
相続税申告が必要かどうかの判断材料として、相続した不動産の売却金額を資産価値とみなして良いのでしょうか?
こちらは、イクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
※イクラ不動産は不動産会社ではなく、無料&匿名で不動産の相談・会社選び・査定ができるサービスです。
身近な人が亡くなって、お家を相続することになった場合、相続税がかかるかどうか心配ですよね。
人が亡くなって財産を相続した人、または遺贈(遺言によって財産を分与すること)により取得した人の相続財産に対してかかる税金が「相続税」です。
この相続財産には不動産が含まれます。
こちらでは、相続した不動産に相続税がかかるかどうか調べる手順や計算方法をわかりやすく説明します。
だから!

もくじ

相続税のかからない範囲
相続した財産から非課税財産、葬式費用、借金などの債務を差し引いて、さらに基礎控除額を差し引いた額をもとに税額を計算します。
たとえば、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は
3,000万円+(600万円×2)=4,200万円
となります。もし、相続財産(課税価格)が4,200万円(基礎控除額)以下の場合には相続税はかかりません。
相続税は、被相続人(亡くなった方)が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の住所地の所轄税務署に申告し納税しなければなりません。もし、基礎控除額の範囲内であれば申告も納税も必要ありません。
基礎控除額を計算するときの注意点

まず、基礎控除額を算出する際の「法定相続人の数」には、相続放棄した人がいても、その放棄がなかったものとして法定相続人の数に含めます。
また、養子がいる場合、「法定相続人の数」に含めることができる養子の数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までに制限されています。
ただ、養子の数の制限は、基礎控除額による節税を防ぐための規定であり、計算するときの「法定相続人の数」に入らなくても、相続を受けることができます。
不動産に相続税がかかるかどうか調べる手順
相続財産は不動産(土地・建物)だけではなく、現預金や株式などの有価証券、ゴルフ会員権、貴金属なども含まれますので、相続税がかかるかどうかについては全て計算しなければなりません。

①相続人が誰かを確定する
- 法定相続人の確定
- 遺言等の有無の確認など
法定相続人を確定するためにまずは、法定相続人の範囲と法定相続分について理解しておく必要があります。
法定相続人(ほうていそうぞくにん)の範囲は?
法定相続人とは、民法によって規定された一定の順序に従って相続人となる人のことで、配偶者と一定の血族(けつぞく:亡くなった人の血縁者)からなります。
まず、配偶者は必ず相続人となります。また、配偶者だけ相続するわけではなく、必ず配偶者と血族相続人が共同して相続します。
血族相続人 | 内容 |
第1順位 直系卑属(ちょっけいひぞく:養子を含む子供・孫など) | 常に相続人となります。子供が死亡の場合は孫が相続人となります(これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます)。 |
第2順位 直系尊属(ちょっけいそんぞく:父母・祖父母など) | 直系卑属がいない場合、相続人となります。父母がいない場合は、祖父母が相続人とななります。 |
第3順位 兄弟姉妹 | 直系卑属・尊属共にいない場合、相続人となります。兄弟姉妹が死亡の場合、兄弟姉妹の子供(甥、姪)が相続人となります。 |
第1〜3順位の異なる血族相続人同士が共同して相続することはなく、あくまでも第1順位がいなければ第2順位といったように、次の順位で相続人となります。
つまり、故人の子と故人の親や、故人の親と故人の兄弟姉妹が一緒に相続人になることはありません。

法定相続人を調べるには、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡まで、すべての戸籍謄本をとる必要があります。本籍地を生前変えたことがあれば、さかのぼって各地の市町村に照会します。
法定相続分(ほうていそうぞくにん)について
法定相続分とは、民法によって規定されている、法定相続人がどの程度の相続財産を受けとれるかの取り分(割合)のことです。
法定相続人 | 法定相続分 |
配偶者と直系卑属 (子供・孫など)の場合 |
配偶者1/2 子供(孫)1/2(複数の場合1/2を人数で分けます。) |
配偶者と直系尊属 (父母・祖父母など)の場合 |
配偶者2/3 父母(祖父母)1/3(複数の場合1/3を人数で分けます。) |
配偶者と兄弟姉妹の場合 | 配偶者3/4 兄弟姉妹1/4(複数の場合1/4を人数で分けます。) |
配偶者がいない場合 | それぞれ法定相続人となる順位の中で均等に分配 |
遺言(いごん・ゆいごん)の有無を確認
遺言があるかどうかは、必ず確認しなければなりません。なぜなら、遺言があった場合は、法定相続分より優先されるからです。
民法は、遺言で「法定相続分とは異なった相続分を定めることができ(民法第902条1項)」、また遺言で「法定相続分の場合の遺産分割協議等の方法によらずに遺産分割の方法を定めることができる(民法第908条)」としています。
つまり、遺産承継についての遺言があれば、遺留分の制限はありますが、原則として法定相続に優先し、遺言に決められた配分に従って遺産が承継されます。
遺留分(いりゅうぶん)とは、遺言書に関係なく、一定の相続人に法律上最低限保証されている相続財産の取り分のことです。遺留分については以下の通りです。
相続人 | 全体の遺留分 | 相続財産に対する相続人の遺留分 | |
配偶者のみ | 1/2 | 配偶者1/2 | |
配偶者と子 | 1/2 | 配偶者1/4 | 子1/4 |
子のみ | 1/2 | 子1/2 | |
配偶者と親 | 1/2 | 配偶者1/3 | 親1/6 |
親のみ | 1/3 | 親1/3 | |
兄弟姉妹 | 0 | 遺留分なし |
仮に遺言に「愛人の子供に全て遺産を渡す」と書いてあっても、最大1/2までということになります(残りの1/2を配偶者や子でわけます)。
ただし、この遺留分の権利を有するのは、配偶者・直系卑属・直系尊属に限られます。
②相続財産を確定する
- 相続財産、債務のリストアップをする
- 遺言がない場合、遺産分割協議書の作成
相続財産と債務のリストアップをする際の注意点
相続(遺贈を含む)により取得した財産は、相続税の課税対象となります。
本来の相続財産 | 相続などにより取得した財産。 土地、建物、現預金、有価証券など。 |
みなし相続財産 | 被相続人の死亡に起因して得られる財産。 死亡生命保険金、死亡退職金など。 |
相続開始前3年以内に被相続人(亡くなった方)からの贈与により取得した財産や相続時精算課税制度を適用して、被相続人から贈与により取得した財産も相続財産に加算されます。
加算される金額は贈与財産の贈与時の価額となります。債務も相続の対象なのでリストアップが必要です。

現預金や株式は、どちらも相続発生日の時価をもとにするのが基本です。銀行預金なら残高、上場株式なら取引所で付いた株価です。
ただし、株価は一時的に大きく上がったりすることもあるので、過去3ヶ月などの株価で決める方法もあります。投資信託は、原則として相続発生日の純資産額から解約した場合の手数料を差し引いて評価します。
自営業などの非上場会社は、業種ごとに従業員や総資産などによって大会社、中会社、小会社に分類されて、それぞれ評価方法が異なります。計算式には、配当金、利益、純資産が含まれますが2017年から利益の割合が少なくなって、業績が振るわない会社でも評価額が下がりにくくなりました。
相続税の税務調査でよく指摘されるのが名義預金です。これは形式的には配偶者や子どもなど家族の名義であっても、実質的には亡くなった人の財産とみなされて、相続財産に含まれて課税対象になります。
複雑な場合は、専門家に依頼する
このように財産の把握が必要になりますが、預金が複数の銀行に散らばり通帳を見つけにくいということはよくあります。そこで、相続の専門家に依頼するのも1つの方法です。
相続の専門家とは
相続の専門家として、弁護士・司法書士・行政書士がいますが、それぞれ役割が異なります。
●遺産分割において、争い事があるとき
→弁護士
●遺産分割において、遺産の中に不動産が含まれないとき
→行政書士
●遺産分割において、争い事がなく、不動産が含まれるとき
→司法書士
法定相続人が誰かを調べ、どんな遺産があるのか調べるのを司法書士に依頼すると合計で平均6万円ぐらいかかります。
相続した不動産の価格はどうやって決めるの?
不動産(土地・一戸建て・マンション)を単純に売却した時のお金と不動産を相続財産としていくらのお金になるかというのは、同じお金でも大きく異なります。
単純に売却してしまうときの市場価格(売却価格や相場価格)とは異なり、相続税を計算するためにその不動産がいくらなのかを計算した価格が相続税評価額です。

まず、土地については「路線価額(ろせんかがく)」を参考にします。
路線価額とは
評価される土地に接する道路につけられた価格です。これをもとに相続税や贈与税計算の前提となる土地の評価金額を求めます。
路線価額は公示価格の80%の水準になるように調整されています。
公示価格は、市場で売れる相場価格とも言えるため、相場の8割ぐらいの価格が相続税評価額となります。
路線価額は、国税庁のHPの「路線価図・評価倍率表」で調べることができます。
参考 路線価の見方についてイクラちゃんねる例えば、相続を受ける土地が100㎡で、路線価が40万円とすると、相続税評価額は40万円×100㎡=4,000万円ということになります。

路線価図に路線価がのっていない土地や建物については、市町村から送られてくる「固定資産税評価額(こていしさんぜいひょうかがく)」を使用します。
※記載箇所については異なる場合があります。
一般的に、新築時の建物の固定資産税評価額は、建築価格の60%前後となっています。
固定資産税評価額を使用する
固定資産税評価額とは
固定資産税評価額は、「固定資産税・都市計画税」「不動産取得税」「登録免許税」を計算する上でもとになる金額のことで、3年に一度見直されます。
平成6年度評価額以降、公示価格の70%の水準になるように調整されています。
参考 固定資産税評価額の取得方法イクラちゃんねる建物部分については、固定資産税評価額をそのまま使いますが、路線価がのっていない土地については、固定資産税評価額にその地域ごとの倍率を乗じて求めます。評価倍率も「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
参考 評価倍率の見方イクラちゃんねる相続する不動産が土地だけの場合は、路線価で計算すれば良いでしょう。マンションの土地については登記簿謄本を見れば、マンションの敷地(土地)の何パーセント分を所有しているかがわかります。
このように、マンションや一戸建てを相続財産として計算する場合は、土地と建物それぞれ計算する必要があります。

そのため、相続税対策として、現預金や有価証券より不動産が好まれるという側面があります。
もし、相続財産評価額より市場価格の方が安い場合は、時価評価(不動産会社が出してくれる査定価格や不動産鑑定士に依頼する鑑定価格のこと)で相続税の申告をします。
なお、一定の要件を満たす宅地については、小規模宅地等の特例を受けることができるので、一定面積までの相続税評価額が50%減や80%減となります。
例えば、相続税評価額が4000万円の居住用の土地(330㎡以下)は、小規模宅地の特例が適用できれば土地の評価額が800万円になります(建物の評価額は別)。
詳しくは「小規模宅地の特例」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
遺産分割協議書の作成
遺言がない場合は、遺産分割協議書を作成する必要があります。遺産分割協議書は、被相続人(亡くなった方)の預金を解約するにも、不動産の名義を法務局で変える際にも必要です。
もし、遺言がない場合、遺産は全て共同相続人(相続を受ける人全員)の共有財産になります。すべての法定相続人が協議し、遺産の分割をします(遺産分割協議)。
そして、この分割協議の内容を、遺産分割協議書という文書で作成し、法定相続人が全員押印することにより相続を確定させます。
遺産分割協議書を自ら作成することもできますが、こちらの作成も司法書士に6万円程度で依頼することが可能です。
参考 遺産分割協議書の作成方法イクラちゃんねる③相続税を計算する
- 相続税の課税価格の計算
①相続税の対象となる正味遺産額を求める
リストアップした相続により取得した土地や建物、現預金などから借入金や未払金等の債務や葬式費用を引いたものが相続税の対象となる正味遺産額になります。
なお、生命保険や死亡退職金は、それぞれ「500万円×法定相続人の数」が非課税限度額として定められていますので、それを超えた金額が加算されます。

現金・預金・株式 | 9,500万円 |
土地 (小規模宅地の特例適用後) |
800万円 |
建物 | 2,000万円 |
生命保険金 (入金額7,000万円-500万円×3) |
5,500万円 |
総遺産額 1億7,800万円 | |
借入金 | △800万円 |
葬儀費用 | △200万円 |
正味遺産額 1億6,800万円 |
②課税対象遺産額を求める
正味遺産額から基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を引いたものが課税対象遺産額となります。
妻と子ども2人の場合の基礎控除額は、3,000万+(600万円×3人)=4,800万円となります。
1億6,800万円-4,800万円=1億2,000万円
③相続税の総額を求める
課税対象遺産額を一旦、法定相続分で分割したものと想定し、相続分を求めます。
- 妻 1億2,000万円×1/2=6,000万円
- 長男 1億2,000万円×1/4=3,000万円
- 次男 1億2,000万円×1/4=3,000万円
次に、法定相続分で分割したものと想定した相続分を速算表を利用し、相続税の総額を求めます。
- 妻 6,000万円×30%-700万円(控除額)= 1,100万円
- 長男 3,000万円×15%-50万円(控除額) = 400万円
- 次男 3,000万円×15%-50万円(控除額) = 400万円
相続税の総額 1,900万円
相続税の速算表は以下の通りです。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | 0万円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
④実際の相続税額を求める
上記で求めた相続税の総額をもとに、実際の相続割合により各相続人の相続税額を計算します。
実際の相続割合が妻50%、長男30%、次男20%だった場合、それぞれの相続税額は以下のようになります。
- 妻 1,900万円×50%= 950万円
- 長男 1,900万円×30%= 570万円
- 次男 1,900万円×20%= 380万円
また、各相続人の相続税額に各種税額控除等が該当する場合、加算・減算します。
参考 各種税額控除等の加算・減算内容イクラちゃんねる配偶者控除とは
配偶者限定で特別に認められている仕組みで、配偶者が取得した財産は少なくとも1億6000万円まで、さらに財産が多い場合は、法定相続分までは相続税がかからないという控除枠のことです。
税金の負担を大幅に軽くできるので「税額軽減」とも呼ばれます。ただし、事実婚や内縁の人は対象外で、法律上の結婚をしている配偶者でなければ適用はできません。
- 妻 0円
- 長男 570万円
- 次男 380万円
まとめ
相続したお家に相続税がかかるかどうか、簡単にわかりやすく説明しましたが、それでも実際調べるのはとても大変だということはおわかりいただけたと思います。
相続した家の売却を検討している方は「相続する不動産を売るときの流れ」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
相続したお家に相続税がかかるかどうか知りたいという方は「イクラ不動産」をご利用ください。あなたの状況にピッタリ合った不動産会社を選ぶことができます。