
相続する不動産の名義ことで揉めています。
ひとまずまとめるためにも共同名義にしようかと思うのですが、何か将来不都合やデメリットなどあるのでしょうか?
こちらは、イクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
※イクラ不動産は不動産会社ではなく、無料&匿名で不動産の相談・会社選び・査定ができるサービスです。
相続した家は分割しにくいため、とりあえず共同名義にしようというケースも多いでしょう。しかし、家の共有名義はトラブルになることが多く、あまりおすすめではありません。
こちらでは、共有名義で家を相続する際の注意点やトラブルの回避方法、共有名義を避けつつ、できるだけ公平に分ける方法についてわかりやすく説明します。
もくじ
1.そもそも不動産の共有名義とは?
共有名義とは、1つの不動産を複数人で所有していることをいいます。
世帯主が亡くなって、自宅のみを妻と子1人が相続する場合、法定相続分(民法によって定められた各相続人の相続割合)通りであれば、母親が1/2、子が1/2の共有名義で相続登記するのが基本です。
母と子1人ならばそれほど問題にならないかもしれませんが、相続によって共有名義人となる人が多ければ多いほど相続トラブルになる可能性は高まります。
もともと共有名義であった不動産を相続するときは、共有持分(それぞれの人がその不動産について持っている所有権の割合のこと)のみを相続することになります。
2.共有名義で家を相続する問題点
共有名義で家を相続すると、次の4つの問題が起きる可能性があります。
3-1.①遺産分割協議がまとまらない
相続する財産が、亡くなった方(被相続人)の自宅のみで、かつ相続人が複数いるような場合、家の持分割合について揉める可能性が高くなります。
遺言がない場合は、それぞれが受け取るのは基本的に法定相続分です。
しかし、寄与分や特別受益で揉めるケースも考えられます。
3-1-1.寄与分(きよぶん)とは

寄与分とは、亡くなった方の財産の維持や管理に貢献したと考えられる人に与えられるものです。たとえば、介護や同居していた親族などに考慮されるケースが多いです。
3-1-2.特別受益(とくべつじゅえき)とは

特別受益とは、亡くなった方が生前、特定の相続人(相続する人)に対して、他の相続人以上の資金などを提供していた場合に考慮されるものです。
たとえば、子のうちの1人が大人になってもずっと生活費を提供してもらっていたり、1人だけマイホーム資金を提供してもらっていたりする場合に考慮されるケースがあります。
寄与分や特別受益については「寄与分や特別受益に配慮する」も併せてご覧ください。
また遺言があったとしても、遺留分を主張する人がいれば、遺言通りに相続されず、協議が長期化することもあります。
3-1-3.遺留分(いりゅうぶん)とは

遺留分とは、民法で最低限保証されている相続割合のことで、遺留分が請求できるのは、配偶者と子、父母のみです。
遺留分については「最低限保証されている「遺留分」がある」で詳しく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
3-2.②共有者全員の同意がなければ売却や活用ができない
スムーズに遺産分割ができたとしても、共有者が多いと相続後に揉めることも考えられます。


このように相続した家の売却や活用を考えたとき、共有不動産であれば共有者全員の同意が必要になります。だれか1人が「売るのは反対」「人に貸すなんて嫌」などと言いだせば、売却することも、活用することもできません。
いざ売却するという話になっても、媒介契約書や売買契約書、売買代金の領収証などには、共有名義人全ての記名と実印による押印が必要になるため、手続きに手間がかかるという問題もあります。
3-3.③固定資産税など管理費の負担で揉める
共有名義の不動産について誰か1人が住み続けるのであれば、その人が固定資産税や管理にかかる費用を支払うことになると思います。
しかし、空き家のままでとりあえず置いておくケースなどでは、これらの負担について揉める原因となります。
固定資産税などの支払いについては、もちろん持分割合に応じて負担しなければなりませんが、支払いをしない共有名義人がいると代表者が負担しなければなりません。
3-4.④新たな相続によってさらに持分が複雑になる
共有名義の不動産の名義人が亡くなると、その持分が相続人に引き継がれることになります。
たとえば、亡くなった父の不動産を母と息子(妻と子どもがいる)の共有名義にしていたケースで、息子が亡くなってしまった場合、息子の持分は息子の妻と子どもが相続することとなります。
このように共有者が死亡し、世代交代が進むと、共有者の数が増え、不動産の権利関係がさらに複雑化することになってしまいます。
親しい仲であるうちは問題がありませんが、細分化していくと共有者がだれなのかわからなくなり、連絡もとれず、家をどうすることもできないという状態になりかねないのです。
不動産は共有持分(それぞれの人がその不動産について持っている所有権の割合のこと)のみ売却することも可能ですので、赤の他人と共有者になる可能性もあります。
4.共有名義を避けるための解決策
相続した家を共有名義で相続する場合にトラブルになってしまうのは、「家」という分割できないものを複数人で共有するからです。
そこで、相続時には、分割できない「家」を「お金」に変えて遺産分割する「代償分割」と「換価分割」も検討する方が良いでしょう。
4-1.代償分割(だいしょうぶんかつ)とは
代償分割とは、相続人の誰か1人が不動産を取得して、他の相続人には代償金を支払うことによって清算する方法です。
次のようなケースで用いられることの多い分割方法です。
- 相続財産が亡くなった方の自宅のみ
- 相続人が複数いる
- 相続人のうちの1人が自宅に住んでいる
上記の場合で、次のようなケースを想定してみます。
- 相続財産は評価額3,000万円の自宅のみ
- 相続人が3人
- 持分は1/3ずつ
このとき、自宅を3人の共有名義とすることもできますが、そのうちの1人が住むのであれば他の2人からすると不公平な相続方法ともとれます。
このようなケースで代償分割をする場合、自宅に住む人が1人で家を相続し、その1人は残りの2人に1,000万円ずつ現金を渡します。
そうすることで、各人が1,000万円ずつ相続したとみなすことができ、公平感が保たれます。
4-2.換価分割(かんかぶんかつ)とは
一方、換価分割とは、相続と同時に家を売却し、売却によって得られたお金を相続割合で分割するという方法で、次のようなケースで用いられることの多い分割方法です。
- 相続財産が亡くなった方の自宅のみ。または自宅や現金を含めた相続財産がうまく分割できない
- 相続人が複数いる
- 相続人はだれも自宅に住まない
もちろんこの場合も、自宅を相続人全員の共有とすることができます。しかし、分割できない家を「持分」で分けると、トラブルになる可能性が高いというのは前述の通りです。
不動産はだいたいの金額であれば、不動産会社に査定してもらうなどで、家の価格を知ることができますが、売却するまでは実際にいくらで売れたのかということは誰にもわかりません。
そう考えれば、代償分割よりも換価分割の方がより公平に分け合える方法だといえます。
相続時に換価分割する場合は、便宜上、相続人のうちの1人が代表者として売却活動することが一般的です。そうすることで、共有不動産にして売却するよりも、手間が少なくすみます。
売却するときの流れについては「相続する不動産を売るときの流れ」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
4-3.リースバックで代償分割と換価分割の問題が解決できる
相続人の間で、希望する分割方法が異なる場合があります。
例えば、相続人のうちの1人が、相続対象となる家にこれまで住んでいたような場合、住み続けるにはほかの相続人に代償金を支払って所有権を得るのが一般的な方法です。
しかし、住み続ける相続人に代償金が支払えるだけの資力がなければ、家を売って換価分割することになり、これまで住んでいた相続人は家を出ていかなければなりません。
そのような問題は、リースバックによって解決できる場合があります。
リースバックとは、家を売却してまとまった売却代金を得て、その後、賃貸として住み続けられるという売却方法です。
まず、相続した家をリースバックで売却した代金を相続人間で分け、その後、これまで住んでいた相続人が賃貸として住み続ければ、代償分割と換価分割の問題が一度に解決できます。
リースバックの仕組みや利用の流れについては、「【リースバックのまとめ】家を売っても住み続けられる!利用方法や注意点を詳しく解説」でわかりすく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
5.土地なら分筆することもできる
建物は分割することができませんが、土地なら分割(分筆:ぶんぴつ)することができます。
たとえば、300㎡の大きな土地を3人で相続する場合、この土地を3人の共有とすることもできますが、100㎡ずつ3つに分筆して、それぞれ別々の土地を各人が相続することも可能です。
分筆してしまえば100㎡の土地の使い道は各人の自由なので、売りたい人、活用したい人がいる場合にも揉めずにすみます。
ただし、分筆した土地がすべて同じ条件になるとは限りません。接道や方角などにより、土地の評価額が違ってくるため、まったく同じように分筆することはむずかしいと言えます。
さらに、100㎡ずつ分筆して売却するより、300㎡のままで売却した方がトータルでみると高く売れるという事例も少なくありません。
相続で土地を分筆する場合は、このあたりのこともよく検討するようにしましょう。
まとめ
不動産を相続する際の話し合いで揉めてしまったとき、共有名義にしてしまうことで丸く収めるという選択をしてしまいがちです。
しかし、共有名義での相続登記は、単に問題の先送りにしかならず、後々トラブルになるリスクが高いと言えます。
一度、共有名義にしてしまうと、単独名義にするためには再度話し合いをし、手続きを踏む必要がありますし、費用も当然かかりますので、本来はやるべきではありません。
そこで、相続時には、分割できない「家」を「お金」に変えて遺産分割する「代償分割」や「換価分割」するのが賢明です。
代償分割や換価分割を検討するときは、そもそも相続した家がどれぐらいで売れるのか事前に知っておく必要があります。相続人がその金額に納得して、代償分割や換価分割が行われるからです。
また、換価分割しても住み続けたい相続人がいる場合は、リースバックで解決できる場合があります。
相続した家がいくらぐらいになるのかが知りたい人や自分の場合はどうすれば良いのかわからないという人は、イクラ不動産をご利用ください。
無料&秘密厳守で、簡単に査定価格を知ることができ、わからないことがあれば宅建士の資格を持ったイクラ不動産の専門スタッフに無料で相談できます。
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