら調整し、書類の作成(遺産分割協議書や相続登記申請書)をするのは正直面倒で、時間もかかります。

そのため、相続不動産の売却が得意な不動産会社を探して任せるのがおすすめです。

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