離婚することになった場合、妻や子供が家やマンションに残り、旦那に出て行ってもらいたいというケースがあります。
こちらでは、離婚の際に、夫婦どちらが家やマンションを出なければならないのか、旦那に出て行ってもらう方法、妻が残るリスクなどについてわかりやすく説明します。
- 離婚で旦那に家やマンションから出て行ってもらう方法
- 旦那単独名義の家やマンションに、妻と子供が残るリスクについて
- どうしても旦那を家やマンションから追い出せない場合の対処法
- この記事はこんな人におすすめ!
- 離婚で旦那に家やマンションから出ていってほしい人
- 旦那名義の家やマンションに妻と子供が残るリスクを知っておきたい人
- どうしても旦那を追い出せない場合にどうすれば良いのか知りたい人
もくじ
1.離婚の際に、夫婦のどちらが家を出なければならないか
まず、離婚の際に、夫婦のどちらが家やマンションから出て行かなければならないかを説明します。
1-1.家の名義に関係なく、夫婦のどちらが出て行ってもよい
法律上、離婚の際に夫婦のどちらが家を出るべきかは必ずしも決まっておらず、家の名義も関係ありません。
なぜなら、夫の単独名義の家であっても、婚姻中に購入・建築した家やマンションについては夫婦の共有財産となるため、夫婦はそれぞれが2分の1ずつの権利を持っているからです。
よって、妻と子供が残って、夫に出て行ってもらうことも可能です
ただし、婚姻前に夫が単独で購入した場合や相続した家の場合は、夫婦の共有財産ではなく夫の特有財産になるため、離婚の財産分与として妻が半分もらう権利はありません。
1-2.一方的に追い出されたら慰謝料を請求できる場合もある
家やマンションが夫の単独名義だからと妻が一方的に追い出された場合は、「悪意の遺棄(あくいのいき)」となり慰謝料を請求できる可能性もあります。
これは、妻が旦那を一方的に追い出した場合でも同じです
どちらが家を出るべきかは、離婚協議の際にきちんと話し合って決めるようにしましょう。
悪意の遺棄(あくいのいき)
悪意の遺棄とは、婚姻関係にある夫婦間の義務である「同居の義務」「協力義務」「扶助の義務」に対して違反をした場合の離婚原因となるものです(民法第752条)。
悪意とは「夫婦関係の破綻をもくろんでいたり、破綻しても構わないという意思」とされ、遺棄とは「正当な理由もなく同居・協力・扶助の義務を怠ること」を意味します。
例えば、「生活費を渡さない」「健康な夫が働こうとしない」などがあげられ、「理由のない別居」も該当します。
2.旦那を家から追い出すには調停や離婚訴訟が有効
離婚でどちらが家を出ていくかの話し合いがまとまらず、どうしても旦那を家から追い出したいときは、調停や離婚訴訟が有効になります。
調停(ちょうてい)とは、夫婦2人の話し合いによってまとまらないとき、裁判所に間に入ってもらって話し合うことで、訴訟(そしょう)とは、調停でもまとまらない場合、裁判所に判決を下してもらうことです。
具体的に、どのように調停や離婚訴訟を進めれば良いかを説明します。
2-1.弁護士や調停員などの第三者に間に入ってもらう
無理に相手を追い出したり勝手に家の鍵を交換して入れなくしたりすれば、先に述べた「悪意の遺棄」と見なされてしまう場合があります。
離婚の原因が夫にある、子供の生活を守りたいなど、どうしても旦那に出ていってもらいたい状況の場合は、弁護士や調停員などの第三者に入ってもらうのがおすすめです。
その際、なぜ出ていってもらいたいのか、理由をきちんと説明できるようにしておきましょう。
また、できるだけ早く離婚してしまうのも一つの手です。離婚の財産分与の際に、妻が家に住む権利を得ることができれば、他人となった夫を追い出すことも可能です。
2-2.同居のままでも調停や訴訟は進められる
同居したままで調停や訴訟を進めることも可能です。特に調停であれば、同居したまま進めているケースもよくあります。
別居すると、引っ越し代や家を借りる敷金礼金などの余分な費用が発生するデメリットがあるからです。
また、単に夫婦が意地を張り合って「絶対に出ていかない」と考えていることもあります。
夫婦が同居のまま調停や訴訟をすると、裁判所からの呼び出し状などの書面が夫婦のそれぞれに対して届きます。
同居していると、相手が弁護士に相談に行ったり、書面を作成していたりする様子がわかり、相手の戦略を把握しやすいですし、財産分与や慰謝料などに関する証拠も集めやすいです。
ただし、自分の行動も筒抜けになり、相手に証拠を集められやすいことも踏まえておきましょう。
3.別居すると発生する「婚姻費用」について
夫婦が別居するとき発生する「婚姻費用」のことも知っておくと役立ちます。
3-1.収入の高い方が低い方に生活費として「婚姻費用」を支払う
婚姻費用(こんいんひよう)とは、夫婦間でお互いが負担すべき生活費のことです。
夫婦は婚姻中、お互いに扶助(ふじょ:力添えして助けること)し合うべき義務を負っています。
そこで、収入の高い方は低い方に対し、生活費の負担をしなければならないのです。
このように、夫婦間には婚姻費用の分担義務があるため、もし夫のほうが収入が多い夫婦が別居するなどの場合は、妻は夫に対して婚姻費用を請求できます。
3-2.婚姻費用の決め方
婚姻費用を決めるときには、別居前に夫婦間で話し合っておきましょう。
別居前に金額と支払い方法を取り決めておけば、別居後生活費が支払われない空白期間が発生せず、安心です。
婚姻費用の金額は、支払う側の年収、支払いを受ける側の年収、子どもの人数や年齢などの要素によって相場が決まっています。
こちらは子供1人がいる場合の、婚姻費用の月額を示したものです。
もらう側の年収 | |||||||||
払う側の年収 | (単位:万円) | 100 | 200 | 300 | 400 | 500 | 600 | 700 | 800 |
1500 | 24〜26 | 22〜24 | 20〜22 | 18〜20 | 16〜18 | 14〜16 | |||
1000 | 16〜18 | 14〜16 | 10〜12 | 8〜10 | |||||
800 | 12〜14 | 10〜12 | 8〜10 | 6〜8 | 4〜6 | ||||
600 | 8〜10 | 6〜8 | 4〜6 | 2〜4 | |||||
400 | 6〜8 | 4〜6 | 2〜4 | 1 | 0 | ||||
200 | 2〜4 | 1〜2 | 0 |
(裁判所HP「養育費・婚姻費用算定表」抜粋)
家庭裁判所の定める「婚姻費用の算定表」という資料があるので、これを見て、自分達のケースでだいたいいくらになるのか計算しましょう。
4.妻が旦那名義の家に残るリスクについて
希望どおり旦那を追い出せたとしても、旦那の単独名義になっている家に妻や子供だけが残る場合は注意が必要です。
どのようなリスクがあるかを説明します。
4-1.旦那に家を勝手に売却される恐れがある
夫単独名義の家やマンションに妻が残る最大のリスクは、勝手に売却されてしまう恐れがあることです。
家の売却は、名義人であれば自由に行うことができるため、夫の単独名義であった場合、妻に相談する義務はまったくありません。
夫が勝手に家やマンションを売却してしまうと、当然ですが妻や子供は強制的に出ていかなければなりません。
くわしくは「離婚で旦那名義の家やマンションを勝手に売却されるリスクと対策を解説」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
4-2.旦那が住宅ローンを滞納する恐れがある
家やマンションに、夫名義の住宅ローンが残っている場合も注意が必要です。
夫が住宅ローンの返済を滞納し続けると、家やマンションを差し押さえられ、最終的には競売にかけられて妻と子供が追い出されてしまう恐れがあります。
離婚をしても、金融機関が夫に住宅ローンの支払いを請求し続けることに何ら変わりはありません。
そのため、将来、夫がローンの支払いを止めてしまうと、最悪の場合、家を強制的に売却(競売:けいばい、きょうばい)されて、妻と子供は家を追い出されてしまうのです。
「離婚後も妻が夫名義の持ち家に安心して住むには?住宅ローンの有無別に紹介」でくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
5.旦那を家やマンションから追い出せない場合の対処法
どうしても旦那を家やマンションから追い出せない場合や夫婦のどちらが出て行くかの話し合いがまとまらない場合、どのような対処法があるかを説明します。
5-1.家やマンションを売却する
旦那を追い出せない場合や夫婦のどちらが残るかで揉める場合は、思い切って家やマンションを売却してしまうのも一つの手です。
住宅ローンが残っていない場合やローンが残っていても売却代金で完済できそうな場合は、後々のトラブル回避のためにも売却を検討すると良いでしょう。
家やマンションを売却した代金を財産分与として夫婦で分ければ、どちらが出て行くかで揉めなくてすみます。
売却を検討する場合は、「離婚で家やマンションを売る時の確認ポイント5つと売却後にやるべきことを解説!」をぜひ参考にしてみてください。
5-2.リースバックの利用を検討する
家やマンションを売却したいけれども、子供の転校や引っ越しを避けるために、売却をためらっている場合もあるでしょう。
そのようなときは、リースバックによる売却がおすすめです。
リースバックを利用すれば、家を売却した代金を一括で受け取って夫婦で財産分与として分け、家に残る側は、賃貸としてそのまま住み続けることができます。
当然、今の家に住み続けられるため、引っ越しや子どもの転校などを心配する必要もありません。
リースバックについては、「【リースバックのまとめ】家を売っても住み続けられる!利用方法や注意点を詳しく解説」でくわしく説明しています。ぜひ一読してみてください。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 離婚の際、夫婦どちらが出ていくかは家やマンションの名義に関係なく決まっていない
- 一方的に追い出されたら、「悪意の遺棄」として慰謝料を請求できる場合もある
- 旦那に出て行ってもらいたい場合、話し合いで解決しなければ調停や訴訟が有効
- 別居をすると、収入の高い方が低い方に生活費として「婚姻費用」を支払うことになる
- 旦那単独名義の家やマンションに妻と子供が残ると、勝手に売却されるなどのリスクがあるため注意が必要
- 夫婦のどちらが出ていくかで揉める場合は、家やマンションを売却するのも一つの手
- 売却しても住み続けたい場合は、リースバックの利用を検討してみると良い
離婚をすることになった際、妻と子どもが家に残り、旦那に出て行ってもらいたいと考えるケースは少なくありません。
しかし、一方的に旦那を追い出すと「悪意の遺棄」として慰謝料を請求される恐れがあります。
また、別居してしまうとなかなか離婚の話し合いが進まなくなるケースも多いです。早々に旦那に出て行ってもらいたい気持ちはわかりますが、今後のためにも別居前に財産分与などについて取り決めておくようにしましょう。
さらに、旦那が単独名義の家や、旦那名義のローンが残っている家に妻と子どもが住み続けるのは、リスクを伴うことが多いです。
そのようなリスクを回避するためにも、できれば離婚での財産分与の際に家を売却してしまうほうが良いでしょう。
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イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
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