離婚後に住宅ローンが返済できず、自己破産(じこはさん)するしかないといった危険性もゼロではありません。
このことは、破産者本人だけでなく、連帯保証人や連帯債務者になっている人、離婚後相手名義の家に住み続ける人にも関わってくる事柄です。
こちらでは、離婚後に家のローンを返済できず自己破産になるケースや離婚相手にはどのような影響が出るのか、自己破産を避けるにはどうしたら良いのかなどをわかりやすく説明します。
- この記事はこんな人におすすめ!
- 離婚の際に多額の住宅ローンが残っている家やマンションがある人
- 離婚と住宅ローンによる自己破産を考えている人
- 離婚での自己破産の回避方法を知りたい人
もくじ
1.自己破産とは借金の支払いが免除される手続き
自己破産とは、借金返済ができなくなったときに裁判所に申立てを行い、「免責(めんせき:普通なら負うべき責任を問わずに許すこと)」してもらうことによって、借金などの負債の支払い義務をなくす手続きのことです。
自己破産すると借金返済が不要になるだけでなく、それ以外の未払家賃や未払の光熱費、給料など、あらゆる「負債」の支払い義務がなくなります。
婚姻時に借金をしていた場合も、離婚後に自己破産したら、借金の支払をしなくても済みます。住宅ローンも負債の一種なので、自己破産による免責対象です。
1-1.自己破産するとどうなるの?
家のローンの支払いが苦しいときには、自己破産をすると住宅ローンの支払いから完全に解放されます。しかし、生活に最低限必要な分を超える財産もなくなります。
たとえば、家などの不動産は必ず手放さなければなりません。
預貯金や生命保険、車などの財産についても、総額で99万円分を超える分はすべて現金化されて、債権者(さいけんしゃ:お金を貸した側)に配当されてしまいます。
また、新たな借り入れやクレジットカードの利用は、約5~10年間ほどできなくなってしまいます。
2.離婚後に自己破産が必要なケースとは?
離婚後に住宅ローンを抱えていても、必ず自己破産になるわけではありません。
自己破産が必要なのは、「支払い不能」状態になっているケースです。
支払い不能とは、収入や資産状況に比べて返済が多すぎて、支払いを継続していくことが不可能な状態です。
支払い不能かどうかについては個別的に判断されるので、同じ借金額であっても収入が高くて支払いができれば支払い不能になりませんし、収入が無かったら数十万円程度の借金でも支払い不能となることもあります。
離婚後に自己破産が必要になるのは、次のようなケースです。
2-1.住宅ローンや養育費などの負担が大きすぎる
まずあげられるのは、「離婚後の住宅ローンや養育費、慰謝料などの負担が大きすぎる場合」です。
離婚時に家を売却しなければ、離婚後もローン名義人が住宅ローンを継続的に支払わなければなりません。
離婚をすると、さらに子どもの養育費や慰謝料の分割払いなども上乗せして支払わなければならないケースがあり、自分自身の生活費も必要です。
このようにいくつもの支払いがかさむことにより、首が回らなくなって自分の生活すら維持できなくなる場合があります。すると支払い不能状態となり、自己破産を考えるようになります。
特に慰謝料などの金額や支払い方法について、相手の言うままに妥協して高額に設定すると、支払い不能に陥りやすいです。
2-2.競売や任意売却をしても多額の残債がある
離婚時、夫婦のどちらも家に住まない場合は売却することになります。
残っている住宅ローンの金額が家の売却価格を下回っているアンダーローンの場合は、家を売却したお金で住宅ローンを完済できるのでなんの問題もありません。
逆に、家を売っても住宅ローンを完済できないオーバーローンの場合は、「競売(けいばい)」になるか、または「任意売却(にんいばいきゃく)」で家を売却します。
住宅ローンを支払えず滞納してしまうと、ローン借入先の債権者(お金を貸した側)が「競売」を申立て、裁判所の関与のもとに家が強制的に売却されてしまいます。
競売では、相場価格の約6〜7割(60〜70%)でしか家を売却することができません。
そこで、できるだけ相場価格に近い金額で売るには、金融機関に相談をして「任意売却」による売却手続きを行います。
どちらのケースでも、家の売却代金は残った住宅ローンの支払いに充てられ、完済できずに残った住宅ローンについては離婚後も返済義務があります。
そのため、少しでも家を高く売却して残る住宅ローンの残債(残高)を減らしておくことが重要なのです。
家を安くでしか売れずに多額のローンが残ってしまい、保証会社などから一括返済を求められると、自己破産しか解決方法がなくなる可能性が高くなります。
3.離婚後に自己破産したら離婚した相手にも影響がある?
たとえば、離婚後に夫が自己破産した場合、妻にもなにか影響があるのかを確認しておきましょう。
3-1.原則、離婚相手に影響はない
原則として、夫が離婚後に自己破産したからといって妻に影響があることはありません。
離婚前でも離婚後であっても、法律上は完全に独立した個人ですので、夫が自己破産した場合は、夫名義の財産に対して調査がされ、債権者(お金を貸した側)にお金が配分されるため、原則、妻に影響がないのです。
ただし、離婚後、夫名義の財産を妻が使用する場合(婚姻中に購入した夫名義の家に妻や子供が住み続ける場合など)は、債権者(お金を貸した側)に配分されてしまうため、財産が没収されてしまう可能性があります。
3-2.妻が保証人になっていた場合は影響がある
妻が夫の債務の連帯保証人や連帯債務者になっていた場合は、注意しなければなりません。
よくあるのが、住宅ローンを組む際に妻が連帯保証人や連帯債務者になっているケースです。
離婚したからといって、金融機関にその事実は関係ありませんので、連帯保証人や連帯債務者から外れていない限り、住宅ローンを完済するまでこの関係は解消されません。
そのため、夫が自己破産してしまうと、債権者(お金を貸した側)から妻に保証人として全額の返済請求を受けることとなります。
万が一、連帯保証人や連帯債務者である妻も支払えない場合は、妻自身も自己破産する、もしくは、そのほかの方法で債務整理をするしかありません。
連帯保証人または連帯債務者から外れる方法はどちらも同じです。詳しくは「連帯保証人を外れる3つの方法」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
3-3.離婚後すぐに自己破産するのは注意が必要
自己破産の申立てに近い時期に離婚し、財産分与や養育費、慰謝料などの支払いが行われた場合、その金額が高額であれば財産隠しの偽装離婚だと疑われてしまう可能性があるので注意しましょう。
財産隠しは法律で禁止されていますので、万が一、財産隠しを疑われてしまうと、破産者の財産として扱うように命じられ、取り戻されてしまうケースもあります。
万が一、離婚後すぐに自己破産しようと考えている場合は、偽装離婚だと疑われないように、自己破産の手続きをしてから離婚したほうが離婚相手にも迷惑をかけずに済みます。
4.離婚後に自己破産しないための方法
離婚後に住宅ローンの問題で自己破産をしない(自己破産をさせない)ためにはどのようなことに気を付ければ良いのかを説明します。
4-1.養育費や慰謝料は無理な金額設定をしない
離婚時に家を売却せず、離婚後も住宅ローンを支払い続ける場合には、住宅ローン以外の支払いで無理をしないことが大切です。
たとえば、離婚後に夫が妻に住宅ローンと慰謝料と養育費を支払う場合、夫の収入状況を考慮して、養育費や慰謝料を「支払い可能な金額」に設定します。
やみくもに高い金額を設定しても、支払いができなくなって自己破産されてしまうだけです。そうなれば家もなくなるので、妻と子供も家に住めなくなり、共倒れになってしまいます。
万が一、自己破産してしまった場合でも養育費の支払い義務がなくなることはありません。
自己破産では、養育費自体が「非免責債権」となり、たとえ免責許可を得たとしても、支払いの義務は免除されないと定められているからです。
4-2.なるべく高額で家を売却する
離婚時に家を売却する場合には、なるべく高値で売って、少しでも多くの住宅ローンを返済することが重要です。
不動産は、売るタイミング、売り出し価格の設定、買主との交渉や依頼する不動産会社により、売れる金額が変わってきます。
これらを上手にコントロールして家を高値で売れば、その分残っているローンをより減らせるので、自己破産の危険性が低くなります。
家の売却を検討している方は「離婚が原因で家を売却する時の5つのポイント」も併せてご覧ください。
まずは、アンダーローンになるのかオーバーローンになるのか、また、オーバーローンであってもどのくらい住宅ローンの残債(残高)を減らすことができそうなのかを把握する必要があります。
そのためには、まずお家がいくらで売れるのかを調べておきましょう。
4-3.自己破産以外の方法を検討する
借金の返済があって住宅ローンの支払いが厳しい場合は、自己破産以外にも任意整理や個人再生などの債務整理方法があります。
減らせる借金の額は変わりますが、家を残せる場合もあるので、検討してみても良いでしょう。
債務整理の方法については、「家を手放さずに借金を減らす!自己破産・任意整理・個人再生以外の方法はある?」で説明しているので、ぜひ読んでみてください。
まとめ
離婚後に、住宅ローンや養育費などの支払いがかさみ、自己破産するしかないといった状況に陥ることがあります。
原則として、離婚をした相手には影響はありません。しかし、相手が連帯保証人や連帯債務者になっている場合や、離婚後、住宅ローンが残っている家に住み続ける人にも関わってくる場合があるため、きちんと確認をしておきましょう。
家の売却代金でローンがいくら返済できるかを計算するには、まずは家の相場価格を調べなければなりません。
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イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。