いずれ建て替えがあるだろうとマンションを購入したのですが、建て替えがなくなって大規模修繕になったので、売却してしまおうかと考え中です。
ただ、いくらで売れるか心配です…
こちらは、イクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
※イクラ不動産は不動産会社ではなく、無料&匿名で不動産の相談・会社選び・査定ができるサービスです。
国土交通省が発表した「マンション建替えの実施状況」によると、これまでに建て替えられたマンションは累計で295件(2020年4月1日現在)とあまり実績がありません。建て替えが少ない理由は、さまざまなハードルがあるからです。
せっかくマンションの建て替えを期待していたのに実行されなかった場合、どうしたらよいのでしょうか。
こちらでは、マンションの建て替えがそもそも進まない理由と、建て替えにならなかった場合の対処方法について解説します。
もくじ
1.マンションの建て替えが必要となるケース
そもそも、マンションの建て替えが検討されるのはどのようなときなのでしょうか?マンションを建て替える必要が出てくる理由として考えられることを、3つ紹介します。
1-1.構造的に寿命が近い
マンションの構造的に寿命が近いことがわかった場合は、建て替えを検討するしかありません。マンションの寿命には、コンクリートの寿命が一番影響を与えます。
マンションの多くは、型枠を組んだ中に鉄骨や鉄筋を配し、コンクリートを流し込むことで柱や梁(はり)などの骨格部分を作る、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造やRC(鉄筋コンクリート)造です。
マンションは、強アルカリのコンクリートで鉄筋や鉄骨を覆うことでサビから守っており、このコンクリートが厚いほど、耐用年数が長く、厚さが3cmあれば耐用年数は65年、4cmなら100年ともいわれています。
ただ、経年とともに外側から中性化(二酸化炭素によって生じる、鉄筋コンクリートの劣化のこと)していきます。
そのため、コンクリートの寿命がきた、またはもともと質が悪かったなどの理由で劣化してヒビや割れが生じると、鉄骨や鉄筋が錆びてしまい、マンションの寿命が近づいてしまうのです。
1-2.維持管理ができる状態でない
マンションは、定期的なメンテナンスを行うことで、寿命を延ばすことが可能です。外壁塗装の定期的な塗り直しなどをすれば、コンクリートの劣化を遅らせることができます。
新しいマンションであれば、購入当初から長期の修繕計画が立てられており、各戸から「修繕積立金」を徴収して、メンテナンスに備えていることがほとんどです。
しかし、1960年〜1970年代に建設されたマンションでは、修繕計画が立てられておらず、大規模修繕に向けて資金を積み立てていないケースも少なくありません。
劣化が進み、いざ修繕が必要となった場合、一戸あたりが負担する額が数百万と大きすぎて、合意を得ることが難しいのが現実です。
結果的に修繕できないまま住人も高齢化していき、老朽化が進むのを放置するしかなくなってしまうのです。
1-3.居住者のニーズに合っていない
マンションが建てられた当時と比較して、現在の居住者のニーズに合わなくなっているときも、建て替えが検討されることがあります。
たとえば、古いマンションでは、5階や6階建てのマンションでもエレベーターがついていない物件が散見されます。
一方最近建てられるマンションは、高齢化に備える、住民の利便性を高めることを目的として、2階や3階建てでもエレベーターが備わっている物件がほとんどです。
ほかにも部屋の造りが昔の団地風になっていて、ダイニングキッチンのみでリビングがないなど、今ならあたり前とされる条件を満たしていないと敬遠されて、空室が増えていってしまいます。
マンションの建て替えは、建物そのものの老朽化が原因となるだけではなく、マンションの空室を減らし、適切に運営するために必要になることもあるのです。
2.実際のところマンションの建て替えは少ない
建て替えを検討する要因がたくさんあっても、マンションを実際に建て替えるところまで進むことはあまり多くありません。
ここからは、マンションの建て替えがなくなることが多い理由を3つ解説します。
2-1.建て替え費用の住民負担が重い
マンションの建て替えがなくなる理由のひとつとして、建て替え費用の住民負担が重いことが挙げられます。
マンションを建て替えるには、建築費用以外にも、解体費用や調査設計計画費、土地整備費など、さまざまな費用が発生します。
国土交通省の調査結果によると、2012年〜2016年に建て替えを行ったマンションの区分所有者の平均負担額は、1,105万9千円でした。(出典:国土交通省「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」)
マンションの老朽化が進んでいるということは、住民の高齢化も進んでいるケースも多く、今の暮らしを守るだけで手一杯という人にとってはあまりに重い負担です。
2-1-1.費用負担が少額で済む場合もある
建て替えの内容によっては、費用負担が少額で済む場合もあります。
それは、容積率に余裕があり、建て替えによって戸数を増やせるケースです。容積率とは、敷地面積に対する建築延べ床面積の割合のことですが、場所によって建築基準法で定められています。
現在のマンションが容積率いっぱいで建てられていなければ、建て替え後は戸数を増やせるかもしれません。
増えた部屋の売却代金を立て替え費用に充当すれば、かかる費用の総額を減らせるため、住民の費用負担は減少します。
立地条件が良い場所で、戸数を2倍に増やして高額で売却できるなら、負担金ゼロでの建て替えもあり得るでしょう。
また、耐震性が不足しているマンションの建て替えの場合は、特定行政庁が容積率を緩和できる特例も出しています。
該当すれば、たとえ今、容積率を使い切ってしまっていても、増床が可能になるケースもあります。
2-2.所有者の4/5以上の賛成が必要
建て替えを実施するためには所有者の4/5以上の賛成が必要なことも、建て替えが実現しない理由の1つです。
マンションを立て替えるときには、マンションの管理組合が建て替えをするべきかを検討するところから始まり、建て替えるか修繕するかを比較検討し、最終的に建て替えを業者に依頼して計画を立てるまで、段階的にステップを踏んでいきます。
最終的には住民の賛否を問いますが、
といった理由から、建て替えに消極的な人もいます。なかには、連絡を取れない人がいるなど、4/5以上の賛成が得られずに、建て替えを断念するケースも少なくないのです。
2-3.法律上、建て替えられないマンションが多い
建て替えが進まない理由として、法律上、立て替えられないマンションが多いことも挙げられます。
建築基準法は適宜改正が重ねられているため、建物の中には現行の法律に適合していない場合があり、そのような建物は「既存不適格建築物」といわれます。
既存不適格建築物は、そのままでは違法建築物とはされませんが、建て替えをするときには現行の建築基準法に適合させなければなりません。
古いマンションでは、現行の容積率を超えているケースが多く見られ、建て直すときには容積を減らす、つまりそれぞれの部屋の床面積もしくは総戸数を減らす必要があります。
- 建て直すことによって今よりも狭くなる
- 部屋数が減れば住めなくなる人が出てくる
- 少ない人数で建て替え費を負担することになる
など、さまざまな問題が発生します。そのような事態を避けるために、建て替えをせずに、現状維持を選択するマンションも多いのです。
3.建て替えが進まない場合はどうする
既存マンションの建て替えには、さまざまな問題があり、実現は難しいケースが多いとわかりました。
それでは建て替えが進まないマンションの場合には、今後どういった選択をすれば良いのでしょうか?
3-1.大規模修繕が定期的に行われているか
国土交通省の資料によると、分譲マンションにおいては、12年程度の修繕周期で大規模な修繕工事を行うことが一般的とされています。
鉄筋コンクリートの耐用年数は120年、外装仕上げにより延命すれば耐用年数は150年に延びるとも言われているため、適切なメンテナンスを行えば、マンションの延命自体は可能と考えられます。
ただし、老朽化が進むと、マンションの空室率は高まっていく可能性が高いです。空室が増えると、維持管理費が不足するため、定期的な大規模改修ができなくなることに加え、価値も下がります。
老朽化が進んだマンションは、なかなか売却しても買い手が見つからないケースもあり、自身が死亡したときには、相続人に負の財産として引き継がれることになってしまうリスクもあります。
3-2.区分所有権を解消して敷地売却する
2002年(平成14年)にマンション建替法が改正され、「マンション敷地売却制度」が創設されました。
それにより、耐震性が不足しているとされたマンションについては、区分所有者集会で4/5以上の賛成が得られれば、マンションとその敷地の売却が可能になりました。
それぞれが所有している区分所有権をひとつに取りまとめ、買受人に売却し、持ち分割合に応じて代金を分配します。
マンションの建て替えは、建て替えたあとのマンションへの再入居が前提となっているため、相応の負担が求められます。
しかし、敷地売却をした場合には、売却代金を分配されたあとの選択は自由です。立て替えたマンションに再入居しても、賃貸アパートに入居しても構いません。
立て替える費用はない、しかし耐震性に不安のある老朽化したマンションに住み続けるのは心配といったケースでは、敷地売却を検討すると良いでしょう。
3-3.売却して住み替える
マンションの建て替えが実現しそうにないときには、所有している部屋を売却して住み替えることも検討しましょう。
ここまで見てきたとおり、マンションの建て替えはいろいろなハードルがあります。4/5以上もの住人の合意をとりつけるのは実際問題として難しく、建て替えを実現するのは困難なケースがほとんどです。
それであるなら、自分の所有分を売却して住み替えを考えるのが現実的です。中古マンションでも、安価に購入できるなら、リノベーションして住みたいと考える人も増えてきています。
3-3-1.「買取」という方法もある
買取とは、不動産会社が直接、あなたのお家を買い取ってくれるという方法です。
売却金額は、相場価格の6~7割程度と安くなってしまいますが、直接不動産会社が購入するので、早ければ数日間で売却を終えることができます。
また、依頼する会社によっては仲介手数料が不要になるケースもあるなど、なかなか買い手が見つからないようなマンションの場合は「買取」も検討すると良いでしょう。
買取についてさらに詳しくは「【不動産買取】お家をすぐに売ることができる方法をかんたん解説!」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
まとめ
マンションの建て替えが実現するのには、なかなかハードルが高いということがおわかりいただけたと思います。
近年、古いマンションであっても、「リフォームやリノベーションして、住む」というのが一つの魅力として注目されていることもあるため、この時代背景を活かして、早期に売却を検討してみるのもひとつの方法といえます。
しかし、いくらくらいで売却できるのかわからなければ、今後売るのか住み続けるのかすらも定まりません。
マンションを売ったらいくらくらいになるのかは、不動産会社に査定してもらえばわかります。
とは言え、まだ確実に売却すると決まったわけではないのに不動産会社に直接相談するのは気が引けるという方は多いです。そのような場合は、「イクラ不動産」にご相談ください。
無料&秘密厳守で、簡単に素早くお家の査定価格を知ることができます。さらに、あなたの状況にピッタリ合った売却に強い不動産会社を選ぶことができます。
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